初期イスラム教の神秘主義思想家たちによる教団としてのスーフィー。彼らにとって、音楽は神との合一を果たすための、修行のひとつだという。旋律に合わせてグルグルと旋回する「セマー」と呼ばれる舞踏もまた、修行だとのこと。
2018年2月、ラジャスターン州でスーフィーの音楽を体験するため、我々夫婦はジョードプルの城塞で4日間を過ごした。World Sacred Spirit Festivalと呼ばれる音楽祭だ。
パンデミックの影響を受けた今年を除いては、毎年2月、ジョードプルで開催されてきたこの音楽祭。かつては、スーフィー・フェスティヴァルと呼ばれていたが、昨今は、他の地域の伝統音楽を奏でる楽団も集うことから、宗教の垣根を超えた「神聖なる魂の祭」とされている。
城塞にて、夜明けから深夜まで、音楽、スーフィーの渦に耽溺した。インド南北の人々の、気性が異なる決定的な理由を、難攻不落の砦に見た。東西が交差する、乾いて豊かな砂漠の地。4日間の記録を、下記のブログに残している。音楽を届けられぬのが残念だが、ぜひご覧いただければと思う。
World Sacred Spirit Festival
➡︎https://www.worldsacredspiritfestival.org/
[Jodhpur 01] わずか2カ月ぶりに、ジョードプル再訪。
➡︎https://museindia.typepad.jp/2018/2018/02/jodhpur01.html
初日はジョードプルの街中でのショッピングの様子。テキスタイル、パシュミナなどの写真もたっぷり。見ているだけで、あの喧騒、土の匂いが蘇ってくる。
[Jodhpur 02] 夜明け前から深夜まで。ひたすらの、音楽。
➡︎https://museindia.typepad.jp/2018/2018/02/jodhpur02.html
日の出を眺めつつ揺蕩うカンクレスの音色。ラジャスタンの伝統音楽。モロッコから届くアンダルシアの叫び。スィクとムスリムとヒンドゥの弦楽器打楽器それらを貫く人間の声。国境宗教超えて地球を包む音楽。日本人の妻には異郷の旋律。パンジャブ出自の夫には根源の旋律。
[Jodhpur 03] 時空を超えて音楽は。森羅万象に響き渡り。
➡︎https://museindia.typepad.jp/2018/2018/02/jodhpur03.html
ブルーシティを見晴るかす砦にて。愛と情熱を叫ぶジョードプルの楽団。アルメニアのやさしき縦笛。アニミズムの島、イタリアはサルジニア島の旋律。遥か遠い時代に、遊牧民が、羊飼いが、西へ東へ運んだであろう楽器や音。口琴や笛やカスタネットの音色が溶け合う。言語を介さずとも、疎通できる音楽。躍動と呼吸。気を揺るがす振動。必然の即興。得もいわれぬ目くばせ。人々は血を沸き立たせて踊る。最後には、踊る。歓喜の踊り。狂喜の踊り。此の国の人々が、踊らずにはいられない理由が浮かび上がる夜。
[Jodhpur 04] マハラジャ主催のプライヴェートコンサートへ
➡︎https://museindia.typepad.jp/2018/2018/02/jodhpur04.html
最終日。ウメイド・バワン・パレスにて、マハラジャ主催のプライヴェートコンサートへ。ジョードプルで知り合ったインドのコンテンポラリーダンスの第一人者、アスタッド・デブー氏に招待されたのだ。あの、贅沢なひと時よ。アスタッド・デブー氏とは、その後もFacebookでやりとりを続けていたが、昨年、他界された。もう一度、お目にかかりたかった。🙏