⬆︎上の絵画は、先日、友人の画家ジャヤから購入した作品のひとつ。「ハンピのどこかで撮影した」と聞いていた。このような建築物は、ハンピにいくつもある。彼女が描いたのは異なる場所だとは思ったが、偶然にも自分が赤い服を着ていることに気づき、同じような状況で写真を撮りたいと思った。居合わせたフォトグラファーに絵の写真を見せたところ、彼は一瞥しただけで、この一枚を撮ってくれた。見比べたら、あまりに似通っていて驚く。早速ジャヤに写真を送ったら、わたしをモデルにしたこの絵を描きたいと申し出てくれたのだった。
◉バンガロールから北へ約350km。ユネスコ世界遺産もあるハンピへ
2020年3月から一度も飛行機に乗らないまま、一年半の歳月が流れた。その間、長距離ドライヴ旅を2回。1度目は今年のデルタ株第2波直前の3月、ここカルナータカ州のジャングル、カビニへ。そして今回も、やはりカルナータカ州。バンガロールから北上すること約350kmのハンピを訪れた。
どちらも、我々夫婦が所属するYPO (Young President Organisation/米国発グローバルに卓越したリーダーシップ・コミュニティ)のバンガロール支部が主催するメンバー向けツアーゆえ、個人手配の旅では訪れないような場所へ足を運ぶことができた。それに加えて、「自分の勘」で訪れた場所もすばらしすぎた。旅を終えても気持ちが落ち着かず、この記録の着手に10日もかかっている。
時空を超える稀有な旅をシェアすべく、長い記録になると思うが、残そうと思う。
🐅マイソール&カビニのジャングル旅
➡︎https://museindia.typepad.jp/2021/mysore-kabini-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%E6%97%85/
◉今回、3度目のハンピ。9年前とも、3年前とも異なる、新たな体験
我々夫婦が初めてハンピを訪れたのは2012年。そのときは、ハンピに近いフブリという街で開催されたカンファレンスに参加するのが主目的で、ハンピは駆け足で観光するにとどまった。しかしそのときが最も「観光客らしい旅」をしたように思う。ガイドの案内で、ユネスコの世界遺産に指定されている中心部を重点的に巡った。
2度目は2018年。夫が海外出張に出ることから、一人旅をする予定でいたが、ハンピ郊外にあるKRSMAという美味ワインのワイナリーを訪れたくなった。デリー在住の友人に声をかけたところ、彼女が旅の前半を同行することになった。その珍道中たるや、これまた稀有な経験であった。ドライヴの途中、彼女から教わった『破天』を読んで佐々井秀嶺上人のことを知ったことを思うと、非常に大切な旅でもあった。
ハンピのことをよく知りたいと思われる方は、ぜひとも過去の記録をご覧いただきたい。
【2012年1月/初めてのハンピ旅行】
駆け抜けるようにハンピ。都市遺跡を巡る小旅行。
➡︎ https://museindia.typepad.jp/2012/2012/01/hampi.html
【2018年3月/2度目のハンピ旅行】
[Hampi 01] 世界遺産の都市遺跡ハンピへ4泊5日ドライヴ旅
➡︎https://museindia.typepad.jp/2018/2018/03/hampi01.html
[Hampi 02] KRSMAのワイナリーへ。夕景はハヌマーンが生まれた丘から。
➡︎https://museindia.typepad.jp/2018/2018/03/hampi02.html
[Hampi 03] ガンディの理念が生きる、手工芸のNGOを訪問
➡︎https://museindia.typepad.jp/2018/2018/03/hampi03.html
[Hampi 04] 神話と現実が交錯しながら、今に連なるインド。
➡︎https://museindia.typepad.jp/2018/2018/03/hampi04.html
[Hampi 05] 再び長距離ドライヴ。異なる光景で帰路も愉し。
➡︎https://museindia.typepad.jp/2018/2018/03/hampi05.html
◉そして今回、2021年。地球創生から現代まで。大きく4つの次元を旅した3泊4日
わたしは東京在住時の20代の駆け出し編集者のころから、数々の旅行ガイドブックや雑誌の編集に携わり、世界各地を旅してきた。心に深く刻まれている土地はたくさんある。しかし、このハンピほど、ダイナミックな時間旅行を体験できる場所は、世界広しと言えども、そうそうないと思われる。ハンピを旅する前に、あらかじめ大きく4つの時代区分を知っていると、情景を見る目が変わるかと思う。わたしは3度目にしてようやく、それぞれを認識できるようになった。その途端、叶うことならハンピに1カ月くらい滞在し、あちこちを探検したいと思えるほどになっている。
我々の旅の経験に則って、今回は以下のテーマにわけて、記録を残そうと思う。
①数十億年前/生まれたばかりの地球の姿が残る場所。地質学の視点
ハンピ一帯の「岩盤」や「奇岩」は、地球上で最も古い露出面のひとつ。地球が誕生した時、とてつもなく巨大な花崗岩の山だった一帯が、数千万年(数十億年という説もある)に亘って、日射しや嵐、風、雨といった自然の力に浸食で、徐々に形を変えた。石が積み重なったのではなく、自然という「彫刻家」によって造形された奇岩なのだ。
②数千年前/神話の世界。インドの二大叙事詩の一つ『ラーマーヤナ』における主要ポイント
『ラーマーヤナ』とは、古代インドの長編叙事詩で、インド人の多くが知っている重要な神話だ。ヒンドゥー教の聖典の一つであり、『マハーバーラタ』と並んで、インド二大叙事詩とされている。北インドのコーサラ国を去らねばならぬ運命に陥ったラーマ王子とシータ姫、ラーマの弟ラクシュマンを巡る物語。現在のスリランカである「ランカ島」に住む10の頭を持った悪魔ラーヴァナによって、シータ姫が誘拐される。姫を救うべくラーマとラクシュマンは鬼退治に行くのだが、途中、このハンピで絶大なる助っ人、猿の神様「ハニュマーン」と出会う。この『ラーマーヤナ』に因んだ場所がハンピには数多くあり、我々夫婦も稀有な経験をした。
③数百年前/世界規模で栄華を極めたヴィジャヤナガル王国の王都
ハンピは、14世紀から16世紀中頃にかけて隆盛を極めたヴィジャヤナガル王国の王都だった。宝石やスパイス、布などさまざまな貴重品が交易されるバザールが存在。当時の都市遺跡は各所に散らばり残っているが、中心部の「一部」がユネスコ世界遺産に指定されている。
④現代/鉱山と鉄鋼業。オリンピック選手養成施設。自然保護区など
ハンピ界隈の地中には、鉄鉱石が眠っており鉄鋼業が盛ん。日本との関わりも深い。今回、YPO主宰での旅だったこともあり、鉄鋼大手ジンダルの幹部であるメンバーの計らいにより、製鉄所や鉱山の見学をした。さらには、ジンダルによって設立されたオリンピック出場選手の養成施設も訪問。2020東京オリンピックに出場した選手にも会って話を聞けた。この他、今回は訪問しなかったが、ハンピには動物(熊)や植物の自然保護区もある。
⑤滞在したラグジュリアス・ホテルやYPO主催のパーティの記録など
ハンピはすばらしい土地ながら、いかんせん、観光インフラが整っていない。ニューヨークタイムズの2019年版「訪れるべき旅先52選」で、ハンピは2位に選ばれた。これを機に、徐々に海外からの旅行者にも対応すべくインフラが向上すると思われたが、まだまだホテルや飲食店の選択肢が少ないのが現状。ヒッピー時代の名残が強い。しかし、我々が滞在したホテルも数年前に誕生するなど、徐々に環境が整い始めているようだ。
◉『ラーマーヤナ』を予習しておくと、旅の楽しさが格別なものになります!
わたしが読んだのは、この「子ども向け」と思しき、わかりやすい『ラーマーヤナ』。ちょうど50年前に記された著者による前書きが、この物語の大切さを伝えているので、その部分だけ、写真にて転載する。
ハンピ旅に関わらず、インドの、特にヒンドゥー教を巡る背景を知るのに際しては、とても大切な物語だ。日本の『桃太郎』のもとになっているに違いない、悪魔退治(鬼退治)のストーリーは、随所に親近感を与えられつつ、インドにおける精神世界のようなものへの理解が促進されるとも思う。ぜひ読まれることをお勧めする。
◉1992年に製作された日印合作のアニメーション。この動画の存在を、つい先日知った。英語版しか見当たらないが、映像を眺めるだけでもイメージが掴めるかと思う。
"Ramayana: The Legend of Prince Rama is a 1992 Indo-Japanese traditional animation feature film directed by and produced by Yugo Sako and based on the Indian epic the Ramayana. The original English version with Sanskrit songs was screened and released on home video under various names including Ramayana: The Legend of Prince Rama and Warrior Prince.
This film was made as a part of the 40th anniversary of India-Japan diplomatic relations and was worked on by teams from both countries. It was released in the United States in a different, further localized English dub with narration by James Earl Jones, Prince Rama voiced by Bryan Cranston and additional music by Alan Howarth"
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