Photo: The Tasting Room/ Good Earth, Mumbai
●モンスーンなムンバイから、さらさら涼しいバンガロールへ。
バンガロール宅に戻って来た。今、夫は階下でテレビを見ている。わたしは書斎でワインを飲みながら、コンピュータに向かっている。この距離感が、実にリラックスできて、幸せ。
ムンバイ宅は、リヴィングの一画にデスクを置いているため、そこそこの広さがあるとはいえ、夫が見るテレビの音が聞こえ、何かと落ち着かない。
なに贅沢を言ってやがる、と思われそうだが、そのあたり、贅沢志向なのである。集中してデスクに向かえる静かな空間。わたしにとっては不可欠なのである。
さて、本日日曜日。昼過ぎのJet Airwaysの便にチェックイン。毎度おなじみアルヴィンド(夫)の交渉力が功を奏し、またしてもビジネスクラスにアップグレード実現である。ららら〜。
今日は日曜にも関わらず満席だったことから、アップグレードになる可能性は高かった。しかし、そこを巧みにつかみ取る(奪い取る)のは、簡単なことではない。
ちなみに、夫はインド人だが、一般のインド人にありがちな、強引にしつこく押し切って我を通すような真似は決してしない。スマートに、さりげなく、地上係員を口説くのである。
マイルドな笑顔で、控えめに、と同時に積極的に。それはそれでどうかとも思うが、ともあれ、アップグレードされれば、妻は幸せなのである。好きにしてくれていいのである。
左上は、雲に覆われたムンバイ上空、右上はバンガロールの写真。バンガロールもまた、雲が幾層にも重なって、曇天である。しかし高原だけあり、風は軽やかなのである。
インドの機内食は、それがたとえ1時間を切ったフライトであれ、かなり気合いの入ったものがサーヴされるということは以前も記した。
さて、本日の機内食。
チキンのビリヤニ(炊き込みご飯)に、チキンカレーとダル(豆の煮込み)がトレーに載っている。
何故、こんなにも、ご飯ものばかり? と思われよう。
実は、ビジネスクラスは満席で、最後部の席に座っていたわたしたちには、望むノンヴェジタリアン(非菜食主義者)のための料理が残っていなかった。
普段のわたしであれば、料理が足りないときなど、ヴェジタリアンでも構わないと寛大に対応するのだが、今日のメニューを見たところ、ヴェジタリアン料理は今ひとつであった。
たとえ「無料でアップグレード」を受けたとはいえ、もちろん、一応の主張はする。
それがマイハニーである。
ちなみに、夫はインド人だが、一般のインド人にありがちな、「オレはノンヴェジが食べたいんだ! なんとかしろ!」などとうるさく騒ぎ立てたりはしない。スマートに、さりげなく、フライトアテンダントを口説くのである。
「少々お待ちください」
とフライトアテンダントのお兄さんは言い、そして持って来てくれたのが、これだった。ビリヤニは、「万一ノンヴェジ料理が足りなくなったときの予備食」としてビジネスクラスに載せられている料理なのだ。多分。
なぜなら以前、隣の乗客が、同じような状況になった時、ビリヤニを食べていたのを目撃したことがあるからだ。おいしそうだ、と思ったことがあるからだ。
で、右上のもう一皿は、エコノミークラスの余りである。
「こんなに食べれんやろ!」
と思いながらも、これがどうして、どちらもおいしい。
「これ、もう夕食だからね。今日は夕飯なし!」
などと夫に告げつつ、平らげはしなかったものの、8割ほど、食べた午後3時過ぎの空の上。
●DOCOMOがインドに。『官僚たちの夏』にインドが見える。
昨年の11月、日本のNTTドコモがタタ・グループの傘下であるTata Teleservicesに巨額の出資(2640億円)をしたことは、以前も記した。
そしてそれは、夫曰く「非常に高い値段で買いすぎた」買い物であった、ということも、記した。興味のある方は、この記事を参照されたい。
さて、本日。空港から市街へ向かうハイウェイ(とは名ばかりだが)の途中で、TATA DOKOMOの看板を、少なくとも6つ、見かけた。
ロゴは確か数カ月前に発表されていて、茶色の地に暖色系の、まるでチョコレートのパッケージのようなそれを見た時には、「これでいいのか?」と思ったが、大きな看板を見て、よりいっそう「これでいいのか?」と思った。
ブランドイメージを、まずは定着させるためのもの、であろう。しかし、文字が読みにくい。
何の会社なのか、この際、わからなくてもいいから、ブランド名をアピールしているという意図はわかるのだが、でも、DOCOMOを知らない人に、この文字がDOCOMOであるということが、そもそも読み取れるのであろうか。
いろいろとわたしなりに意見はあるものの、余計なお世話でもあろう。このくらいにしておこう。
ところで、タタといえば、TATA MOTORSのナノが、数日前、ついに納車を開始した。
左の記事は、「納車第一号」のニュース。
今後、インド都市部の渋滞は、益々ひどくなるのだろう。せめて交通ルールを、なんとかしてほしい。と、毎度のように思いつつ。
ところで、インターネットを通して、それが合法なのか非合法なのかわからんので、公言していいものかどうか、若干憚られるが、ともあれ、ときどき日本のドラマを見ている。
ということは、以前も記した。
数週間前より『官僚たちの夏』を見ている。戦後の官僚たちを礼賛しすぎているあまりにもなムードに対しての云々はさておいて、佐藤浩市はすてきだし、当時の日本を知るのは面白い。
第一話を見て、たいそうな親近感であった。
日本初の庶民向け国産車を販売すべく、官僚たちが東奔西走するのだが、価格設定が20万円。ナノの25万円とだぶる。当時の日本人の年収と、インドの中流層以下の現在の年収とがだぶる。
これまでも、あちこちで書いたり話したりして来たが、今のインドは、終戦直後から高度経済成長を経て、現在にいたる日本の変遷が、一度に見られる国、であるのだ。
その思いを、『官僚たちの夏』を見ることで、改めて強くした。
著しい貧富の差の同居。インフラストラクチャーの不備、工事現場の前時代的様子、わたしがこのブログを通しても、折に触れて捉えて来ているこの国の時代を超えたハチャメチャな感じ。
この件に関してもまた、あれこれと書きたいところだが……このへんにしておく。
●そして昨日は、インド結婚記念日だった。
土曜の朝。普通に目覚めて、普通に朝食を食べていたら、デリー実家からの電話が鳴った。
「結婚記念日、おめでとう!」
とロメイシュ・パパである。すっかり、忘れていた。7月7日の出会い記念日で、もう、記憶の糸が途絶えていた。数時間後、義姉スジャータからも電話が鳴る。従兄弟のアディティヤも電話をくれた。
あの夏から8年。
忘れようにも忘れられん、暑くてどろどろな結婚式だった。
しかしまあ、今から思えば、結婚式で初めて夫の祖国に行ったということも、結婚式で初めて両家の両親が顔を合わせたというのも、なんというか、全般的に、みなさんチャレンジャーだったわね、と思う。
今思えば、何もかもが、「知らぬが仏」という感じだった。あらかじめわかっていたら、あのようにはならなかっただろう。
ところで今日は、ユカコさんとビルと4人でランチ。ジェイクくんはナニーと一緒にお留守番だというので、会えないのは残念だったが、大人だけで飲んで食べての楽しい時間を過ごすことができた。
場所は、我がお気に入りの場所のひとつであるロウアーパレル地区にあるGOOD EARTHの中のダイニングTHE TASTING ROOM。高い天井の天窓から、時折、日ざしが差し込んで来て、とても雰囲気のいい場所なのだ。
料理もインドにしてはかなりおいしく、わたしはスープとサラダ、パスタを、アルヴィンドはテンダーロインなどを注文してあれこれと味わう。
ところで、先日購入したYAZDANI BAKERYの食パン。
シリアルのかわりに、久しぶりに食べる厚切りトーストは、本当においしかった。もう、ジャムさえいらない。香ばしく焼けたパンに、バターさえ塗られていれば、それがいい。
小麦粉の匂いと、バターの匂い。そしておいしいコーヒーの匂い。
こういうシンプルさがまた、とてもいい。