書きたいことが山積だ。今日は中でもインパクトのあった「インドだもの」な話題をいくつか書き留めておきたい。
●電気注意報
インドはインフラストラクチャーが不備である。劣悪である。既に過去、幾度も記したが、大都市をはじめとする市井において、「停電」は日常茶飯事だ。
無論、「ある程度以上」のアパートメントや集合住宅、商業施設には「自家発電機」が備えられているため、基本的には数秒から数分の「空白時間」があるものの、恒常的に電力は供給されている。
しかしたまに、人為的なミスによる長時間停電に見舞われることはある。が、少々の停電くらいでたじろかない精神力は、人として、必要である。人としての真価を問われることがなにかと多い、インド生活である。
さて、我が家のアパートメントビルディングは、地下に電気室がある。引っ越しの際、我が家に流れる電気の量やらアンペアやらのことで、ここを何度も訪れ、電気技師の担当者とやりとりをしたことも、やはり過去に記した。
ところで昨日。アパートメントのご近所さんから、他の住人たちにむけて、電子メールが送られて来た。
インドの電圧は「220V」である。にもかかわらず、電気技師の調整ミスで、ご近所さんちの電圧が「440V」に切り替えられてしまっていたらしい。
なんてこったい。
許容量の、2倍の電流。非常にデインジャラスな状況だ。
どういう経緯でそうなったのか詳細は不明だが、常に使用している冷蔵庫などは「瞬間破壊」だったろう。メールによれば、冷蔵庫のみならず、さまざまな家電やコンピュータ類がやられたらしく、ついては皆へ警告すると同時に、電気技師を雇用しているところの開発会社に損害請求をするとの旨、記してあった。
インドには、不安定電力供給に対応しての、電流バックアップ装置(UPS)や、電流安定供給装置などが販売されている。我が家もコンピュータやプリンタには電流バックアップ装置を使用している。冷蔵庫には電流安定供給装置が勧められているが、それが先日壊れてしまったので(日常茶飯事)、今、冷蔵庫は「素」の状態だ。
インドの電流。それは寄せては返す波のごとく、と理解していた。が、たまに津波と化することも本日、学んだ。が、どう対応したらいいのやら。
ちなみに、そんないい加減な電力供給に甘んじている電気会社だが、電気代は高く、支払い期限に厳しい。旅行などに出かけて数日でも支払いを遅れると、平気でぶちんと電気を断つ。サーヴィスは悪いくせに、なんなんだ、その反応の早さは。と、呆れるばかりだ。
そういえば、AirTel(電話会社)でも、同じような目に遭った。
しかし、苦情のメールを送って以降、問題はない。すでに「要注意人物リスト」にマークされているのかもしれん。それならそれで、その方がいい。
何かとスリリングな日々である。
●「スピードポスト」の定義とは。
夫が、先日デリーへ赴いた際、家族が行きつけのテーラーへ行った。目的は、今持っているブレザーと同じものを作ってもらうためである。
コンサヴァティヴなデザインを好む夫は、しかし気に入ったデザインとサイズのジャケットを見つけるのが難しい。170センチ程度と、身長があまり高くない(低い)上に、少々(かなり)おでぶ。米国ではラルフローレンやBrooks Brothersで、オーソドックスなデザインのものを購入していた。
ちょっと「若者向けブランド」のモダンな、たとえばウエストラインが細かったり、3つボタンだったりすると、まったく似合わない。
数カ月前の米国旅行の際にも何度か店を巡ったが、なかなか気に入ったものが見つからなかったことから、テイラーへ赴いた次第。布地はイタリア製の上質のものを選んだらしいが、縫製費を含んでもUS$150程度。米国で同じ質のものを買おうと思えば、軽くUS$500は超えるから、格安である。
そのスーツが、ようやく今日、届いた。ボタンが今ひとつ気に入らないものの、仕上がりは、抜群。オリジナルに勝るとも劣らない。布地は良質のサマーウールで軽く滑らか。むしろオリジナルよりもいい感じだ。ボタンは自分で探してつけかえればいい。
同時に仕立てておいたというワイシャツも、しっかりと仕上がっていた。
我が母も、近所のテーラーでパンツを仕立ててもらっている最中だ。わたしもあれこれと作ってもらおうと思っているうちに、歳月が流れている。
今後、インド生活において、テイラーを多いに活用したいものである。
……。いや、テイラー礼賛な話題を書きたかった訳じゃなかったんだった。
デリーから送られて来た、夫のジャケット。実は、先週末にも届いていて然るべき状況だった。テイラー曰く、先週頭に「スピードポスト」で送付したとのこと。スピードポストとは、いわば「速達」のようなものである。
が、気がつけば、届いていない。夫がテイラーからトラッキングナンバーを聞き出し、インターネットで配送状況を確認したところ、23日、つまり5日前にはすでに近所の郵便局に届いているとの記録が残っている。
ではなぜ、届かないのか。明日にでも郵便局に赴かねばと、思っていた矢先の今朝、サリー姿の、弱々しい感じの女性が、配達に来たのだった。
「スピードポストなのに、どうしてこんなに遅れたのですか? もう5日前には郵便局に届いていたとの記録を見ましたよ」
すると彼女は、申し訳なさそうに言うのだった。
「マダム、すみませんでした。実は体調が悪くて、3日ほど仕事を休んでいたんです。みてください。この足。爪の先も痛めて、歩けなかったんですよ」
「いえ、あなたに無理をしろとはいっていません。他の配達員もいるわけでしょう? スピードポストは優先して配達されないんですか?」
「それが、同僚は、軽い荷物だけを配達して、重いものは、わたしに残していたんです」
最早、返す言葉はない。
悪いのは、彼女ではない。じゃあ、誰が悪いのか? 郵便局のシステムである。多分、局長のマネジメントである。とはいえ、郵便局まで赴いて文句を言う熱情は、今回のところは、ない。まあ、いい。もう、いい。ジャケットは無事に、届いたのだから。
スピードポストとは、運が良ければスピーディーですよ。ということか。
●車窓から、叫ぶ女。
車窓から叫ぶ女。それはわたしだ。昨今のバンガロール渋滞事情は、沸点を超えている状態である。それに加えて、ホーンがけたたましいお国柄。街を行けば、毎度うるさい。
そのうるささの中でも、群を抜いてうるさい車がたまにいる。なぜかいつも、Indiranagarの100Ft. Rd.からAirport Rd.に入る途中のあたりで、やったらめったら煽って来てはホーンを鳴らす車に遭遇する。今この車を追い抜いたところで、Airport Rd.に入った途端、大変な渋滞であるのはわかっているはずだ。無意味で危険な追い越しをしようとするから、腹が立つ。
1度目は、辛抱した。
が、2度目、耐えかねて窓を開け、
「うるさい! ホーンをやめなさい!」
と、叫んだ。ドライヴァーのラヴィが呆れようとも、叫ばずにはいられない。無論、わたしの声が、その後続のドライヴァーに届いたとは思えないが、髪の毛を風になびかせ(振り乱しながら)、険しい形相で叫ぶ東洋人に恐怖を抱いたのであろう、彼はホーンをならすのをやめて、しかしいつのまにか追い抜いていった。
そして先日もまた、同じ場所で、同じように煽りながらしつこくホーンを鳴らす車がつけてきた。うるさいにもほどがある。
ちなみに、我が家の車は、なにもちんたら走っている訳じゃない。世間の流れに応じた走りを展開しているのだ。そして追い抜いてもらうスペースなど、左右には、ないのだ。つまり、無意味なホーンなのだ。
またしても、窓を開けて、叫ぶ。
今回もまた、触らぬ神に祟りなしと判断したのか、大人しくなった。微力ながらもバンガロール交通事情に道徳を。などと、わたしは思っている訳ではない。ただ単に、うるさい輩に我慢がならんのだ。これが米国だったら、うっかりすると銃口を向けられたりするかもしれない。かなり危険である。
ところで、これらの車。なんでもBPO関連会社の送迎車らしい。時間通りに社員をピックアップし、会社に送り届けることが使命。ドライヴァーの焦る気持ちも、わからんでもない。
ロイターに勤務する親戚のアナパマが、やはり送迎車を利用しているが、猛スピードで市街を駆け抜けるのよといっていたのを思い出した。これから先この街は、いったいどれほどの混乱が待ち受けているのだろう。
ところで数日前。MGロードで渋滞の信号待ちをしているとき、隣に黒いHonda Accord(インドでは高級車)がとまった。スーツ姿で割腹のいい「偉そうな感じ」のおじさんが、白いカヴァーがかけられた後部座席で、白いハンケチーフを手に、マンゴーを食べている。
そのマンゴーを食べ終えたあと、彼はドアを開け、その拍子に我が家の車にガツンとドアをぶつけ、そうしてマンゴーの種を、路上に捨てやがるではないか!
許すまじ。
母が乗っている隣を乗り越えるようにして窓を開け、隣の車の窓を叩く。
「ちょっとあなた! どこにゴミを捨てているのですか! そもそも人んちの車にドアをぶつけるのも、無礼じゃありませんか!」
偉そうなおじさんは、憮然とした様子であった。我が剣幕に、呆れていたともいえる。と、再び我が家の車にガツンとドアをぶつけながらドアを開け、しかしわざわざマンゴーの種を拾ったのであった。
意外に、素直なお方。それはそれで、びっくりした。
インドはまだまだ、交通ルールも交通マナーも未熟な社会だ。ゴミはそのあたりに散らかりっぱなし。猛スピードで人口増加な現状で、ゴミを増やさずにいることのほうが、よほど難しいに違いないが、ともあれ、たとえ「今しばらく」とはいえ、ここはわが町。
なんとか、少しくらいは、まともであってほしいと、願わずにはいられないのである。
いったいどうなるんだろう。この街。
●新しいグローサリーストア、続々と。
左の写真は、Indiranagarに最近できた"fresh@"という店。
ハイダラバード拠点の乳製品大手"Heritage Food"のグローサリー・リテイル部門として誕生した。
現在ハイダラバードに12店舗、バンガロールに3店舗、展開しているが、バンガロールには今年中に計30店舗を開店する予定らしい。
グローサリーストアひとつをとっても、この国、この街の進化の速度についていけない。
たとえば自動車。年末年始に手がけた仕事の関係で、この2月時点では、「インド国内に走っている自動車の全車種を把握していたつもり」のわたしであったが、それからすでに、新車が続々と街に現れ、まったくついていけない。いっそすべての情報が忘却の彼方な状態だ。
清潔感のある明るい店内で、野菜や果物も比較的新鮮。
うれしいのは、トイレタリーなどの日用品もそろっているところ。
商品が埃にまみれていないところもうれしいコンビニエンスストア的なグローサリーストアである。
インドならではの小麦粉、米粉類や、各種豆類などは、オリジナルのFARMERS' PRIDEというプロダクツで、いかにも「農家直送のナチュラル感」を打ち出している。先日赴いたRelianceのグローサリーは、いまひとつだったが、こちらは好印象。今後も利用したい。
ちなみに上の大きな写真は、本日購入した商品の一部。なぜこんなにクローヴを購入したかといえば、ポマンダーを作るためである。オレンジにプスプスとクローヴをさして、「天然の虫除け」を作るのだ。どれほどの成果があるかは、後日報告したい。
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