Flipkartで注文していた新しいiPhoneが午後、届いた。自分で設定しようと開封し、中身を確認したところ、SIMカードのサイズが異なっていたため、変えてもらうためにAIRTELのオフィスへ。つつがなく変更され、新しいiPhoneの快適さに喜びつつ、あれこれと触っているうちにも、夕暮れ。
こんなときは、なにも料理をしたくないのだが、ドライヴァーのアンソニーに脈絡なく頼んでいた野菜がある。エビを解凍していたので、ブロッコリとトマトで炒めることにした。これはもう、毎度あっさり、茅乃舎野菜だしで味付けて、あとは塩胡椒など。
エビは背中の部分からカットすると、背わたを取りつつ、面積が広がって味がしみ込む。中国料理でよく見かける切り方だ。大きめのエビをこのように切って、衣を付けてフライにするのも、いい。
Namdhari'sのホウレンソウ。インドの人たちは、葉っぱの部分だけを切ってパラック・パニールなどの料理に使うべくホウレンソウを茹でて滑らかなペースト状にしたりするのだが、わたしはもちろん、茎も使う。
ホウレンソウは翌日のお弁当などにも使えるので、少なくとも一気に2束茹でる。シンクに水を張り、ザバザバと洗って、茎の下の方をばっさりと切る。最近は葉っぱの部分だけを切ったものも、同店では売られており、その方が洗いやすいといえば洗いやすい。
パスタ同様、深底のフライパンで茹でる。最初に鍋半分ほどに湯を沸かし、ホウレンソウと塩をいれ、同時に沸かしておいた電気ポットの湯を上から静かに注ぐ。そうすると、ホウレンソウが浮かんで来るのをぐいぐい押さえ込まなくてもすぐに沈む。
大きいことはいいことである。このザルはその一例だ。日本に一時帰国した際に購入したもの。スーツケースに入れてダメージを与えるのが心配で、手荷物で持って帰って来た。大中小の3セット。これは大。最も使用頻度が高い。
ホウレンソウをザルにあげ、軽くさっと水を通し(たくさん水を流すと栄養が流れ落ちる……はず)、トングで広げて冷ます。
ちなみにザルはオンラインで購入した。竹虎という店だ。
茹でると、しゅ〜んと小さくなる。おひたし風にしてもいいし、硬めに茹でたときには、炒め物に使ってもよい。オリーヴオイルで松の実、あるいはニンニクを熱して、それにホウレンソウを入れて塩こしょうで炒める、というシンプルなものも、またおいしい。
実は、前日スペアリブを購入した時、鶏肉のレヴァーも買っていたことをすっかり忘れていた。冷蔵庫にぽつねん。とあったのを取り出して、煮付けに。夫はコレステロール値が高いのであまり食べられないため、これは主に、わたしが食べることとする。まあ、カロリーは高いが、女性にはよい食材である。
一旦さっと湯がいたあと、湯を切って、改めて鍋で煮付ける。ショウガ、しょうゆ、ジャガリ(天然の糖)、酒……といいたいところだが、あいにく日本酒は切れているし、白ワインもない。バーカウンターを開いて、アルコールを物色。紹興酒の風味さえある、ヘレス(シェリー。酒精強化ワイン)のブリストル・クリームをいれることにした。「クリーム」と名付けられたヘレスは甘みが強いので、ジャガリを控えめに、ヘレスに任せる。
料理をしながら飲むために、小さなグラスに注ぐ。
ヘレスとは、産地スペインでの呼び名。シェリーは英名だ。お酒があまり飲めなかった20代半ばのころから、好きな味である。
ヘレスの産地は、南スペイン、アンダルシアの、ヘレス・デ・ラ・フロンテーラという町。
1999年から2000年にかけての年末年始に、当時まだボーイフレンドだった夫と旅した。
ドライヴ旅、である。わたしは以前取材で訪れていた町もいくつかあったが、それ以外にもフレキシブルに動きたく、ドライヴ旅を選んだ。夫は当時、運転免許証を持っていなかったので、わたしが運転。地図がよめない方向音痴の夫がナビゲーションという、スリリングな旅であった。当時は、カーナビゲーションシステムがまだ、普及していなかったのだ。
セビーリャ、グラナダ、コルドバ、ロンダ、そしてヘレス・デ・ラ・フロンテーラ。有名なTIO PEPEの醸造所も見学した。心残りは、有名な馬のサーカスが新年でお休みで見られなかったこと。
そのあとは、ジブラルタル海峡を左手に眺めつつ、西を目指してポルトガルへ。大航海時代の面影さえ残っているかのごとく、古き港町ファロの風情といったら、なかった。今はどうなっているだろう。今すぐにでもまた行きたくなるような、味わい深い町だった。
それから北上して、エヴォラ経由でリスボンに入り、そこからは日帰りでシントラへも行った。なにしろ焼き菓子が豊富なポルトガル。カステラの起源であるパオ・デ・ローを探して店を転々とした。
ポートワインもまた、おいしくて、ファドの旋律の遣る瀬なく……。なんともいえぬ、味わい深い土地であった。
と、話が長くなった。
夫の帰りが遅くなるとのことなので、レヴァーをつまみに、書斎で飲みつつ至福のひととき……。と、普段はお行儀のいいNORAが、ROCKY風にデスクまで迫って来た。
レヴァーの香りがお気に召した模様。
と言わんばかり迫って来る。
怖いよ、NORA。
猫のあなたには、あいにく差し上げられません。