この記録を記してから2カ月足らずの間に、インドでは第二波が猛威を奮っている。昨年の第一波とは比べものにならない速度で周囲にも感染が広がり、重篤な患者も多い現在。接種するか否かの判断は、早急に決めた方がいいだろう。打たないのであれば、極力、外部との接触を避けること、普段から健康的な食生活を送ること、また呼吸法などのエクササイズをすることが望まれる。
なお、我々夫婦は4月28日に2本目を接種。夫は1本目よりも副作用は軽く、倦怠感のみ。わたしは、接種した日の夜に微熱が出た後、2日ほど倦怠感と筋肉痛が残ったが、特に大きな問題はなかった。ただし、副作用には個人差があるため、接種後は仕事などをせずにすむよう、2、3日ゆっくりできるスケジュールを組んでおくことをお勧めする。
我が家に出入りするドライヴァー、メイドも1本目の接種をすませた。そのうえでも、彼らが屋内にいるときには、マスク着用を心がけている。去年の第一波とは比べものにならない感染力につき、万全を期す次第。
※基礎疾患がある、体調が悪い、狂犬病など他のワクチンを打ったばかりだ……という方は、ご自身でドクターに確認を。
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3月10日、わたしはCOVID-19のワクチンを接種した。写真のCOVISHIELDがそれ。英オックスフォード大学と英アストラゼネカが開発し、ワクチン生産世界大手の印セラム・インスティチュート・オブ・インディアが製造したものだ。
インドでは、COVID-19のワクチン接種が加速している。地球全域において、ワクチンを巡る情報が錯綜する中、思うところ多々あるが、あくまでも自分自身の体験に基づく事実を記しておきたい。
流動的な状況の中、この記録を残すことは正直、躊躇したが、素人目にも誤情報やいい加減な情報が流れていることに懸念を覚え、記す次第。坂田の個人的な経験に基づくリアルな情報ではあるが、決して人に勧めるわけでも、万人に当てはまるわけでもないということで、「参考までに」目を通していただければ幸いだ。
【はじめに】
◉アロパシーとは/西洋医学(対症医学)→薬で症状を抑える。
◉ホメオパシーとは/同質療法、同種療法→自然治癒力を高め、症状を防ぐ、緩和する。
【医療の素人ながらも、坂田個人のワクチンに対する考えを】
インド移住以来15年間、個人的には、西洋医学に依る薬を極力避けてきた。対症療法で「部分的に疾患の症状を取り除く」よりも、東洋医学やアーユルヴェーダの理念にある「病気になりにくい身体作り」が優先だと考えるからだ。普段から、バランスのとれた健康的な食生活、よく寝て、よく食べる、適度なエクササイズなどを心がけている。
ちょっとした体調不良は「おばあちゃんの知恵」的な飲食物や養生法で治す。とはいえ、アロパシーに頼らねばならなかったことも、当然ある。
*野良猫にひっかかれたとき 狂犬病のワクチンを複数回接種した。狂犬病は発症したら、致死率100%。多少の副作用は覚悟のうえ、つべこべ言わずに接種すべきだと考える。筋肉痛や疲労感、免疫力の低下が自覚されたが、しのいだ。
*インプラント治療の抜歯のあと 抗生剤を服用した。普段、抗生剤を服用することはほとんどないが、抜歯の場合は別だった。深刻な感染が起こる可能性があることからやむなく。抗生剤は善玉悪玉問わず、尽く菌を殺す。ゆえにわたしの場合、数日間、下痢とおなら(失礼)に悩まされた。しかし、インドでも販売されている「ヤクルト」を飲んだら、たちまち緩和された。ラクトバチルス カゼイ シロタ株(乳酸菌シロタ株)の威力を実感した。
というわけで、物事なんでも白黒つけられるものではなく、わたしはグレイゾーンで生きている。ゆえに、普段は「アーユルヴェーダ」的ヘルシーライフを送っているが、西洋医学へのリスペクトも当然、ある。
※追記/我々夫婦が10年以上お世話になっているアーユルヴェーダのドクター・マンモハンも、ワクチン接種をはじめ、マスクの着用、手の消毒、ソーシャルディスタンスなどの徹底を勧めている。
【なぜ「早速」COVID-19ワクチンを接種したのか】
正直にいえば、わたしは健康体だし、感染しても重症化する気がしないので、打つ必要はないと思っていた。
ちなみに、わたしがしばしば会うインド友人たちの、少なくとも3〜4割以上(家族を含む)が、すでに昨年後半、感染している、もしくは知らないうちに抗体ができていた……という状態。わたし自身、濃厚接触者が翌日発症と言うケースも経験しており(しかし抗体検査ではわたしは陰性)、大丈夫な気がしていたからだ。
インドでは、マスク着用や消毒などはかなり徹底しつつ、世界はすでに通常の動きを取り戻しつつある。COVID-19以前から、感染症パラダイスのこの国において、むしろ他の肝炎やら腸チフスやらデング熱やらが激減している様子が見受けられ、一体何に対して「リスク」を感じればいいのかわからないとも思っていた。
そんな中、今年に入って、医療従事者を筆頭に、60歳以上、45歳以上の疾患を抱える人などへの接種が始まった。5月くらいになれば少なくとも国内においては、かなり収束するのではないか(すでにマハラシュトラ州など一部を除いては、収束傾向)と思っていた。
ゆえに、収束を待つ気でいたのだが、夫の要望もあり、打つことになった。諸々、意見の食い違いがあったが、そこは夫婦二人三脚。なお早めの接種を決めたのは、ほかでもない、ワクチン研究の権威である義兄ラグヴァン本人と、彼の90歳になる父君(彼も高名な科学者)が自ら接種したからに他ならない。
【義兄ラグヴァン・ヴァラダラジャンについて】
我が夫の姉スジャータの夫ラグヴァンは生物物理学者で、IISc(インド理科大学院)の教授であると同時に、ウイルスのワクチン研究で著名な人物。これまでインフルエンザやSARS、そしてHIVのワクチンや薬剤の研究開発において、医学界に貢献。国内外で権威ある賞を受賞してきた。彼はCOVID-19ワクチン開発においても貢献している。
➡︎Raghavan Varadarajan/ Wikipedia
ちなみにわたしは、インド移住に際して、日本人駐在員やその家族が接種しているところの、A型、B型肝炎や腸チフス、狂犬病のワクチンなどの予防接種をあらかじめ「打っていない」。かつてその件、ラグヴァンに相談したところ、僕たちも打ってないし……ということで、特に勧められもしなかった。わたしも過去15年間、問題なく生きている。無闇にワクチン接種を推奨しているわけではないということを、念のため。
【現在、インドで接種できるCOVID-19のワクチン】
インドでは、現時点では、以下の2種類が使用を承認されている。国立病院や関連機関などでの無料接種及び私立病院での有料接種が同時進行で実施されている。なお、ワクチン接種情報を含む、COVID-19に関する情報は、すべてAarogya Setuというアプリケーションで管理されている。
①COVISHIELDコヴィシールド
英オックスフォード大学と英アストラゼネカが開発し、ワクチン生産世界大手の印セラム・インスティチュート・オブ・インディアが製造。ここしばらく、世界各国で副作用が騒がれている「アストラゼネカ」のワクチンだ。我々夫婦がラグヴァンに勧められて打ったのは、このワクチン。先日、ダライ・ラマ法王14世がお打ちになったのも、こちら。
Dalai Lama urges others to get vaccinated as he receives first shot
②COVAXINコヴァクシン
インド企業バーラト・バイオテックがインド政府系機関と共同開発した純国産。モディ首相及びモディ首相の母君が接種したのはこちらのワクチン。
【接種後の経緯と現在の状況】
3月10日午前8時過ぎ、市街西部のアポロ・ホスピタル(総合病院)へ。必要書類はすべて準備していたこともあり、さほど待つことなく速やかに接種。受付スタッフ曰く、このところ毎日300人前後の接種に対応しているという。
接種後、15〜30分ほど、待合室で待機することを勧められる。特に体調の変異がなかったので、帰路につく。ワクチンの接種後は、風邪のような症状、あるいは倦怠感があると予測されていたので、週末までは予定をいれず。数日は胃腸にやさしいものを食しようと夫とも話していたのだが……。
帰路、移住当初によく来ていた懐かしの「ローカル食堂」を発見! ついついギーたっぷりの油っこいドーサや揚げパンのプーリ、ワダなどを食べてしまう。これじゃ、普通でも胃がもたれる。バカなのか。と、自らに突っ込む。
帰宅後、昼寝。幸い、食事は普通に消化されていた模様。その日の夜は、注射を打たれた腕を中心に「筋肉痛のような痛み」が発生し、夜中に何度か目覚める。翌朝、普通通り起きて、普通以上に90分もClubhouseで語ったものの、昼過ぎになって、倦怠感。無理をせず。昼寝。昼ごはんを食べた後、しばらくして、集中力がないことに気づいて夕寝。
夕飯を終えたあたりで、なんとなく「ふつう」にさっぱりとした気分になった。
そして12日の今日。腕や肩に筋肉痛があるものの、ほぼ通常体制。ワクチン反対を唱える人の中には、数年後の副作用を懸念している人もいるようだが、それはまた別の議論になるので、ここでは言及しない。
過去1年間、インドにおけるCOVID-19関連の情報は、FacebookのグループページやYouTube動画などでも発信してきた。その中で言及してきた通り、インドの対応は、各方面で早い。インドの面白いところ、いや敬意を表すべきところは、先端のテクノロジーと西洋医学を押し進める一方で、この1年間、AYUSH省が、絶えず「古来の叡智を反映した健康管理や民間療法を推し進め、ソーシャルメディアで告知し続けていることだ。
【AAROGYA SETUで全てが完了。接種証明も即発行。2度目の接種案内なども】
↑アプリケーションの冒頭ページ。①わたし自身の周辺情報(感染者数など)②インド各州の感染者数の推移など数字情報 ③ワクチン接種情報などに即アクセスできる
↑カルナータカ州の感染者数の現状。
↑ワクチン接種しました証明。ちなみに次回の接種は28日以降とされているが、ラグヴァン曰く「約3カ月後」が望ましいとのこと。この件、あくまでもラグヴァンの見解につき。
【参考資料/COVISHIELDのメカニズムについて、ニューヨークタイムズの記事】
ワクチンを接種した後は、当たり前ながら、体内でせめぎ合いが起こる。アロパシーという性質上、何らかの反応が起こることは当然で、ただそれが「致命的」になっては、身も蓋もない。ただ、各国メディアの報道を目にするに、極めて少ない割合の問題を取り沙汰し、ヒステリックに反応しているケースが目に付く。背後に政治的な問題があるのは明らかで、何をどう判断すりゃいいのかわからないというのが事実だが、こればかりは、自分の嗅覚を研ぎ澄まして取捨選択するしかないだろう。
How the Oxford-AstraZeneca Vaccine Works
【AYUSH省が推進する「古来の叡智」に基づくライフスタイル】
インドには、アーユルヴェーダやヨガを研究、推奨する「AYUSH省」がある。2014年、現在のBJPモディ政権が樹立したあとに発足されたもので、インド中央政府厚生省に属する。近代西洋医学以外の医療政策を統括している部門だ。このサイトでは、同省が提案する健康に関する情報がしばしばアップデートされている。
AYUSHとは、以下の頭文字を表している。
AYUSH省
・Ayurveda(アーユルヴェーダ/インド5000年の伝承医学)
・Yoga & Naturopathy(ヨガ&ナチュロパシー)
・Unani(ユナニ医学/古代ギリシャの医学を起源とする印パ亜大陸イスラム文化圏の医学)
・Siddha(シッダ医学/南インド、タミル地方に伝わる極めて古い伝統医学で、起源は1万年以上前)
・Homeopathy(ホメオパシー/ドイツ起源の自然療法)
◉Ministry of AYUSH, Government of India/ FACEBOOK
なお、モディ首相は首相就任直後の2014年、国連の場で「国際ヨガの日」の発足を提案、実現に至らせた。提案時、モディ首相は以下のように述べたという。
「ヨガは、古代以来のインドの伝統が生んだ貴重な贈り物である。既に5000年の伝統がある。ヨガは身体と精神、思考と行動、抑制と実践の統合を実現させ、また、人と自然の調和、健康と福祉へのホーリスティックなアプローチを実現する。ヨガは単なるエクササイズではなく、自身の中に統合された感覚を見いだすものである。私たちのライフスタイルを変え、意識を高めることによって、幸福への助けとなる。国際ヨガの日(6月21日)の採択に向けて、ともに働こう。」
【以前シェアした情報を転載/インドにおけるワクチンに関する諸情報】
インドはそもそも、ワクチンを大量生産できる大規模な製造ラインを持っている。ワクチン研究の開発着手も極めて早い。添付の動画は、CNN-News18によって、COVISHIELDを製造するセラム・インスティチュート・オブ・インディアの工場内が取材された動画だ。
取材者の的確な質問に対し、CEOやドクターなど関係者らが、ワクチンの背景について、わかりやすく説明している。(CEOのアダールがハンサムすぎるのが気になる😸)
同社の歴史的背景も興味深い。1966年、プネに創業。当初は破傷風や毒ヘビの血清を作るところから始まった。当時、印中戦争、印パ戦争によって傷を負った兵士たちが多く、需要が高かったようだ。また、動物のワクチンも手がけていた模様。
ここバンガロールにあるインド科学大学院(IISc)の教授で、久しくHIVやSARSワクチン開発に携わってきたラグヴァンもまた、1年前、ロックダウンに入ったころから、COVID-19向けワクチンの研究を始めている。
セラム・インスティチュート・オブ・インディアと共同で、別の種類のワクチン開発にも携わっている旨、18:00のあたりで言及されている。
◉義兄ラグヴァン・ヴァラダラジャンについて(Wikipedia)
ラグヴァンが研究開発中のワクチンに関する記事も参考までに。
●Mynvax’s “warm COVID-19 vaccine” is ready for safety tests and human clinical trials
*添付の新聞記事は、昨年12月のもの。ワクチンに関する流言飛語に対し、ラグヴァンが回答している。
【参考資料】
Facebookに設置しているCOVID-19共生ポータルサイトにて、昨年シェアした記事を転載する。このとき、ラグヴァンは8月15日にワクチンが完成するのではないかとされていた時期、時期尚早と警鐘を鳴らしていた経緯がある。このことから考えても、今回が「拙速」のひとことでは片付けられないとの印象を受ける。
2020年7月6日 🧪ワクチンの完成、普及は気長に待つべし。
日々、なんだかんだと情報が舞い込む日常。この件も迷いましたが、参考までに投稿します。昨今のインドでは、各メディアでCOVID-19のワクチン完成に関して、前向きな報道がなされていますが、まだ時期尚早のようです。
我が夫の姉スジャータの夫ラグヴァンは生物物理学者で、IIS(インド理科大学院)の教授であると同時に、ウイルスのワクチン研究で著名な人物です。これまでインフルエンザやSARS、そしてHIVのワクチンや薬剤の研究開発において、医学界に貢献してきました。彼は今回のCOVID-19ワクチンについても、ロックダウンに入ったころから、ずっとかかりっきりで実験をしています。
昨日、親戚家族のWhatsAppに、スジャータからインド科学アカデミー(バンガロール拠点)のプレスリリースが流れてきましたので、転載します。ラグヴァンも同アカデミーの委員です。
この声明は、ワクチンの完成を急ぐあまり、楽観的な報道がなされていることへの警告です。同アカデミーは、ワクチン開発に対して真摯に向き合いつつも、拙速することに強い懸念を示しています。
すでにメディアにも部分的に掲載されていますが、以下がオリジナルです。ぜひ、ご一読ください。
The Indian Academy of sciences issued this press release today regarding ICMR's vaccine declaration-Indian Academy of Sciences
PRESS RELEASE
The Indian Academy of Sciences (IASc) has noted that a letter reportedly issued by the Indian Council of Medical Research (ICMR) is circulating in the news and other media. It is mentioned in this letter that ICMR and Bharat Biotech India Limited, a private pharmaceutical company, are jointly developing a vaccine against the novel coronavirus, SARS-CoV-2. The letter also states that “It is envisaged to launch the vaccine for public health use latest by 15th August 2020 after completion of all clinical trials.”
IASc welcomes the exciting development of a candidate vaccine and wishes that the vaccine is quickly made available for public use. However, as a body of scientists – including many who are engaged in vaccine development – IASc strongly believes that the announced timeline is unfeasible. This timeline has raised unrealistic hope and expectations in the minds of our citizens.
While there is an unquestioned urgent need, vaccine development for use in humans requires scientifically executed clinical trials in a phased manner. These trials involve evaluation of safety (Phase 1 trial), efficacy and side effects at different dose levels (Phase 2 trial) and confirmation of safety and efficacy in thousands of healthy people (Phase 3 trial) before its release for public use. Clinical trials for a candidate vaccine require participation of healthy human volunteers.
Therefore, many ethical and regulatory approvals need to be obtained prior to the initiation of the trials. While administrative approvals can be expedited, the scientific processes of experimentation and data collection have a natural time span that cannot be hastened without compromising standards of scientific rigour. For example, immune responses usually take several weeks to develop and relevant data should not be collected earlier. Moreover, data collected in one phase must be adequately analysed before the next phase can be initiated. If the data of any phase are unacceptable then the clinical trial is required to be immediately aborted. For example, if the data collected from Phase 1 of the clinical trial show that the vaccine is not adequately safe, then Phase 2 cannot be initiated and the candidate vaccine must be discarded.
For these reasons, the Indian Academy of Sciences believes that the announced timeline is unreasonable and without precedent, and is therefore issuing this statement in the public interest. The Academy strongly believes that any hasty solution that may compromise rigorous scientific processes and standards will likely have long-term adverse impacts of unforeseen magnitude on citizens of India.
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