3月9日。今日は亡父の誕生日だ。生きていれば80歳。1月13日にパパが他界してから、まだ2カ月しかたっていないのに、本当に、いろんなことがあった。
心に重くのしかかること、深く物思うことの多く、時間の質量が大きかった。
昨日、日曜日。花を注文しようと、いくつかのサイトを開いた。最近は、花のデリヴァリーのサイトも選択肢が多々あるのだが、パパの好きなブルー系の花のアレンジメントが少ない。ここは老舗のOHANAに頼もうと電話をする。バンガロールの高級ホテル、リーラ・パレスにあるフラワーショップだ。
電話に出たのは、落ち着いた声の女性。口調からして、オーナーかマネージャーだろう。亡父の誕生日を祝うための花を、白やブルー、パープルでアレンジして欲しい旨、花の種類も相談しつつ、伝えた。
そして数時間後に届けられた、大きさなバスケットに活けられた花。受け取ればどっしりと、驚くほど大きい。ゴージャスでありながら、上品なアレンジメント。過去と比するに、まちがいなく、予算よりも立派だ。彼女の思いやりをも、花に託されているように思えて、心を打たれた。
午後は、キッチンに籠ってクッキング。日本料理が大好きな友人らを、遂には拙宅に招く機会を得られたのだ。デッキーとアミット夫婦、そしてトシャール。世界各地の高級店で、日本料理を食べ尽くしている彼ら。洗練された料理では太刀打ちできないので、毎度おなじみの、独創的宴料理でもてなす。
・自家製鶏ハムとトマトのサラダ
・チキン・ロリポップのエアフライヤーでのフライ
・豚バラかたまり肉の味噌味マリネ、今日は白菜の上に載せて、インド人仕様にキムチも加えて、ややスパイシー仕上げ。
・サーモンのグリル
・味噌汁
・卵巻き寿司
・ほうれん草のおひたし
・大豆もやしのナムル
・ポテトサラダ……
日本酒を持参して参上したトシャール。昨年、京都と北海道を旅して、より一層、日本料理と日本のもてなしに感銘を受けたらしく、エピソードが尽きない。空港到着後、免税店で買い物をしたときに、店員の女性がレシートをピシッピシッと折りたたみ、パスポートに貼り付け、小さなスタンプ(印鑑)を押してくれたこと、1粒200円もするイチゴを一粒買ったが、それが見事に美しくラッピングされていて、開封は一瞬でできる技が駆使されていたこと、北海道の牛乳は最高で、ソフトクリームが夢のような味わいだったこと……。
「ニルギリスの牛乳もおいしいじゃん!」と口を挟むわたしを一瞥し、眉間にしわを寄せる。「ナチュラルズのミルク・アイスクリームもおいしいよ」と言っても、耳を貸さない。
京都では、予約を取るのも困難な高級老舗の俵屋旅館に泊まったらしく、そこの料理が超絶品だったらしい。日本人としては、おさえておくべきスポットか。ちなみにわたしは、北海道さえ、行ったことがないのだ。
そんな彼が、先日体調を崩して入院したとき、夫がお見舞いに行った。そのときに、味噌汁とおにぎりをもたせたのだが、その味噌汁がまさに、五臓六腑にしみわたって、あのときほど味噌汁をおいしいと思ったことはなかった……とのことである。
彼の胃は、日本人の胃に近いようである。そんな彼に、日本人女性のウエイトレス風に、ビールをお酌してみる。なにか、違うようだ。わたしはウエイトレスのバイト経験も豊かなのだがな……。
そんな昨夜のヒットメニューは、「抹茶クリームロールケーキ/粒あん添え」。抹茶味が好きな彼らのために、いつものニルギリスの生クリームに、贅沢にも抹茶を加えて混ぜ、昨年の一時帰国時に買っていた高品質な粒あんを添えて出した。これが、想像以上に美味! ほんのり抹茶の苦味とクリームのまろやかさがいい具合に調和している。
「ナチュラルズのアイスクリーム、ない?」とトシャール。これは、ミルクアイスを添えると格別においしそうだ。あいにく、なかったので、いちごを洗って出した。
「12人前」の超ロングなロールケーキ。2人前をお土産用に切り分けて残しておいたのだが、残る10人前を都合5名で食べ尽くした。粒あんはもうないが、抹茶はまだ残っているので、抹茶クリームロールケーキは、また作ってみよう。次回はアイスクリームも準備しておこう。
企業CEOであり、ミュージシャンでもあるトシャール。彼が昨日、レコーディングしたばかりという曲を聴き、そこから得た言葉を、短冊に記す。酔っ払って字が乱れているが、好きな言葉を持ち帰ってもらった。
デッキからの贈り物は書籍。チベット曼陀羅の言葉と塗り絵。侘び寂び。吾唯足知。諸々、響く。ぶれずに生きねば。ありがとう。