わたしにとっての「大切な友」とは、どういう存在だろう。年を重ねる過程において、その定義は少しずつ、色合いを変えてきた。
新居で過ごした静かな週末。日曜の夜は、束の間、二人のゲストを迎えた。彼ら同士に面識はないのだが、普段、他都市を拠点に暮らしている彼らの予定が合う時間帯が、日曜日の夕方しかなかった。わずか2時間ほど。4人で語り合い、見送った後、しみじみと思った。
大切な友。それは、その人と会う頻度でもなければ、その人のことをどれだけ知っているかでもない。もちろん、損得勘定やしがらみは、一切ない。
たとえ短い時間でも、その人と交わした会話に関心を持ち、垣間見た人となりに敬意を抱き、「ケミストリー(化学反応=相性)」の一致を覚え、「またいつか、会いたい」と思える。過ごした時間が、心に温かく作用しながら、深く心に刻まれる……。今のわたしには、そんな人たちが、大切な友だと感じる。
すでに、諸々レポートしたところのOBLFの創始者であるANAMIKA、そしてJAYの二人。
米国ボストンを拠点にしているANAMIKA。テキサス州オースチンと、ハワイのマウイ島、そして母親の暮らすムンバイの三都市に拠点を持つJAYが、多忙なバンガロール滞在の合間を縫って、郊外の新居まで遊びに来てくれた。それだけでも、ありがたくてうれしいことだ。
JAYとは、我が夫のWharton(MBA)アラムナイで、2007年に初めて出会った。当時、DELLコンピュータのトップエグゼクティヴだった彼は、しかしカジュアルな独身生活を楽しんでいて、バンガロールにも自宅を持っていた。
わたしは、インド移住直後から、市場調査の仕事などをしていたのだが、当時、日本の大手広告代理店の仕事で、複数の富裕層インタヴュー(ライフスタイル調査)をしていた。その一環で、クライアント女史とともに、彼の家を家庭訪問させてもらったことがある。ミュージシャンでもある彼は、自宅にスタジオを作っていて、そこで音を聞かせてくれたりもした。音楽関係の仕事で、今でも日本へ1、2年に一度は訪れている親日派だ。仕事のはずなのに、すっかりリラックスして、3人で楽しい時間を過ごしたことを思い出す。
彼との思い出で忘れられないのが、ムンバイのナイトツアー。2008年11月26日。ムンバイは同時多発テロに襲われた。当時ムンバイにも住んでいた我々夫婦は、実家がムンバイにある彼と、テロの約1カ月後に再会した。その際、JAYに、テロにまつわるさまざまな裏話を聞いた。テロで殉死したポリス・オフィサーと親しかったというJAYから、彼の人となりを聞いたエピソードも記憶に刻まれている。その後、彼の案内で、ムンバイのミッドナイトツアーを楽しんだのだった。それは、ムンバイの底知れぬ深さ、妖しい魅力を、肌身に感じた夜でもあった。
その後、開催されたアラムナイでも、彼から聞いた話は非常に興味深く、さすがにそういう場ではメモは取らぬが、帰宅後に諸々調べ、ブログに出来事を記した。彼によると、1970年代、ムンバイのムスリムの女性たちのファッションは開放的で、ミニスカートを履いていたという。その話を聞き、耳を疑ったものだ。1979年、ホメイニー師の主導のもとに起こった「イラン革命」が契機となって、ムスリムの女性たちは、肌の露出を制限する服装が義務付けられたという。
先ほど、15年前に記したムンバイ・ナイトツアーの記事を読み返した。懐かしくも鮮明に、当時の記憶が蘇る。テロリストが上陸した海、辿ったルート、友人が殉死した場所など……。かと思えば、JAYおすすめのスイーツショップやパーンの屋台に立ち寄るなど、起伏のある記録だ。関心のある方は、ご一読を。
瞬く間に時間は流れて、二人はタクシーを便乗し、街中に戻っていった。
いい時間だった。またいつか。
🇺🇸Wharton (MBA) 同窓生の集い@Oberoi Hotel (2007/06/30)
https://museindia.typepad.jp/blog/2007/06/whartonoberoi_h_c9a1.html
🇺🇸ムンバイ同時多発テロを巡る真実の断片。ナイトツアー@ムンバイ (2008/12/20)
https://museindia.typepad.jp/2008/2008/12/2001-6480-1.html
🇺🇸Wharton (MBA) アラムナイのパーティにて。昔日ムンバイのムスリム女性はミニスカ?(2015)
https://museindia.typepad.jp/_2015/2015/08/mba.html
🇺🇸ボストン。ベースボール観戦を楽しみ、親戚や友人ANAMIKA宅を訪問
https://museindia.typepad.jp/2017/2017/06/boston.html
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