ムンバイの、4月にして40度を超えたあの暑さは、52年ぶりだかなんだか、だったらしい。そんな事実もすでに別世界。肌寒さが心地の良いチューリヒに到着した。
しかし到着は早朝6時過ぎ。眠い。ともかくはチューリヒの繁華街にある小さなホテルへ赴く。幸い早朝からチェックインさせてくれたので、さっそくシャワーを浴び、仮眠を取って、昼前から街へ繰り出しのだった。
あれこれ綴りたいが、もう歩き疲れて、酔っぱらって、眠さ爆発。ともあれ、写真とメモ書きだけでも更新して、文章はあとから書くとしたい。
現在4月6日。ジュネーヴに到着した。ようやくコンピュータに向かう時間ができたので、ざっと記録しておこうと思う。
チューリヒを訪れるのは2003年以来、6年ぶりのことだ。あのときは、カンヌで開かれたカンファレンスに出席した夫に同行し、南フランスを旅した後、スイスまで足を延ばしたのだった。
アルヴィンドは大学時代の夏休み、チューリヒの企業で仕事(インターンシップ)をしていたことがあり、3カ月ほど暮らしていた。そのせいか、この街に対して思い入れが深いようだ。
ちなみに上の大きな写真。彼がチューリヒ滞在時に利用していた散髪屋である。偶然通りかかって立ち寄った。激しくファンキーな内装のこの店。店主も客もビールを飲みながら散髪を「楽しんで」いる。
店主のフランキーは15年以上も前の顧客のことを覚えてはいなかったが、しかし「以前、あなたに何度かカットしてもらいました」という夫に、歓迎の笑顔である。
ビールを飲まないかと勧められたが、それは丁重に断り、お客さんに申し訳ないが、作業中断で記念撮影をしてもらったのだった。
滞在先は、オールドタウン、繁華街にある小さなホテル。上の写真は到着直後。つまりは早朝で人影はまばらだが、午後から夜にかけては往来が激しくなる。レストランやブティック、ナイトライフのスポットも点在し、とても賑やかなエリアだ。
ちなみにホテルの1階はチーズフォンデュ専門店。匂いのきついチーズが苦手なアルヴィンドは、チーズフォンデュが好きではなく、せっかくのスイス旅でフォンデュを食べられないのが残念。ディナータイムはロビー周辺までチーズの匂いが漂っていて、かなり強烈であった。
ホテルを出て界隈を散策しているときに見つけたフリーマーケット。ジュエリー、革製品、テキスタイルなど、なぜか「インドもの」ばかりが目につく。
スイス到着後、初のランチは、ソーセージのオブジェがダイナミックなデリカテッセンにて。店頭に並べられたサンドイッチの様子にひかれたのだ。
ホットドッグとミートローフのサンドイッチ、それからインゲンやトウモロコシ、キャベツのサラダを注文。ヴォリュームたっぷり! ミートローフが滑らかでフワフワとした食感で、予想以上においしかった。
川を渡り、対岸へ。中央駅に立ち寄りSPRUNGLIというお菓子屋さんへ。スイス在住経験のある友人に勧められていたマカロンを購入。小さなひと口サイズのマカロンがかわいらしい。とりあえず6つほど購入し、湖のほとりのベンチで2つずつ、食べた。残りは食後のデザートに。
インドでは、ゆっくりと街を歩ける環境がない。だからこそ、こうして旅先で街をそぞろ歩けるのは、ことのほか幸せ。おいしそうなチョコレートやペイストリーやお惣菜……。立ち止まるときりがなく。
ところで4月のスイスはまだ寒いと思っていたのだが、今日はとても天気がよく、途中でジャケットがいらなくなるほど。聞けばつい先日までは寒く、降雪も見られ、ここ数日が今年初めての春日なのだとか。いい時期に来たようである。
セント・ピーター教会。欧州最大の時計台だという。教会そのものはこぢんまりとしているが、時計の大きさは迫力がある。パイプオルガンの演奏を聞いてみたかった。
ほのかに水仙の香りが漂ってくる庭先のベンチで、しばしぼんやりと、過ごす。陽光が心地よい。
高級ブランドのブティックなどが立ち並ぶ大通りを歩き、時に小径に紛れ込み、ポーセリン・ミュージアムなどに立ち寄りつつ。
新旧の建築の、そのよさがうまく共存しているようすは、欧州のあちこちで見られる。つまりはチューリヒに限ったことではないけれど、しかし目の当たりして改めて、古きを損なうことなく新しきが息づくバランスに感嘆する。
古きもののデコラティヴと、新しいデザインのシンプルな機能美。チューリヒ空港の、全体像のさっぱりとして美しい様子が印象的だったが、その雰囲気と、旧市街の様子が違和感なく一つの街のものとして共存されていることが、見事。
フラウミュンスター。聖母教会。シャガールとジャコメッティによるステンドグラスが見られる。
ことにシャガールのそれは、印象的。カラフルなのに、聖母子なのに、やさしげな馬なのに、果てしなく無口。たとえば『オルジュヴァルの夜』。花嫁なのに、愛するひとに抱かれて、底なしの寂しさがほとばしっている。孤独の夜空。
ランチがたっぷりだったので、夕飯は軽くすませようと、タパスバー、スペインの居酒屋へ。おつまみ4種類(アーティチョークのマリネ、フライドポテト、タコのマリネ、ウサギ肉のグリル)と赤ワイン。煙立ちこめる店内で、他のゲストと相席で。
帰路、別のマカロンの店を発見してしまった。PECLARD。SPRUNGLIよりも高級感がある店。パリのラデュレを思い出す雰囲気の店だ。フルーティーでヴィヴィッドな色合いのマカロンらが魅惑的。