◉ HAPPY GANESH CHATURTHI!土曜日は、象の頭を持つ神様、ガネーシャの祝祭日。ガネーシャは、学問や商売を司る豊穣、知識の神様だ。甘いお菓子が大好きで、乗り物はネズミ。もろもろ摩訶不思議だが、彼が象の頭を持っている理由がその最たるもの。ガネーシャの父は、インドの最高神の一人、シヴァ神で、母はパールヴァティー妃だ。
ある時、パールヴァティーは入浴する際、ガネーシャに見張りを頼んだ。ところが、帰宅した父親シヴァが「怪しい者がいる!」と息子の首を刎ねた。注意力なさすぎ。「それ、息子!」と叫ぶ妻に慌てたシヴァは、首を探すも見つからない。やむなく、最初に通りかかった生き物、「象」の首を刎ねて、それを息子の身体に載せた……というのが大雑把な経緯だ。
土曜日は朝から、WhatsApp上を「HAPPY GANESH CHATURTHI!」のメッセージが飛び交う。そんな中、ハウスクリーニング・サーヴィスから届いたメッセージに目がとまった。
「マハーバーラタを執筆中、ガネーシャ神のペンが折れた。躊躇することなく、彼は牙を折って書き続けた。これは、知識と義務に対する彼の揺るぎない献身を象徴している。」
『マハーバーラタ』とは、『ラーマーヤナ』と並ぶインド二大神話のひとつ。著者とされるヴィヤーサは文字を書けなかったため、ブラフマー神がガネーシャをヴィヤーサのもとに遣わし、マハーバーラタを口述筆記させたという説があるという。わたしは、その背景を、このメッセージで初めて知った。
知識と義務に対する彼の揺るぎない献身……。この言葉に、心を打たれた。
その程度の差は著しいが、わたしもまた、書き続けている。もはや「ライター」という生業からは逸脱。情報溢れる昨今。誰に届いているのか。誰に読まれているのか。何のため? 誰のため? 自分のため……?
時代の流れと共に、言葉を巡る環境も変化する。途方に暮れることもある。ゆえに、ガネーシャの献身に敬意を覚えたのだと思う。
我が家には、大小いくつものガネーシャ像がある。折れた牙を持っているものはないだろうか……。それぞれを点検してみる。お菓子や花、笛を持っているものはあるが、牙はないな……と諦めかけたところ。我が家の玄関に鎮座している、ニームの木で作られた一番大きなガネーシャ象を見落としていた。
彼が右手に、折れた牙を持っているではないか! 小さくてわかりにくいが、確かに、牙を握っている。
🖋ペンを離すまい。
◉ガネーシャ祭の土曜日午後は、新居でSOCIAL MUSE。短期間ながらも、ミューズ・クリエイションの活動に、積極的に参加していたインターン大学生のお別れ会を兼ねての集い。午後3時からの開始だったので、おやつにと、お菓子を焼くことにした。パンデミック前は毎週のようにお菓子を作っていたが、このごろは頻度が激減しているので、コツを忘れかけている。
特にショートブレッドを焼くのは久しぶりで、以前は覚えていた分量もすっかり忘れていた。材料は小麦粉と砂糖、バター、そして上に軽く散らす岩塩だけというシンプルさなのに、これが本当においしいのだ。焼いている間は、家中がいい香りに包まれる。
バンガロールを去る学生が、わたしのスポンジケーキを気に入っていたので、抹茶クリーム&あずきのケーキを作ったのだが、これはたくさん卵を使っているのでヴェジタリアンのゲストは食べられない。ゆえに卵を使わないショートブレッドを焼いた次第。このごろは、市井でおいしいお菓子が入手できるようになったこともあり、菓子を作る熱意が失せていたが、もう少し頻度を上げよう。
◉いつものように、気がつけば日は暮れて、語ったり、ハウスツアーをしたり、月光ライブラリで過ごしたり、お酒を飲み始めたり、ピザのデリヴァリーを頼んだりして、夜は更けていく。
人の話を聞きつつも、圧倒的にわたしが語っている気がするが、それでも、話を聞こうとしてくれる人たちとの時間を大切にしたい。
これまで、無数の「縁」に恵まれて生きてきた。しかし、このごろは痛感するのだ。縁は、向こうから来るものではない。自分が育みたい、守りたいという縁は、能動的に、努力して、繋いでいくものだと。
世界は、「またいつか」「次の機会に」で途絶する無数の「無縁」にあふれている。そんな中、自分はどんな縁を大切にして、未来に繋いでいきたいのか。わたし自身、未だ試行錯誤の旅の途中。ともあれわたしは、これから益々、アナログを説く。
願わくば、平和で楽しい、有機的なつながりを、これからも。
🐘HAPPY GANESH CHATURTHI (2019/09/02)
🐘派手派手ガネーシャ・マンダルを見に、街を巡る/ムンバイ在住時 (2009/08/26)
● 簡単! ショートブレッドの作り方/小麦粉、バター、砂糖、塩少々で、風味豊かにサクッとおいしい!(個人のYoutube チャンネルにアップロードしている初期の作品)
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