ヒンドゥー教の新年、ディワリー。日程はヒンドゥーの暦で定められ、毎年、10月から11月の約5日間に亘って祝される。今年は今週が該当する。日本が大晦日から三ヶ日にかけての正月を休暇とするのと同じような感覚だ。
アーユルヴェーダをもたらした健康と薬学の神様を祝い、悪魔退散を祝し、そして昨日の「ラクシュミー・プージャー」がそのハイライトで、今日、新年を迎えた。
ラクシュミーとは、美や富、幸運、豊穣などを司る女神。日本の吉祥天の起源でもある。2枚目の写真、先日紹介した約100年前に日本で作られたところの「和製マジョリカ・タイル」のモチーフとなっているのがラクシュミー神。
睡蓮に立ち(あるいは座し)、4本のうち2本の腕で幸福の象徴である蓮華を掲げている。残る1つの腕でプルーナ・カラシャと呼ばれるココナツの実とマンゴーの葉を載せた壺を持ち、もう一つの手からは、金貨がこぼれ落ちている。背後で象が共に祝している絵柄もある。
ラクシュミーは「清潔な家」を好んで訪れるとされているため、人々はディワリーの前になると大掃除をする。新しい家電や家財道具を調達し、「新品の一張羅」で着飾るのもこの日。ディワリーは一年で最も消費が見込める時期であることから、ディワリーセールが盛大に開催される。
ディワリーはまた、家族や親戚が集う大切な時期でもある。米国のサンクスギヴィングデー同様、帰郷する人たちで空港や駅が混雑する。友人知人や仕事関係の人たちには、お歳暮よろしくインド特有の甘いミルキーな菓子類などを贈答し合う。このごろは、ギフトの選択肢も増えたが、今でも主流はお菓子やナッツ類だ。
ディワリーの数日前から、街路はクリスマスさながらのネオン(電飾)で彩られる。つい先日のニュースでは、石炭不足で電力供給が危ういと報道されていたインドだが、いったいどうなっているのか、思うほどに、きらびやか。
🇯🇵日本から来ました! 欧州発、日本経由インド。旅するマジョリカ・タイル。
➡︎ https://museindia.typepad.jp/2021/2021/09/tile.html
多くの家庭の玄関先が、ラクシュミーに立ち寄ってもらえるようにと、「コーラム」あるいは「ランゴーリ」と呼ばれる色粉で描かれた吉祥紋で彩られ、いくつものディヤと呼ばれるオイルランプで光を配する。
そしてハイライトは、子どもだけではなく、大人も一緒になって楽しむ花火や爆竹。日本のそれとはスケールが格段に違う「空爆か!」と思えるほどの爆音や、炸裂音が一晩中、市街を包む。むしろラクシュミーが逃げるのではないかと思わずにはいられない、騒々しさだ。
去年の1月、義父ロメイシュが他界したことから、昨年のマルハン家は喪に服し、ディワリーの夜は静かに過ごした。今年は一昨日開かれたパーティに参加すべく、会場のホテルに1泊、束の間ステイケーションを楽しんだ。友人らの多くは、すでに国内外の旅行を復活させているが、我々夫婦はまだどこにも行っていないので、せめてもの気分転換である。
さて、ホテルから戻った昨日、ラクシュミー・プージャーの当日は、Youtubeでの新企画『教えて、みほ先輩!』の収録をすべく、市街に爆音が響き始める中、いそいそとサリーに着替えてセッティング。ギフトでもらった「花火詰め合わせセット」などの説明などしつつ、リアルなインドの息吹を伝えるべく、今回も語った。近々、眞代さんが編集してアップロードしてくれるので、改めて告知したい。
昨夜のバンガロールは、季節外れの雨が降り始めたため、爆音に邪魔されることなく、平和に就寝できた。この日、爆音で心を病む野良動物やペットたちにとっても、幸いだったと思う。無論、花火の残りを消化すべく、今夜も賑わう可能性はあり。
新型コロナ禍を経験してのディワリーは、これまで以上に、思うところ多い。人生は不確かなことばかり。きっと多くの人が、何もかもが面倒になったり、どうでもいいと思ったりを繰り返していることだろう。
人は、人それぞれに、問題を抱えて生きている。それでも、投げやりにならず、希望を失わず、気を取り直して、自分を鼓舞して、未来を信じて生きるしかない。投げ出したら終わり。生きているからには、ちゃんと生きないと。そんな思いを新たにする、ディワリー、新年だ。
遍く旅路に光あれ! (『ロングホープ・フィリア』 by Amazarashi)
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