*安倍前首相が、原発事故をして「コントロール下にある」という嘘のもとに得られた東京オリンピック開催について、わたしは当初から賛同してない。その議論はさておき、今日は森氏の失言騒動について思うところを記す。
亡父が生きていれば、森喜朗氏と同じ歳だ。
「学校の先生やら、なりなさんな。女の教師にろくなもんはおらん」
「好きな男性と結婚して、夫に尽くすのが女の幸せ」
「ぼくは美穂みたいな女とは絶対、結婚したくない」
中学から大学時代にかけて、父とは何かにつけて衝突してきた。その際に父が発した言葉のすさまじさに、書きながら笑ってしまう。森氏が叩かれているのを見ると、亡父の姿が見え隠れする。
「女の話は長い」という森氏の発言は、ここまで叩かれることなのか? 後々調べてみたら、マスコミによって言葉の「切り取り」があったようだ。そのうえで、あの発言が「女性蔑視」だとされるなら、日本は女性蔑視王国ではないか。
そもそも森氏は在任中から「失言」が多いことで知られていた。にもかかわらず彼をトップに据えた周囲の人間に責任はないのか?
新型コロナ禍でオリンピックの開催自体が危ぶまれるなど問題が山積する中、核心からずれた点を取り沙汰し、それが海外メディアの目に触れ、敢えて日本を厄介な状況に陥らせている。国内行事ならまだしも、オリンピックとなれば身内の恥を世界に晒しているようなものだ。
ジェンダー論については、ここでは触れない。今日は、森氏の偉業を書き残したいが故、書いている。
森氏は2000年、脳梗塞で倒れた小渕恵三首相を継ぐべく内閣総理大臣に就任、小渕首相の政治目標を継承した。わずか1年余りの短い在任期間ながら外交力を発揮。一方、当時から失言が多く、しばしばメディアに叩かれていた。今改めて、報道の背景を見直すに、当時からマスコミの情報操作があったことが見受けられる。なお森氏は在任中、前立腺癌を患いつつも、抗癌剤治療を受けながら職務を続けた。
○初の訪問先はロシア。父が眠るシベリアの日本人墓地にプーチン大統領と共に訪問
○沖縄サミットの実現
○現職総理として初めてアフリカ(サハラ以南)を歴訪
○南アジアや太平洋の島嶼国とも積極的に外交、国連での発言力向上に貢献
○当時、日本では注視する政治家がいなかったインドと積極的に外交……。
🇮🇳2000年8月、森首相は、外務省が消極的だったにも関わらず、将来を見据えてインドを来訪。パキスタンとの繋がりも持つ。以来、今日に至る日印外交の礎を築いたのは森氏だ。インドの政治家や日本と関わる実業家で、森首相を知らない人はいないだろう。
2001年、結婚式を挙げるため、我々夫婦が米国からデリーを訪れたときのこと。晩餐会の席で、インドにおけるワクチン研究の権威である義兄ラグヴァンの父ランジードに、初めてお会いした。ランジードもまた国際的に著名な科学者で、日本で開催された科学者会議に出席、天皇陛下(上皇)とも何度かお会いしたとの話を聞かせてくれた。ランジート伯父はまた森氏とも面識があり、日印外交に貢献した人物として高く評価、わたしと会うたびに、彼とのエピソードを話してくれる。
わたし個人もまた、日印関係にどれほど森氏が強い影響力を持っているかを、これまで2回、目撃した。
◉1回目は2011年。今から10年前に東京で開催された日印グローバル・パートナーズサミットを訪れたとき。このときの記録は、ブログに残している(コメント欄参照)。森氏は日印協会会長であり、同サミットの名誉議長でもあった。彼は2000年にインドを公式訪問した際、インドの核実験で冷えていた日印関係を再構築。2011年に結ばれた日印経済連携協定の中には、10年後の今、実を結んでいるものもある。
◉2回目は2013年12月。天皇皇后両陛下がインドを訪問された際、チェンナイにも滞在された。その折、我々夫婦は両陛下御拝謁の茶会に参席させていただく僥倖を得た。両陛下に同行されていた森氏は集った我々に対し、笑顔で軽やかに挨拶。「縁の下の力持ち」との印象を受けた。
日本女性の立場が弱い重大な理由は他にもたくさんある。女が女の足を引っ張るケースを含め、わたしもまた身を以って経験してきた。失言後の会見で、森氏にインタヴューする女性記者たちの質問を聞いてため息が出た。わたしなら、途中で声を荒げて「同じ話を何度も聞くな」と言うだろう。そもそも、相手への敬意はないのか。森氏の外交力や牽引力を失って困るのは、結果的に国民だ。無論、うまくいかなかった際の責任を、彼に押し付けるつもりかもしれぬが。
事実検証をしないまま、又聞きの曖昧な文字情報を鵜呑みにし、自分の意に沿わないと一刀両断する。その人物が尽力してきた背景を慮ることもせず。相手への敬意なく偉そうに叩く自分自身はどれほどの人間か、ということを省みないことには、霧は晴れない。
●2011/09/08[TOKYO] インド風味満点な東京滞在。ミッション完了!
●2013/07/12 天皇皇后両陛下御拝謁を巡っての、極めて個人的な記録。
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