バンガロール宅に戻らないまま、8月は、終わろうとしている。デリーで思いがけず長逗留したのも理由だが、あれはあれで意義深い滞在だった。
夫が発熱して体調を崩したのはいいことではなかったが、しかし結果的に、好意的な状況を招けた。幸不幸は表裏一体である。
来週は久々に、バンガロールに戻る予定。せめて月に一度は戻り、あれこれと雑事をせねばならない。
先週23日の騒がしさは、その後、十日間に亘って繰り広げられるガネーシャ・フェスティヴァルの幕開けのためだけではなかったようだ。
ヒンドゥー教だけでなく、ムスリム(イスラム教徒)にとっても大切な行事である「ラマダン(ラマザーン)」が始まる日だったらしい。
Prayers galore in Mumbai as Ganesh festival, Ramzan start
ヒンドゥー教徒が80%を超えるインドにあって、ムスリムは13%と少数派だが、しかし総人口が10億人を超えるインド。ムスリムだけでも日本の人口を超えるわけで、インドはインドネシア、パキスタンに次ぐ世界第三位のイスラム教国でもあるのだ。
さて、ムスリムのことはさておき、今日はヒンドゥーのガネーシャ・フェスティヴァルの実態に触れるべく、街へ出てみた。この時期、街の随所で特設のやぐらや掘建て小屋のようなものを目にする。
そこには、ガネーシャの像(アイドル)が奉納されているのだ。
22日の夜、ムンバイ郊外各地の工房から、約20万ほどもの大小のガネーシャ像が市内に運びこまれたという。1万を超える自治体と4万を超える町内会が祭りへの参加を申請し、準備が進められてきたとのこと。
博多山笠よろしく、ガネーシャ祭りにもその年々のテーマがあるようで、今年は、昨年11月26日にムンバイを襲った同時多発テロと、現在流行中の新型インフルエンザ、らしい。これらがどう表現されるのか全く見当がつかない。
ともあれ、本日いくつかのやぐら(寺院含む)を巡って写真を撮ったので、ここに紹介したい。ちなみにこれらガネーシャの像は、ガネーシャ・マンダル (Ganesh Mandal) と呼ばれている。
左上の写真は、我が家のすぐ近く、漁村スラムの一画に備えられたマンダル。左下の小さな「子泣き爺」みたいなガネーシャは、個人的に、いや。
右上は、コラバ・コーズウェイのマンダル。ガネーシャ・マンダルは、外から見えないよう、奥まったところにおさめられている場合が多いようだ。お参りをして、写真を撮らせてもらったら、見張りの少年たちが、菓子を手渡してくれた。
コラバの市場内にあるマンダル。ちなみに、マンダルに対面するには、靴を脱いで素足にならねばならない。建物の中、というわけではなく、汚れたマットや土の上やコンクリートの上などを裸足で。それは、かなり辛い。
さて、フォートまでやや北上し、他の用事をすませたあと、再びマンダル巡り。なんだか、もう十分な気がして来たが、しかしせめて4、5カ所は見ておきたいものである。
さて、この上の写真はフォートにて。コラバ地区に比べると、往来激しく訪問者多く。しかも狭苦しい場所に入り込まねばならない。呼吸困難な感じ!! 信仰心のない人間に、この酸素不足は耐えられぬ。
裏寂れたアミューズメントパークを思わせる展示物。いや、神様たち。わたしが入った途端、照明が落とされ、ヒンディー語による解説が始まってしまった。意味不明。
今朝のタブロイド紙、Mumbai Mirrorで、「今年人気のマンダル!」にリストアップされていた場所の一つなのだ。
さすが、人気があるだけあり、入り口の前には列ができている。
靴を脱ぎ、入り口の小屋に預けねばならない。
そのあと、列が伸びる歩道やら路側のあたりを、裸足で歩かねばならず、辛い。
おのずとつま先立ちである。
日ざしが照りつける中、汗だくの野郎どもと並ぶのも辛いところ。でも、せっかくここまで来たのだから、諦めてはもったいない。我慢我慢。
建物の中にはいくつかの部屋があるようで、最初の部屋には、ヒンドゥーの神々の絵画がかけられていた。次の部屋には、彫像の神々。
しかし、見慣れない神様ばかりで、よくわからない。両肩に魚を載せた不思議神様もいる。これほどヒンドゥー教に縁も知識もないくせに、ここにいる人間は、わたしくらいのものだろうと、自覚しながら歩みを進める。
それにしても、随所で扇風機が回っているものの、暑いし、線香は煙いしで、かなり燻製されている感じだ。
さて、お待ちかね、最後の部屋。入り口からこぼれるきらびやかな灯りに、自ずと心が高揚する。
うわっひゃ〜! これはまた、ど派手なお部屋である。敬虔な気持ち、になるのが、ものすごく難しい。『マルサの女2』に出て来た新興宗教団体を思い出した。
人々は、祈り、お賽銭を捧げる。携帯電話を取り出して、バシバシと写真を撮る人もいる。やっぱり、どうにも、敬虔な心持ちにはなれそうにない。
レインボーな照明は、壁の色を、ピンク、青、緑、オレンジと、微妙に変化させてゆく。
なんだかもう、何が何だかわからない。
ちなみにガネーシャ・マンダルは、来週の祭り最終日、海に奉納される。海を汚染することない自然の素材で作られている、と聞くけれど、どう考えたって、汚染されるに決まっている。
去年はその日、事情を知らないわたしたちは、バンガロールからムンバイ宅に戻って来て、大渋滞に巻き込まれ、たいへんな目に遭った。
今年はバンガロールだから、ムンバイよりはまだ、静かであろう。