東京での移動は、まさに疲労困憊。東京時代から乗り物は苦手だったが、来るたびに、苦手度が増していく。ラッシュアワーはともかく、それ以外の時間帯でも人が多い。
人が前を向いて歩いていないので(数メートル先しか見ていない人が多いように思う)、ぶつかりそうになることが本当に多い。
携帯電話を片手に、あるいはヘッドフィンを耳にして、自分の世界そのままに、こちらへ向かって突進してくる人がいる。
こちらが危険を察知し、立ち止まっていてなお、目と鼻の先に到達するまで気づかない。軽くぶつかる人もいる。ぶつかっても、知らん顔だ。
わたしは東京に暮らしていた20代のころ、こんな状況に、自然と溶け込んでいたのだろうか。人とぶつかっても、平気だったのだろうか。思い出せない。
しかし周りを見渡せば、みな流れる川のように自然で、淀みない。ぶつかり合う人の姿は見えない。不思議だ。
ネガティヴなことを書き始めるときりがないのでよすが(結局半年前の、日本で感じたことも、書かないままだった)、東京で生活をするのには、本当に体力や、精神力がいる。
ところで今日のランチタイムは、20年ぶりに旧友と再会した。昨年の今頃、わたしのホームページを見つけた彼が、メールをくれていたのだった。
20年というもの、全く連絡を取り合っていなかったので、どのように変化しているのか興味深かったが、実際、雰囲気はさほど変わっていない。懐かしい話に、記憶が遡るばかりだ。
ただ、子どもが3人もいて、しかも長男は高校生、といった話を聞くと、時の流れを感じる。
ランチを終え、コーヒーを飲みながら、わたしがなにか、真剣な話をしているときだ。彼がくすくすと笑い始めた。
「何がおかしいの?」
と尋ねたら、
「ミホ、変わってないねぇ。真剣な話するとき、鼻の穴が膨らむとこ!」
そ、そうきたか……。
話をするとき、鼻の穴を膨らますな。難しいが、今後の人生の課題としたい。
午後は六本木ヒルズへ。ウィンドーショッピングをするも、店舗の明るさに目がくらみ、しかし書店で立ち読みなどをするも、たちまち疲労、カフェへ入る。
日本に戻ってくる時はいつもそうだが、英語では自動的に遮断される視覚や聴覚が、日本に到着して数日はフル回転し、すべての情報を吸収しようとしてしまう。
街の看板、あふれる音、人々の話し声……すべてが速やかに理解できる言語であるせいか、障壁がないままに吸い込んでしまい、それが多過ぎて処理できず、頭痛に見舞われる。
加えてモノの多さ。照明のまばゆさ。視覚や聴覚が過敏になる。
あちこちに目がいき、焦点が定まらない。加えて、電子音の、機械音の多さ!
インドにおける疲労とは異なる種類の疲労に見舞われる。
ともあれ、しばらく呆然とお茶を飲み、ケーキを味わい、リラックスを努める。しかし隣席のご婦人たちが、インド旅行の経験談を語っているのが耳に入って、聞くまいと思っても聞こえて来て、なかなか気持ちが空白になれない。
この街には、瞑想室が必要だ、とさえ思う。無、の空間というものが。
さて、今夜はまたしても六本木にて、東京フリーランス時代からの友人であるサカエさんと待ち合わせている。彼女とは、日本語、英語、韓国語、中国語による他言語情報誌『We're』を共に編集していた時期があった。
サカエさんとは2年半前ぶりの再会だ。待ち合わせ場所には、彼女と長女のリアちゃんが現れた。リアちゃんに会うのは『街の灯』の出版記念パーティー以来だから7年ぶり。
まだ小学校低学年だった彼女が14歳。インターナショナルスクールに通っていることもあり、すでにアイメイクなどしていて「大人」のムードになっており、その変貌ぶりには大いに驚く。
良質の食材を使った料理がとてもおいしい。
ところで左の写真は、サカエさんの亡姉である李良枝さん。
彼女は在日コリアンとして初めて芥川賞を受賞した女性。
わたしは彼女が他界した直後にサカエさんと出会ったので直接の面識はないのだが、小説は読んだ。
今年は彼女の十七回忌とのことで、こうして良枝さんの映像や踊りを収録したDVDを作ったのだという。
サカエさんの名前も、「カマーゴさか江」から、「カマーゴ 李 栄」にかわっていた。彼女の新しい名前は、彼女にとても似合っているように思えた。
食事をしていたら、仕事帰りのハズバンド、オーランドが店に立ち寄ってくれた。オーランドもサカエさんも本当に変わりなく元気。
ただ、息子のアキラ君が現れたときには、またまたびっくり。
2年半前は、わたしよりもずっと小さかったのに、わたしよりも大きくなっているのだ!
2年半前のブログの写真を確認して、その成長ぶりに驚く。
わたしが日本を離れる直前に誕生したアキラくん。
本当に、子どもは時の流れを示してくれる尺度のようなものだと、しみじみ思う。
サカエさんと一緒に仕事をしていた期間は短いが、しかしあまりにも濃厚な日々だった。
だからいつまでも忘れられない。いつか一緒に仕事をと言いつつなかなか実現しないが、必ず実現させたいと思う。
ところで、彼女の会社は「ザ・サードアイ・コーポレーション」という多言語の翻訳会社。
幅広いネットワークを持っていて、多岐に亘る翻訳作業を行っている。翻訳が必要な際には、ぜひ彼女の会社に相談していただければと思う。
■株式会社 ザ・サードアイ・コーポレーション(←文字をクリック)
■The Third Eye Corporation
Total Coordination of Translation, Rewriting, Editing, Design, DTP, Planning, and Research by Multilingual Staff
I went to Roppongi, and I had dinner with Sakae. The restaurant offers the dishes which were used very fresh and high quality vegetables. The taste was simple, but really tasty! While we were there, Orland (Sakae's husband) and Akira (their son) stopped by. It was nice to meet them. I'd like to work with Sakae sometime soon.