●このごろの話題。ナノ、選挙、クリケットなど
日本ではWBCというベースボールの話題で賑わっている(いた)ようだが、ここインドではもちろん、報道されるはずもなく、誰も知らない。
インドにおいてベースボールはマイナーなスポーツ。日本人がクリケットをよく知らないのと同じように、インド人もベースボールをよく知らないのだ。
ここ数日、インドの新聞を賑わせているのは、まず超低価格車ナノ発売に関するニュース。そもそもは昨年秋発売開始の予定だったが、工場移転の騒ぎなどがあり、遅れていたことは以前も記した(←文字をクリック)。
しかし、半年以内の遅れであれば、遅れたうちに入らないような気がするインドのスタンダード。
その一方で、国民に複雑な気分を与えているのが、昨年より始まったクリケットの国内リーグ(IPL)のニュース。先だって、パキスタンでスリランカ選手が襲撃されたこともあり、クリケットの試合がテロリストの標的になる可能性が高まっているのだ。
そんな中、選手や大勢の関係者、観客を動員する「国民的スポーツ」の試合を、国内で行うのは警備の問題上、無理だと判断されたようである。
で、開催地として候補に挙がっているのは南アフリカ。
たとえていえば、プロ野球の日本シリーズと、日本プロサッカーリーグと、大相撲九州場所を全部まとめてウズベキスタンでやらなければならない、というのと同じくらいのインパクトである。
相当に奇妙な話だが、しかし苦肉の策なのだとも思う。クリケットは、何度も書くようだが、インドで猛烈に人気のある唯一のスポーツである。
貧富の差、階級差、老若男女の差を超越して、国民の大半が夢中になるスポーツ。その国内リーグを海外でやらねばならない事態に陥っているのは、実は心底憂うべきことである。
インドでは総選挙を間近に控えており、その結果がIPL開催問題にも影響してくる。何かと落ち着かない趨勢である。
●新聞、変更。それにしても、安い新聞。
これまで行きがかり上、大衆紙であるTHE TIMES OF INDIAほか、同じ系列のECONOMIC TIMES、そしてウォールストリートジャーナル系列のmintを定期購読してきたが、THE TIMES OF INDIAに我慢ならなくなっていた。
我慢ならん理由についてはいろいろあるが、長くなるので端折る。ともかく早く別の新聞に変えようと思いつつ、時間が流れ、そしてようやく最近になって実現した。
THE TIMES OF INDIA とECONOMIC TIMESのかわりに、DNAとHINDUSTAN TIMESに変えたのだ。mint はこれまで通り、継続して定期購読である。
これら二紙の方が、THE TIMES OF INDIAよりも遥かによい。と、わたしは思う。ちなみにスジャータ&ラグヴァンはTHE HINDUが好みだが、わたしたちには「硬派過ぎ」であり「退屈」である。
などと偉そうに語ってはいるが、新聞は毎日、ざっとめくって、目にとまった記事だけをさっと読む程度。「ざっと目を通す」とき、英語力が不確かなわたしにとって、見出しや記事がわかりやすいか否かがとても重要なのだ。
そういう意味で、新しい二紙はかなりいい。見出しや記事がわかりやすく、文章と写真のレイアウトもよい。エンターテインメント情報などの特集ページもインド色が強いにも関わらず、こてこてのやぼったさがない。
ローカル面や週末のおまけ冊子なども充実している。そして変な広告が少ない。そう、これはかなりポイントが高い。
THE TIMES OF INDIAや、それにくっついてくるタブロイド紙MUMBAI MIRRORは、リアルな画像を伴う害虫駆除とか皮膚科の広告など、朝っぱらから見るには堪え難い広告が多かったのだ。
従っては、ここ数日、朝のひとときが、少し楽しい。これでもっと英文を読み、英語力がつけばよいのだが、それはどうだかな。
ところで、インドの新聞は安い。国内経済格差が激しいから、安くても妥当だと思うがしかし、安い。朝刊だけとはいえ、1カ月の購読料が一紙300円程度である。
以前、西日本新聞の『激変するインド』にも書いたが、トイレットペーパー4ロールと同じくらいの値段なのである。
インドでは、トイレットペーパーは限られた富裕層のみが使用し、それ以外の人々は「水で洗浄」することから、トイレットペーパーは贅沢品なのだ。ついでにティッシュペーパーも。
うちには一応、ティッシュペーパーはあるが、ほとんど使わない。使う必要がないのである。ティッシュが必要な事態においては、たいていタオルや雑巾で代用する。
ちなみに、鼻水は出ない。万一出たら、洗面所で鼻をかめばいいのである。ワイルドOKである。
ところで、トイレットペーパーも使ってはいるが、使わなくても……
嗚呼、わたしはいったい、なにを書いているのだろう。
●AWCの役員を決める会合@ハイアット・リージェンシー
ムンバイ移住当初、いくつかのグループに入会した。各クラブの詳細はこちら(←文字をクリック)。
今日はそのうちの一つ、アメリカ人の女性のための(といっても他国の人たちもウェルカムな)クラブであるAWCの役員選出の会合が行われた。
場所は空港近くのハイアット・リージェンシー。わが家からは1時間半もかかるが、久しぶりに北に向かい、帰りには郊外のショッピングモールで買い物でもしようと参加した。
メンバーは米国人女性を中心に、欧州、そしてNRI(非インド在住インド人:印僑)の人たちが目立つ。
今日は40名ほどが出席していた。
この1年間、理事を務めていた女性から、さまざまな報告がなされる。
バンガロールのOWC同様、慈善団体への寄付やヴォランティアに主眼をおいたクラブでもあるため、会費やイヴェントなどで集まったお金がいかに使用されたかの報告も行われる。
ムンバイの、このスラムの多さと街の混沌を見るにつけ、「焼け石に水」のようにも思えるが、しかし確実に、誰かのもとに、無駄なくお金が届いているということが、感じられる。
各役員からの報告のあと、すでに選出されている新役員が登場し、信任の可決をとる。みな、つつがなく可決され、無事に引き継ぎが終わった。
それにしても、こうして会を運営したり、サポートしたりする人たちの行動力には敬服する。彼らの多くは人前で話すことに慣れているし、積極的に能動的に、社会に関わろうとしている。
わずか2、3年の滞在でも、自分ができることを積極的に模索し、他の人々にも影響力を与えている。さまざまな面で、感心させられる。
さて、会合の後は、ダイニングでランチである。ハイアット・リージェンシーからのコンプリメント、つまり「ご好意」だとのこと。
ランチタイムだというのに、赤白ワインがサーヴされ、インド料理とコンチネンタルのブッフェ、そしてデザートまでもが供された。
初めての人たちと会話を交わし、今日もまた心に残る出会いがいくつか。
中でも一番印象的だったのは、あるインド人女性。
彼女とは、実は会合が始まる前、コーヒーを飲んでいるときに話をしたのだった。
彼女のご主人がムンバイ大学の化学の教授だという。わたしも会話をつなぐ意味で、
「わたしの義兄も教授で、IISにいるんですよ」と答えた。
「失礼ですが、その方のラストネームは?」と彼女。
「ヴァラダラジャン、ですけど……」
「ヴァラダラジャン? って、ラグヴァンのこと?」
「そうですけど。ご存知なんですか?」
「知っているもなにも、彼のお父さんのヴァラダラジャン博士とわたしの父は、20年来の友人なんです。父は他界したけれど、今でも親交があって」
「え〜そうなんですか?!」
「実はヴァラダラじゃン博士、一昨日、うちに遊びに来たんですよ! 奥さんのラティカも、弟のマドヴァンも、よく知ってますよ」
世間は狭いものである。
●久々に、郊外の大型ショッピグモール&スーパーマーケットへ
ランチの時にテーブルをシェアした人たち。みなそれぞれに、「インド生活を闘っているのだな」という話をあれこれと聞いて、思いは巡る。
さて、楽しいひとときを過ごした後、ほろよい加減でホテルを出る。ドライヴァーに目的地、マラド地区のINORBITモールを告げる。ここから更に30分から45分ほど北上のドライヴだ。
時間がかかるな〜、と思っているうちにも、いつしか、うとうとと。
「マダム! マダム!」
とドライヴァーに起こされて目を開けば、そこはすでにショッピングモール。ワープしたかと思った。
1時間ほどショッピングモールをうろうろとしたが、目的のものを得られず。ちなみにINORBIT内のHOME STOPというインテリア関連ショップの中に、かなり広いスペースのインターナショナル・スーパーマーケットができていた。
左下の写真がそれである。海外から輸入された高級食材があれこれと並んでいるほか、ジュースバーのようなものもある。去年、ムンバイ移住当初の家財道具調達の際に訪れて以来1年ぶり。随所に変化が見られるのだった。
いろいろあるが、しかしさほど欲しいと思うものはなく、結局は何も買わずに出て来た。
その後、隣接する大型スーパーマーケット、HYPERCITYへ。右上の写真がそれである。3年前、インド移住後まもないころの出張で、初めてここを訪れた時には感動したものだ。
インドに、こんな立派なスーパーマーケットがあるなんて、と。ここにもやはり、国産ばかりでなく輸入品もたくさんあり、選択肢が広い。
しかし実際、日々の食生活を鑑みるに、あれこれファンシーなものを取り揃えなくてもよく、結局は近所のスーパーマーケットや市場で購入するものと同じようなものだけを買ったのだった。
ちなみにここには、「ノンヴェジタリアンコーナー」があり、肉や魚介類が、インドにしてはかなり品数豊富に揃っていた。とはいえ、鮮度の高さにおいては、いつも配達で頼んでいるPESCAの方が勝る。肉はマトン類が新鮮そうだったので数パック、購入した。
インドの人々の消費生活の変化を知るためにも、時にはこうして郊外まで足を延ばして、最新の傾向を入手しておくのは仕事をする上でも意義深い。
とでも思わなければ、いったい何のためにこんなところまで北上したのだろう、というくらい、大したものを購入せずに、帰路についたのだった。