市街を巡る一日。まずはおなじみジャイプール発のテキスタイルショップ、ANOKHIに立ち寄り、テーブルクロスや部屋着を新調する。年中、すごく暑いか、暑いか、まあ涼しいか、やや肌寒いかのムンバイ&バンガロール生活。
延々と同じ木綿の部屋着を繰り返し着ているうちに、色あせていることにも気づかず、メイドらよりも明らかに安っぽい出で立ちとなってしまう。古くなった衣類はまとめて寄付して、随時新しいものを供給せねば、と久々に赴いたのだった。
その後、数軒の店を探訪した後、ランチタイムは、新しいグジャラティ・ターリーを体験しようと、新規店を開拓することにした。
ムンバイでは、グジャラート地方の定食である「グジャラティ・ターリー」を供する店が多いことは以前も記した。
1月に訪れたRAJDHANI(←文字をクリック)を最後に、久しくターリーを食べていないので訪れた次第。
店の雰囲気は、まあまあ。
ローカル向けの店と聞いていたが、RAJDHANI同様230ルピー(約500円)というのは、いくら食べ放題でもインドにしては高いと思う。
中流層にとっては、かなりの「ごちそう感覚」な値段に違いない。
さて、グジャラティ・ターリーはヴェジタリアンである。しかし、各種野菜や豆の煮込みなど、決して物足りなさを感じさせない種類の豊富さと味わいだ。好みの具があれば、それだけを指定しておかわりができるのもうれしい。
最初はチャパティやロティがついてくるが、最後にはご飯ものも出てくる。そもそもグジャラティ料理はジャガリなどの甘みが強い。この店の料理は、全体的に「より甘め」だった。
それがまたおいしさの理由でもあるのだが、しかし甘みの少ない料理が少ないところが今ひとつである。もう少し、メリハリがほしいところだ。
加えてデザート類が多い。おいしいけれど甘過ぎて危険なお菓子、ジャレビーもある。オールドデリーの揚げたてジャレビーは本当においしかった。
オレンジ色の液体はマンゴーピューレー(ジュース)、左側の飲み物はバターミルクだ。
ところで相席になったわたしと同世代とおぼしき女性。ケニアから来たという。お兄さんがムンバイの病院で手術を受けるため(いわゆるメディカルツーリズム)、その付き添いで同伴しているのだとか。
インドでは安くで質の高い医療を提供する病院が少なくなく、発展途上国からだけでなく、英国をはじめとする欧州から治療に訪れる人も増えている。
異国の地で、治療を受けねばならないほどの疾患を抱えているだけでもたいへんなのに、その異国がこのインドとあっては、なにかと心労は尽きぬだろうと察せられる。
彼らの幸運を祈り、店を出た。
車に乗り込み、少し走ったところで、RAJDHANIの新しい支店(だと思う)を発見! 先日は混沌のモスク周辺に潜入してのランチだったが、ここなら来やすい。今度また改めて来てみよう。
いや、その前にもう一度SAMRATを訪れて、本当にSAMRATが自分の好みに合っているかを再確認しておいた方がいいだろう。なぜかと問われても、自分でもよくわからん。
ところで、ランチのあとは、クロフォードマーケット界隈へ。先日、香水店のサビーナに夫アルヴィンドの健康状態について話しをしたとき、コレステロール値を落とすには、「パール・ガーリックのブラウンヴィネガー漬け」がいちばんと聞いた。
コレステロール値を落とすには、フェヌグリークを発芽させたものを毎朝大さじ一杯ほどを食すのもいいのだが、それよりも効果があるという。
そのパールガーリックはクロフォードマーケットに近いダナ・バンダール (DANA BANDAR)と呼ばれる卸売り市場で買えるから、ぜひ購入してみるよう勧められていた。
ダナ・バンダールに行く前に、野菜や果物を購入しようとクロフォードマーケットへ。と、あたりはマンゴーでいっぱい! ついにはアルフォンソ・マンゴーの季節がやってきたのだ。
とはいえ、まだまだ「初物価格」で、品質のよいものは1キロあたり200ルピー(400円)以上する。ピーク時は100ルピーを切るので倍以上だ。とはいえ、来月まで待てない。ここ数カ月は旅も多いし、食べ損ねる機会も多い。
ともかくは熟れているもの、そうでないものを織り交ぜて1ダースを購入した。マンゴー大好きなアルヴィンドも喜ぶことだろう。
マンゴーはじめ、野菜や果物などのほか、物乞いチルドレンのためのビスケットも購入。インドは「ビスケット大国」である。朝、紅茶とともに。あるいは午後、ミルクたっぷりの濃厚チャイに浸して食されるのだ。
インドでは、小さいものなら1パック5ルピー(10円)程度から、さまざまなビスケットが売られている。どれもそれなりに、おいしい。
女の子の顔が印刷された、このParle-Gというビスケットはロングラン商品で、歴史は1929年に遡る。
そのときどきによって焼き加減が違っていて、色が濃かったり薄かったりする素朴さがまた、いい。
いいのか?
ところで最近、わたしが気に入っているのは、BRITANNIAの新製品 "NutriChoice 5 Grain"。
「厳選された5種類の穀物(シリアル)」が使用されており、ヘルシーで素朴な味わいなのだ。
午後のチャイタイムにも時々食するビスケットである。
物乞いチルドレンに向けては、このビスケットの1パック18ルピーのものを大量に購入した。
彼らに遭遇しない日もあるが、遭遇する日は一日に何度も、物乞いを受ける。
とはいえ、「きりがないわけではない」と割り切った日から、お腹をすかせた子どもたちを無視することはできないと思ったときから、せめてものビスケット配布は続けている。
1カ月に30個としても1000円余り。それがたとえ倍になったとしても2000円。
さて、クロフォード・マーケットを出れば、そこはド喧噪。「仰天ライフ」のラッセルマーケットのシーンでも登場した、頭上に大きなかごを載せて荷物を運んでくれる「運び屋」の兄さんとともに、車の到着を待つ。
と、いきなり現れる物乞いチルドレン2名。ちょうどよかったとビスケットを渡したら、ひとりの少女が、いきなりそこで封を開けて食べ始めた。
いつもだと、奪うように受け取って、どこかへ立ち去る子ばかりなのに。よほどお腹がすいていたのだろう。
一口二口食べた後、彼女はわたしの方をみて、満面の笑みを浮かべた。
おいしかった、のだろうか。いや、彼女たちの人生に、味覚に合う合わないなどといった概念はないだろう。ただ、生き延びるために、口に入るものを、食べるばかりの。
好き嫌いだの、うまいだのまずいだの、言っている場合ではないのである。身体を壊さない程度の、安全な食料を口にすることだけで、精一杯なのだ。
生まれついた時から、お腹をすかせている。戦時下にあるわけでもないのに。やっぱり、こんな世界はおかしい。こんなにも、スラムだらけのこの街、この国は。
クロフォード・マーケットを出て、すぐ近くにあるというダナ・バンダールへ向かおうと思うが、車だと迂回せねばならず、大通りから路地に入り、スラム界隈をくぐり抜ける。
ぼろぼろの家屋の、しかし薄暗い室内に、テレビの画面が浮かび上がっている。バンガロールのスラムにある慈善団体、クレセント・トラスト(←文字をクリック)を訪問したときも、スラムの家屋にテレビを認めた。
テレビは貧しい人たちにとって、しかし購入の優先順位が高い「娯楽の箱」でもあるようだ。
人がせめぎあうように歩く路地を、のろのろと車は走る。ドライヴァーのプラシャントが、「ここがダナ・バンダールです」というけれど、いったい、どこにパール・ガーリックがあるというのだろう。
写真では決して伝わらないが、この界隈の、人の多さ、埃っぽさ、そして匂いといったらあ〜た、たまらんね、という感じである。が、せっかくここまで来たのだから、探してみようと「らしき店」を探すが、見つからない。
パール・ガーリック。本当にそんなものが、実在するのだろうか。何軒かあたったが、結局見つからなかった。諦めて界隈の様子を撮影してきたので、せっかくだから載せておこう。
この上の写真。ムンバイ名物のストリートスナック、"Vada Pav" だ。インドのベーカリーでよく見かける2列×3列、6つにつながったパンのひとつをちぎって、中程をホットドッグのようにカットする。
その内部をバターたっぷりの鉄板に載せて焼いたあと、間に「ジャガイモなどの揚げ物」を挟んで食べるのである。これがまた、ジャンクながらもおいしそうなのだ。
揚げ物ではなく、スパイスなどとともに、豆の煮込みペーストのようなものを挟んだものもある。一度メイドのジャヤが作ってくれたが、スパイシーでおいしかった。
一度、この道ばたスナックを食べてみたいと思うのだが、胃にもたれそうな気がしてまだチャレンジしていない。
今度、ストリートよりは清潔そうなインドスナックのファストフードチェーン、JUMBOKINGへ赴いて、そこで試してみようかとも思う。ああ、書いているうちにも、食べたくなってきた。
今、検索してみたら、YouTubeで調理中の映像を見つけた。これはグジャラート州アーメダバードのスタイルらしいが……。
うぉぉぉぉ〜! と、叫ばずにはいられない、も、もんのすごい量のバター!!
どんだけバターまみれですか。あ〜びっくりした。食べちゃいかん。少なくともアーメダバードスタイルは。
まるでフライパンを拭くように、パンが「ふきん」と化した後の、さらなるバター攻撃が衝撃的。驚きますわ。
ダナ・バンダールの界隈は、スパイスや漢方薬を思わせる中国産ハーブも売られていた。しかし、パール・ガーリックは、誰も知らず。スイカ売りのおじさんは、たいそう几帳面にスライスしていた。写真を撮らせてと頼んだら、お客(左)が「君も1切れ食べなさい」。ごめんなさい。食べずに立ち去る。ストリートの生ものは、お腹にデインジャラスなので。
右のお兄さんが売っているのが、ジャヤが作ってくれた豆煮込みのvada pavのようである。これはこれでおいしそうだが、でも揚げ物サンドイッチのほうにそそられる。
ムスリム(イスラム教徒)のお嬢さんたちの制服がかわいらしい。屋台の上に積んであるのはサトウキビの束。サトウキビジュースのスタンドである。