昨日、米国でゴールデングローブ賞が発表された。作品賞をはじめ、4部門受賞の快挙を果たしたのが、"Slumdog Millionaire" (邦題:スラムドッグ$ミリオネア)だ。
ムンバイのスラム育ちの青年が、クイズ番組で勝ち抜き、巨額の賞金を目前とする。その彼の生い立ちを追いつつのラヴストーリーとのことだが、ともかく、興味深い。インドでは今月末から上映されるらしい。
トレイラーを見ているだけでも、ぐっとくる。音楽もいいし、映像が躍動感に満ちている。ブロードウェイにひとっ飛びして、すぐにも観たいものである。
詳しくはこちらの記事を参照されたい。
実は、今朝の新聞のコラムで、映画批評を読んだ。なんとライターは、「インドでの公開を待ちきれず、海賊版のDVDを入手して観た」と公言している。さすがインド。海賊版の視聴は、一応は、犯罪行為になるはずなのだが。
かくいうわたしも、「プチ犯罪」を覚悟で、実は本日、コラバ・コーズウェイ(商店街)へ買い物へ行った際、海賊版DVD屋を探したのだった。しかし、こんな時に限って、店が出ていない。
尤も、インドでもまだ上映されていないのだから、よほど気の利いた海賊版屋じゃない限り、持ち合わせていないだろう。海賊版DVD屋がひしめくフォートのMGロードまで足を延ばそうかと思ったが、コラバ歩きだけで疲労困憊となり、今日のところは諦めた。
なにしろ、観光客も多く、露店がひしめき合うこの商店街は、ほんの数十メートル歩くだけで、体力を消耗するのだ。特に外国人にとっては。
なにしろ、客引きが多い。彼らを振り切るだけで、難儀である。いくらインドに住んでいようが、インド人の伴侶を持っていようが、どこから見ても外国人のわたしは、彼らにとっては「観光客」にしか見えないわけで、それが辛いところである。
「マダム! パシュミナ、パシュミナ!」
(この暑苦しい最中に、要らぬ!)
「バル〜ン! バル〜ン!」
(そんなどでかい風船をどうする。膨らますだけで、貧血起こす!)
「ドラム、ドラム、スモールドラム!」
(大きかろうが、小さかろうが、太鼓など不要!)
「ピーコック、ピーコック!」
(うわ近寄るな!暑苦しいってば、その孔雀の羽根!」
「マダム! アー・ユー・チャイニーズ?」
(だったら、どうだというのだ?)
「マダム、マネー、エクスチェンジ?」
(ルピーなら、間に合っている!)
「マダム、カスタードアップル? オレンジ?」
(フルーツは、近所で買うから!)
「マダム、5ルピー。チープ。チープ」
(どんなに安くても要らぬ。そのビー玉みたいな得体の知れない物体)
思い出すだけでも、いったいいくつの言葉を振り切って歩いて来たか。
結局、最低限だけの買い物をするに終わり、帰路へ就いた。それにしても、映画。インドに来てからというもの、劇場に足を運ぶ機会は激減した。
マンハッタン在住時代は、ブローウェイ、リンカーンセンターそばというエンターテインメント好きにはたまらないロケーションに住んでいたわたしである。
徒歩10分圏内に、いったいいくつの映画館があっただろう。今思えば、本当にすばらしい場所だった。ああ、にも関わらず、なにゆえわたしは、こんなところに?
インド生活で困ること。話題の映画をすぐに見ることができない。
意識するといろいろ不満とは浮かぶものである。普段あまり考えないのは、前向きな性格だからというよりも、つまらない気分になりたくないからだ、といった方が正しいのかもしれない。
とはいえ、映画を見なくても、道を歩いているだけで、ある意味「人生劇場」を見ているようなものだから、退屈はしないけれど。