本日は、JULY 4TH. アメリカ合衆国の独立記念日である。さまざまな人生の転機を経験し、永住権保持者であるわたしたちにとって、米国は第二だか第三だかの故郷である。その故郷の独立記念日は、祝わねばなるまいというものだ。
本日は、ユカコさんとビルに招待され、あいにくの大雨であったが、南ムンバイから北ムンバイのジュフへと出かけたのだった。
モンスーンの時期の「週末」に、南から北へ一気にドライヴするのは、思えば初めてのことである。だからこそ、目前に広がる光景は新鮮かつ、驚かされるものであった。
大雨なのに、恋人同士で、家族揃って、あるいは友人同士で、マリンドライヴのあたりを楽しげに散歩している人がたいそういるのである。
傘をさしている人もあれば、ずぶぬれの人もいる。防波堤に打ち寄せる波を、諸手を広げて受け止めるハッピーな(阿呆な)若者もいる。
そもそも、横殴りの雨である。傘などさしていたところで、気休めだ。雨に濡れてもノープロブレムなインド庶民のパワーに脱帽だ。
ところで、週末は比較的交通量が少ないムンバイだが、この大雨では渋滞が予測されるとの予感は的中し、あちらこちらで足止めを食らう。
それでもなんとか、例の新しい橋、『ウォルリ・バンドラ シーリンク』まで到着した。繰り返すが、気象状況は、横殴りの風雨である。にも関わらず、橋の入り口付近は、なにやら見物客で込み合っている。
横断歩道のない道路を見物客があちこちで横断するから、車はいちいち停車する。
雨が激しくて遠景が見渡せないのは残念だったが、しかし、なかなかにダイナミックな橋で、走行する気分は爽快である。
「ここがインドだなんて、本当に信じられないよ。バンガロールの空港がオープンした時にも、そう思ったけどね」とマイハニー。確かに、往年の旧バンガロール空港に比べると、今の空港は夢のようである。
今や、その「夢」の環境に慣れ、それが普通になってしまったけれど。
新聞記事にあった、例のケーブルもある。「それぞれのケーブルは、900トンの重量を積載可能。それはアオクジラ8頭分に匹敵する」の、あのケーブルである。
さて、橋は速やかに渡りきれたものの、橋を降りてからがまたダイナミックな渋滞だ。速やかに行けば1時間程度でつくはずなのに、ジュフへ到着するころには2時間を過ぎていた。
尤も、自分たちで運転するわけでもなく、呑気に電話をしたり、メモを取ったり、車窓から世間を眺めたり、居眠りをしたりしていられるので、楽と言えば楽である。
ところで左の写真はジュフ・ビーチの光景。
ここでも目を見張る光景が!
激しい風雨の中、人々は海辺、いや、海で遊んでいるのである。
着衣のまま、海に入っている人も大勢いる。
「風邪をひくよ!」
などという言葉は、この際、無意味なのである。免疫力が炸裂しているのである。
さて、3時に到着の予定が4時になってしまったものの、無事に到着! 久々のジェイクくんは、家中を走り回っていてもう、目を見張るほど元気いっぱい!
とてもやさしげなナニーに抱っこされて、わたしのことは、覚えていない様子。なので思い出してもらおうと接近してみるのだが、どうもおびえた表情を見せるので、しばらく様子を見ることにした。
ところで、今日の集いの背景には、ちょっとしたストーリーが存在するのだった。
先週、久々に、ユカコさんとビルと会ったときのこと。何かの話から、テーブルの上で使える電気式の鉄板(通称ホットプレート?)がインドの家電店で販売されているのをビルとユカコさんが目撃した、という話になった。
以前から、卓上で料理ができる何かが欲しいと思っていたわたしが、「それ、いいね! 欲しい」と大いに関心を示したところ、ビルが「じゃあ、買ってみるよ! 来週の土曜は我が家で食事をしよう」と誘ってくれたのだった。
さらには「独立記念日にバーベキューって、いいねえ!」と盛り上がり、話はトントン拍子にまとまった。
しかし、それからが、トントン拍子にはいかなかったようだ。インドだもの。
インドで数年前から全国展開しているところのCROMAという家電店(タタ・グループ)で見かけたとのことで、早速ビルが週明けに買いに行ったところ、「製造中止」になっていたらしい。いかにもインド的である。
しかし製造中止、と聞いても諦めなかったところがポイントだ。
ビルは、インドのe-Bayで当該商品を見つけ出し、さらには配送に4、5日かかるというのを、「それでは週末に間に合わない」というので、たまたま出品者が近くに住んでいたことから、直接受け取りに行ったというのだ!
その鉄板にかける情熱、いや独立記念日をバーベキューで祝したい愛国心に感謝! である。
さらには、鉄板焼きの主役ともいうべく肉やエビなども、ビルが注文して手配してくれたのだという。
あ〜。なんという臨機応変かつ頼りがいのあるハズバンドであろうか。かなりうらやましい。
さて、しばらくすると、ジェイクくんもちょっと気を許してくれた様子を見せてくれる。ここぞとばかりに一緒に写真を撮ってほしいのだが、もう、驚くほどにすばしっこい。
この前までは赤ちゃんだったのに、1歳と数カ月にして俊足の男である。わたしとしては、酔っぱらう前の状態のいい顔で撮ってもらいたかったのだが、状態もなにもあったものではない。
執拗に二人で撮られようとする我。酔っぱらっているわけでもないのに、どう見ても酔っぱらいだ。自分で自分が怖い。
ツーショットは諦めて、取り敢えずピントの合った写真をなんとか一枚。「ジェイクの髪の毛の色、いいね〜!」と言ったら、「僕と一緒だよ!」とビル。わ、わからないんですけど……。ところでビルは、カクテル(モヒト)を作ってくれていところ。
牛肉、豚肉、そして大振りのエビと、それぞれたっぷり用意されている。
ユカコさんがマリネしている傍らで、激しくうれしそうなマイハニー。
スパークリングワインに始まり、モヒトにビールと、あれこれをいただきつつ、やがて遅いランチ、というか早いディナーの開始だ。
今日が初使用、というグリルをみなで囲む。
このほか、ユカコさんがサラダや高野豆腐(アルヴィンドの好物)なども用意してくれている。
グリルは、下に水を入れるトレーがついていて、そのため煙が少ないし、うまく焼けるしで、かなりいい感じである。
日本には、きっともっと高性能の商品があるのかもしれないが、これで十分だ。
ビルが我が家の分も手配してくれるという。
楽しみだ!!
それにしても、このような「焼き肉系」には日本のご飯がよく合うというものだ。特に、ごま油やニンニク、ネギなどでマリネされた豚肉は、風味がよくて、ご飯が進む。次々に焼きながら、相当に食べた気がする。
ところでビルが持っているのは、ウィンブルドンに因んでテニスのラケット。ではなく、充電式の虫取りラケット。ハエやら蚊を電気ショックで仕留めるのだ。インドの「定番商品」。
ジェイクくんも、ユカコさんの膝の上でお食事。かわいい……。思わず箸を置いて、カメラを構えずにはいられない。こういうお年頃のころは、なにをしても、かわいいものなのね。たとえそれが、ただ、高野豆腐を食べている姿であったとしても。
食後はまた、ワインやカクテルをふるまってもらう。アルヴィンドが持っているのは、ユカコさんがアマレット(Amaretto:イタリアのリキュール)で作ってくれたカクテル。
杏仁豆腐と同様、アプリコット(アンズ)の種子の核が素材で、アーモンドに似たいい香りがするのだ。これがまた、おいしかった。
さて、中盤、男子はウィンブルドンの女子決勝を見ていたが、やがて大音響でコメディ映画を見始め、大笑い連発でうるさいのなんの。それに負けじと女子は会話をするから声がどんどん大きくなり、文字通り「大騒ぎ」な夕べである。
ところでスイーツ類は、わたしたちが南ムンバイから調達して来た。我が家のご近所、コラバ地区の三大カフェ&ベーカリーとわたしが勝手に位置づけているところの店の焼き菓子である。
それぞれの店に、さまざまな種類の焼き菓子があるが、今日のところは以下のような品揃えでまとめたのだった。
・THEOBROMAのチョコレートケーキ(どっしりとしているけれど、口当たりふわふわ、カカオの風味濃厚)
・MOSHE'Sのバクラヴァ(ユカコさんたちが好きなスイーツ)
・INDIGO DELI のバナナ・キャラメルケーキ
いずれもかなり甘いが、しかし、素材の風味が生きた素朴な味わいで、とてもおいしいのである。
4時から延々と、飲んで食べておしゃべりをして、結局おいとまするころには11時近くになっていた。酔っぱいらしく、話はあちこちに飛びながらも、いろいろな話で盛り上がり、本当に楽しかった。
帰りの車では爆睡し、あっという間に家についた。行きは2時間以上もかかったのに、帰りは45分程度で到着し、事実、あっという間なのであった。
ところでユカコさんとわたしは、時期が違えど、東京、ニューヨーク、ベイエリアと同じ土地に暮らした経験がある。
さらには、ほとんど同時期に結婚して、同時期にバンガロールに移り、同時期にムンバイに移転した。おまけにビルとアルヴィンドは同じ歳(ネズミ年)である。よくよく考えてみれば、飲食の嗜好以外にも、いろいろなところで共通点がある。
これも、ご縁だなあ。と思いつつ、楽しい一日であった。