現代の製紙は、環境破壊の大いなる一因。紙はプラスチックに等しく有害である。
*A4サイズの紙1枚を作るのに平均4〜5リットルの水を使う。
*白い紙を作るに際し、80〜100種の薬剤を使用する。
*古紙は捨てるとメタンガスなどの温室効果ガス(グリーンハウス・ガス)を発生させる。
*現在、紙の93%は木材から作られている。
*だからこそ、地球環境に負担をかけない、サステナブルな紙づくりを、人類は一刻も早く主流にすべきである。無駄な紙の使用を減らし、Bluecat Paperのような手法での紙づくりを。これは大企業、いや政府レベルで実現されるべき課題であるとさえ思える。
先日は、ミューズ・クリエイションのメンバーとともに、手漉き紙の工場、Bluecat paperを再訪した。2カ月前、ここを訪れたときの、衝撃的な体験はブログにも記した通りだ。
故郷のクールグで、リゾートホテルを経営しているカヴヤが、ホテル運営に際して「紙製品」を制作するに際し、現代の製紙産業が、いかに「環境破壊」の原因となっているかを痛感。その事実は、幼いころから森に親しみ、木々を愛してきた彼女にとって、途轍もなく重かった。
カヴヤは、現在の製紙産業が、いかに環境を破壊する要因になっているかを知り、「木以外」の廃棄物や植物から、紙を作るべく工場を立ち上げた。
カヴヤ曰く、68%のセルロース(繊維素)を含む素材であれば、何からでも紙を作ることができるという。
バナナの茎、コーヒーの殻、大麻(ヘンプ)、亜麻(フラックス)、桑(マルベリー)の茎、周囲にあるテキスタイル工場から出る綿の端切れ……。
小さな工場で、素人だった彼女が孤軍奮闘、機械を準備し、稼働させている。もちろん、作業には手間がかかるから、商品単価は安くない。しかし、その背景を知れば、紙を大切に、愛おしみつつ使いたくもなる。
政府や、大企業や、投資家が、彼女のアイデアを吟味し、廃棄物から紙を作るシステムを普及させるべきと、強く思う。
彼女のブランドには、ミューズ・チャリティバザールにも出店してもらったが、そんなささやかなことではない、社会的影響力の強い機関の支援を受けるべきビジネスだと、強く思う。
産業革命が起こった時には、すでに製紙の主流が、かつての植物ではなく、「樹木」を主流とするのもに移行していたから、木材パルプを使っての製紙の機械化が進んだのではないかとも察する。
今回の訪問は、ミューズ・クリエイションの「チーム・フレックス」メンバーとしても活動してくれている養蚕ボーイズが企画してくれた。バンガロール郊外の養蚕農家支援のため派遣されたJICAの青年海外協力隊隊員2名だ。
日本の政府開発援助の一環として、インドへ国際協力すべく派遣されている彼ら。ミューズ・クリエイションとしても、また個人的にも、たとえ微力でも、何らかのサポートをしたいと考えている。
前回の訪問時、手漉き紙の素材のひとつに桑(マルベリー)があると知り、蚕に食べさせたあとの桑の木がたくさん余っているに違いないと思った。養蚕農家との協調が可能ではないかと思ったことから、養蚕ボーイズにカヴヤとコンタクトをとり、訪問することを勧めていたのだった。
せっかくならば、ミューズ・クリエイションの他のメンバーにも見てほしいと思い、訪問を企画してもらった次第。
結論からいえば、百聞は一見にしかず。わたしがいくらブログにレポートを残しても、そしてそれをたとえ読んでいても、なかなか実感できなかったことが、訪問で開眼した様子が、参加者の感想を見て、手に取るようにわかった。
以下、参加者からの感想を転載しているので、ぜひとも目を通していただきたい。
今回のBluecat Paper訪問は、昨今特に話題の環境問題を紙という媒体を通して真剣に考える、とても良い機会になったと感じています。私たちが普段当たり前のように使っている紙がいかに環境に悪いか、どれだけ私たちが環境問題に対して無知であるかを痛感させられました。例えば紙1枚を作るのにも、たくさんの化学薬品と大量の水(なんと4L!)が使われているとお聞きし、活用できる期間を考えるとプラスチック製品と同程度環境に悪いとも言える、という話はとても印象的でした。それと同時に、近年の「紙ストロー導入」の流れは「環境に良い」ものである、と安易に考えていた自分が恥ずかしいです。
そしてこちらのBluecat Paperでは、普通ならゴミとなってしまう布製品の切れ端や植物の茎等、様々な材料から紙を作っているとのことで、工場内製紙工程の見学も実施させていただくことが出来ました。見学の際に一番感じたことは、Bluecat Paperをはじめたカヴヤさんの、環境問題を解決したいという強い熱意です。上述のように紙づくりには多くの化学薬品と水が使用されますが、カヴヤさんはこの点にも徹底して環境ファーストでこだわり、水は何度もリサイクルして利用、染料も一切使用しない徹底さ。こういった取り組みやそれを形作る強い熱意は生で訪問してこそ感じることができるため、今回の訪問を通して本当に貴重な経験が出来たことを嬉しく思います。
【感想02】
先日は貴重な機会を紹介・企画してくださり本当にありがとうございました。白い紙を木から作るために、少なくても80以上のChemicalや有害物質、4lもの水が使われていることに衝撃を受けました。また、Sustainableの意味が、「地球環境に負担をかけない」ということだと私もはっきりと理解できておらず、これまでの日本の教え子達に申し訳ない気持ちにもなりました。
代表の方の熱意と努力が伝わってきて、このアイデア、事業が発展していってほしいと心から思いました。引き続き連携を取りながら、桑の葉や茎を使用した交流についても検討していきたいと思います。
【感想03】
手漉き紙を作られていると知り、興味をそそられ参加したBluecat Paperへの訪問でしたが、それ以上に環境や紙についての現状を全くといって分かっていない自分の無知を痛いほど知る、紙に対する概念がすっかり変わったという日になりました。全く何も知らずとも使える紙...でも知れば1枚の紙を手にする事すら怖くなりました。実際、今日フレッシュライムソーダを頼み、付いてきた紙ストローを使うことができませんでした。
多くの人たちが環境破壊はしたくない、もうすべきでないと考えているのに、知らない間に環境のバランスを崩しているという現実。無知だという事が1番罪深いのかも知れません。
端切れやバナナの皮、亜麻、コーヒー豆外殻など、68%以上セルロースであれば、ほぼ紙を作ることができるとのこと。日本でも服飾の大量廃棄は問題で、きっと世界中なにかしらの廃棄問題はあって、それらがうまく組み合わさり世界規模の紙ビジネスになっていって欲しいと切に願います。
自分としては、紙や環境について、今まで知らなかったことを調べてみたいと思いますし、訪問時に知ったことを含めて周りの人に少しでも伝える努力は怠りたくないと考えています。
【感想04】
冒頭の概要説明で、「プラスチック=環境への負荷が高い、紙=環境に優しい」ではなく、「紙も生産の過程で大量の水や薬剤を使用していること」を知り、”Sustainable”の定義について見直すことができました。
布の切れ端、コーヒー豆の皮、不要な枝など様々な繊維から紙を作る工程は、まだまだ改善の余地があるように感じましたが、インド人男性が紙漉きをする姿や、紙を洗濯バサミで頭上に干して乾燥させている様子には、どこか心があたたまる思いでした。工場全体が穏やかな空間で、カヴヤさんのお人柄によるものかな、とも感じました。
出来上がった製品については、厚手の紙製品のみの取り扱いかと思いきや、かなり薄く、印刷して使えるような紙もありました。加えて、量産する設備が整えば、木由来の紙よりも低コストとのこと。カヴヤさんの思いとSustainable なTreefreeの紙が世の中に広く浸透しますように、強く思いました。
見学後にみほさんとお話した中で、「Tree freeの紙製品を選択することがどんな価値を持つのかが一目でわかるようなステッカー」を作るアイデアが出ました。意味がわかると選び方が変わります。また、個人へのアプローチに限らず、Treefreeの紙を選択することが企業の付加価値として認知されるような仕組みが考えられるといいなと思いました。
小さな一歩として、帰宅後に家族に見学の様子を話して聞かせました。紙を無駄にしないことや購入するものの背景を考えてみることなどを話し合いました。娘の学校では、年に何度か社会科見学で大小様々な企業に見学に行っています。Bluecatpaperでは、大人数では難しいかもしれませんが、ぜひとも子供達にもその取り組みを知ってもらいたい場所だと思いました。ありがとうございました。
【感想05】
今回Bluecat Paperを訪問して、今まで考えたことがなかった紙について考える機会になりました。私にとって紙は木から作られるものということは当たり前のことで、それを悪いと考えたことがありませんでした。しかしそれは森林伐採に繋がり、自然環境に負荷をかけています。また製紙時には大量の水が使われます。その水は紙の原料を白くするために使われる化学薬剤と混ざり、大量の汚染水が排出されます。Bluecat Paperでは、木の代わりに使われない布製品や、植物の必要とされない茎や皮の部分を紙の原料とし、水もリサイクルして使用していることに驚きました。
プラスティック製品が環境に悪いと言われていますが、Bluecat Paperをはじめたカヴヤさんが「プラスティック製品と同じくらい紙製品も環境に負荷をかけている」とおっしゃた言葉が印象的でした。今まで紙を無駄遣いしてきたことを反省しました。環境に負荷をかけない製紙工程によって作られた紙は、これから世界的にもどんどん広まって欲しいものです。どの紙製品も製紙時に薬剤を使っていないため真っ白ではなく、原料となった布や植物の色をしています。それらは一つ一つ違っていて、とても温かみのある製品に見えます。紙が作られるまでの工程を実際に見ることができたのもとてもよかったです。
(前回の訪問記録はこちら↓)