今週から、朝のウォーキングを始めた。夫は毎朝、わたしは数日おきにヨガをやっているが、わたしはヨガよりも歩く方が好きで、歩いた後は身体の調子もよい気がするので、近所を歩くことにしたのだ。
インドでは、車での移動が多いため、意識的に歩かなければ歩く距離が非常に短くなってしまう。バンガロール宅では気分転換に庭をぐるぐると歩き回ることができるが、ムンバイ宅ではそうはいかない。
トレッドミルを買おうかとも思ったが、機械的なものはあまり好きではない。
年始の健康診断でも、高脂血症の夫アルヴィンドは、ドクターから「ウォーキングが最も身体に良い」と勧められていた。ヨガは確かにいいが、体重は減らないし、それだけでは運動量として不足なのかもしれない。
そんな次第で、二人して歩くことにしたのだった。6時半から7時の間に家を出て、1時間ほど、海辺の遊歩道を歩く。
まだ夜が明けぬ薄暗いころの、遊歩道までの道は、昼間のそれとは様子が異なる。ムンバイで最も地価の高い住宅街の一つであるとは思えない、それは光景である。
歩道のあちこちで、ぼろ布に包まって眠る人々がいる。高いびきの主を見れば、それは女性。ぼろ布からはみ出した、かかとのぼろぼろに荒れて汚れて。
目覚めたばかりのカラスが四方八方でクワァクワァクワァとけたたましく、鳴き、旋回し、目前をよぎる。
昼間は路上で死んだように眠る犬らは、しかし活発に交尾を行っている。
……ぐ〜んと血圧が下がる思いで、遊歩道を目指す。
そこは、外界とは少し隔離された感じで、しかし風向きによっては漁村からの魚の匂いが迫ってきて、嗅覚を閉じるのに苦労する。
それでも、風向き問題さえ解消されれば、眺めはよいものである。
カラスだけでなく、白鷺も見える。緑色のオウムも見える。
朝の月もまた、愛らしい。
遊歩道を歩くのは、近所に暮らす人々。わたしを除いて、みなインド人。
30年以上前に埋め立てられ、高層アパートメントの林立する高級住宅街となったこの地域は、古くからの居住者が多い。
多くの富裕層が、自分たちが住むために、あるいは投資のために、物件を購入し、ここに一大コミュニティを築いている。
……と、夫が年配の男性と挨拶をしている。
仕事の関係者のようである。こんなところで知り合いに会うとは。朝っぱらから、油断ならんというものだ。よかった。眠たくても、「眉」だけは描いてきておいて。にこやかに、挨拶を交わす。
聞けば彼は、夫の会社が投資をしている企業のCEOだとのことで、わたしもよく耳にはしている会社であった。夫はしばらく、彼と一緒に歩きながら話をしていた。
彼は30数年前に、この界隈の物件を4つほど購入したらしい。1スクエアフィートあたりの値段が、現在の30分の1程度だったとのこと。現在のこの地区。全然ゴージャスでない3ベッドルーム程度の物件ですら、「億ション」である。
バンガロールにせよ、ムンバイにせよ、不動産バブルが弾けてしかるべきだと常々思っていたが、その思いを新たにする。
世の中には、「ふさわしい高価」と「ふさわしくない高価」があると思う。この界隈の不動産価格は、圧倒的に「ふさわしくない」し、間違っている。と、本能的に思う。
それはそうと、朝、歩くのは身体にも精神にも、よいような気がする。まだ3日目だが。三日坊主にならないようにしたいものだ。
三日坊主といえば、「般若心経」をノートに書き写す写経は続いている。もう、すべてを覚えた。プチ達成感である。ふとした時に、唱える言葉が口をついてでてくるというのは、とてもよいことのような気がする。覚えてよかったと思う。
しかし、英文の書き写しは、続いていない。数日おき状態だ。これこそを、毎日続けなければ。
帰宅して、水を飲む。
熱いシャワーを浴びる。いい香りの自然派石けんでリフレッシュする。
ローズウォーターで肌を潤す。
(何年も愛用しているシャナーズ・フセイン製のSHAROSE。保湿剤不要なほどに潤う)
ハーブティーを飲む。
(デリーのレガリア・ティーハウス製)
しぼりたてのフルーツ、もしくは野菜ジュースを飲む。
(基本はリンゴ、ニンジン、レモン。アレンジでパイナップル、ザクロ、カプシカム、トマトなど)
シリアル、もしくはミルク粥を食す。
(シリアルは、玄米フレークにグラノーラやミューズリを少し添えて、パルシ・デイリーの新鮮ヨーグルトとともに。Fabindiaのオーガニックなグラノーラがおいしい!)
果物も、食べる。
(バナナ、パパイヤ、パイナップルなど、その季節、その日に応じて。マンゴーのころは、毎朝のようにマンゴーひと筋)
新聞に目を通す。
夫を見送る。
写経をする。
コーヒーを飲む。
(南インドの挽き立てコーヒー。マイルドで、それなりに美味)
コンピュータに向かう。
こうして、わたしたちの一日は始まる。