妻「明日、チャリティ・ティーパーティやるの」
夫「またお菓子焼くんでしょ? 僕も出席していい?」(いつもと同じ反応)
妻「いいわけ、ないでしょ。だいたい、仕事でしょ?」
夫「(オフィスから車で)5分だもん。ちょっと抜け出せるよ」(いつもと同じ反応)
妻「抜け出さなくていいから。明日はね、インドのテキスタイル講座とサリー着付け教室をやるの」
夫「ええっ、サリー着付け教室? それって、みんな着替えるんだよね! エキサイティングだね! 何人来るの? 平均年齢は? 僕も出席していい?!」(俄然、目を輝かせて、いつもとは違う反応)
妻「いいわけ、ないでしょ! ああもう、うるさいわい!!」
我々夫婦の日常会話の次元が低さが、偲ばれるというものだ。
夕食後は、ひとり静かに菓子作りのひととき。いい香りがキッチンに漂う。菓子を焼く(オーヴンを使う)のは、必ず前夜にしている。
朝は停電が多く、自家発電装置との切り替えが頻繁になり、電力供給が不安定になるからだ。供給されていても、電流の強さが不安定なので、オーヴンの温度も一定しない。
尤も、夜だって、そのときによって電流の強弱が異なるので、オーヴンの温度目盛りを当てにはできないのだが。多少温度調整がいい加減でも大丈夫なものばかりを作ることになる。
シュー皮などは、多分、無理だ。
さて今回は、いつも好評のカスタードクリーム入りフルーツタルトに加え、パンナコッタ、それに夫が大好物のタルトタタンに挑戦だ。
パリのシャンゼリゼにある菓子の老舗、ラデュレでタルトタタンを食べて以来、彼の好物の一つなのだ。
ところで上のフルーツタルト。インドにもニュージーランドからゴールデンなキウイが入って来ていた。日本ではだいぶ前からあるようだが、インドで見かけることはなかった。
インドには、キウイだけでなく、ニュージーランド産のリンゴも普及している。
左上の写真。一見、「大学芋?」だが、これはリンゴを煮ている様子だ。このリンゴ、ロイヤル・ガラアップルもニュージーランドから。
同じくグラニースミスなど数種類のリンゴがニュージーランドから来ている。米国ワシントン州のリンゴもときどき見かける。あとは中国産のフジが一般的か。
右上写真は、味見用に焼いた小型タルトタタン。味見用なだけに、煮崩れたリンゴを使用。焼きたてをアルヴィンドに味見してもらったところ、「ラデュレよりもおいしい!」と、たいそう評判がよかった。
事実やら世間の評価はさておき、夫がそう思ってくれるのなら、それはもう、幸せなことである。
夫のこの、記憶の上書き体質、「近視眼的なコメント」が、家庭平和の秘訣かもしれん。これが転じて、大きな諍いに発展することもあるのだが、さておき。
インド北部でもリンゴが栽培されているが、普及する季節が限られているのに加え、流通の問題があり、バンガロールではあまり見られない。
甘酸っぱいリンゴで、焼き菓子には向いていると思うのだが、まだ料理に使ったことはない。義姉スジャータが、かつてインドのリンゴでアップルパイを焼いていたが、非常に美味だった。
タルト中央の黄色いフルーツは、マンゴーである。マンゴーの女王、アルフォンソのシーズンは終わったが、まだ他のさまざまな種類のマンゴーが出回っているのだ。少なくとも今月一杯は、マンゴーの季節が続く模様。
左上写真は、大型タルトタタン。初めて焼いた割には、見た目はともかく、おいしくできた。パリでは酸味のあるサワークリームが添えられていたので、わたしは生クリームを泡立てる。
インドの新鮮な生クリームは、そのときどきによるのだが、酸味が強いこともあるので、ちょうどいいのだ。
パンナコッタも濃厚においしくできあがった。見た目は白いババロアのようで、写真の撮り甲斐がなかったので、撮り忘れた。
さて、サリー着付け教室をやるだけあり、もちろんサリー着用だ。これは、以前工芸品フェアで、職人から直接購入したヴェナレスのバラナシ・シルク。
この色合いが、上品で麗しく、自分に似合う色とは思っていなかったのだが、合わせてみると似合う気がして、購入したもの。
正確には、1日目は「似合わんな」と思い、買わずに帰宅したのだが、撮影してきた写真を見て「やっぱり欲しい!」と思い、翌日、改めて買いに行ったのだった。
かつては暖色系を好んで選んでいたが、このごろは、年齢のせいか、寒色系も悪くないと思うようになってきた。
■ネイチャー・バザールでインド各地の工芸品を。(←Click!)
サリーの世界とは、インドのテキスタイルの世界とは、本当に、広く、奥深い。
いつもの如く、資料を用意し、自分が持っているサリーを参考資料としながら、それぞれの土地、それぞれの職人の手なるサリーを、一枚ずつ、見てもらう。
気がつけば5年のうちにも、各地のサリーが少しずつ、買い溜められていて、15を超える技法のサリーを、資料として見ていただけた。
インドに住み始めたのを機にサリーを買おう、と思っても、選択肢が多すぎて、なにがなにやらわからなくなるのが普通である。
加えて、小柄で細い人が多い日本人の体型に合うもの、日本人の肌色に合うものは、インドの主流とは異なる。
そのような事実を鑑み、各地サリーの由来などを説明しながら、数百年、ものによっては2000年を超える歴史を持つ伝統工芸の奥深さの断片を感じ取ってもらう。
そして、実際に、さまざまな表情を持つ絹布触れてもらう。
布だけを眺めるのと、実際に人の身体にまとったときとでは、布の持つ印象が大きく変わるのもサリーの魅力。
丹念に織り上げられた、刺繍が施された、あるいは絞りをされた、染め上げられた、ビーズを縫い付けられた、個性あふれる布々。
人にまとわれることによって、命を吹き込まれたかのように、生き生きとした表情を見せてくれるのだ。
左上は、髪を振り乱しながらサリーを広げて説明している様子。右上は、着付け教室の図。さすがに着替え中の写真は載せられないので、着用後の、小さく、雰囲気写真を。
2人1組になって、互いにサポートしつつ、交替で着用する。わたしは、自分がサリーを脱ぎ着しながら、サリーの着用法のポイントなどを説明する。
しゃべり続けて、結構に、体力消耗。今回は夏休み中ということで、参加者が少なめの20名だったが、20名でもう、いっぱいいっぱいだと思った。
夏休み明けの9月開催を要望なさっている方が多いのだが、そのときに、20名を超えるようであれば、2回にわけて行いたいと思う。
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実際には、ビューティーサロンで着付けをしてもらうなど、自分で着られなくてもなんとでもなるものだが、ともあれ、講座の目的は、自分の好みを見いだし、身に纏う楽しさを味わってもらうこと。
想像以上に、みなさんがそれぞれに、自分に似合うサリーを選んで着ていらっしゃるのが印象的だった。同時に、サリーはやはり、日本人女性に似合う衣裳だということを痛感した。
巨大なインド女性も、小柄でスリムな日本人女性も、同じ5メートルの長い布を巻き付けるということで、プリーツが増えすぎて、重い印象になることもあるのだが、素材を選べば、軽やかに着こなせる。
重いものでも、いっそ80〜90%縮小(裁断)して、小さめサリーをあつらえるのもいいのではないかと思った。
サリーの着用法、着こなしのポイントなどは、後日ホームページにも転載したいと思っている。
ところで肝心の慈善活動。寄付金は6300ルピーが集められ、その他、寄付の品々もたくさん集められた。
寄付先については、改めて検討し、告知したいと考えている。集められた寄付金と寄付の品は、わたしの方で責任をもってお預かりしておきたいと思う。