それは、間違いのないことだ。
今回2週間の旅では、わたしもおいしいものを、たくさん味わって来た。
しかし、食品添加物をたっぷりと含んだ、身体によくない食べ物が、平然と満ちあふれているのも、事実だ。
年々、日本での、特に外食では、口にできない物が増えてきた。特にMSG(味の素などの化学調味料)アレルギーが顕著になってきたここ数年は、ある一定量以上を摂取すると、体調を崩すようになった。
食べるものを選ぶと、自ずと、値段が高くなる。
ただ、天然自然のシンプルなものを、毎日のように口にすることが、決して簡単ではない。
ずっと日本に住んでいれば違和感なくいられるであろう。わたしとて、20代のころは、そうだった。しかし、米国に10年、インドに10年。日本のインスタント食品や加工食品から離れる歳月が長くなるにつけ、それらに含まれる「身体に悪いもの」の存在が、身を以てわかるようになってきた。
口に入れた瞬間に、吐き出したくなるものさえある。以前は、普通に「おいしい」と思って食べていたのに。
昨今では、食品添加物だけではない。放射能汚染さえ気にしなければならなくなってきた。
「そんなことを言っていたら、食べる物がなくなる」
世間では、そういう人が多数だ。だが、そんなことはないと思う。確かに、たいへんにはなる。が、身体のことを思えば、手間をかけるべきだとも思うのだ。特に、子どもたちのためには。
商品を選ぶにも、料理をするにも、利便性を優先するのではなく、一手間かける。利便性を追求した果てに、身体にとってよくない結果となっていることは、多分、間違いない。
が、わたしがここで声を大にしたところで、意に介さない人は多数だろう。ただ、せめて子どもたちのためには、日本の食生活は、見直されるべき点が多すぎるように思える。
この点については、改めて「インド百景2015」に記そうと思う。
インドとて、身体にいいもの、安全な物を口にするには、選ばなければならない。ただ、日本ほどインスタント食品や添加物の多い加工食品が普及していないから、自分で素材を一から調理するしかなく、結果的に、身体にはやさしい。
インドでは、農薬過多が取沙汰されることもあるが、昨今はオーガニックの食品も手に入りやすくなったし、野菜や穀物、豆類などの食材も非常に豊富だ。日本に比べると、品数のヴァラエティが少ないとしても、工夫次第でなんとか凌げる。
日本からの駐在員やその家族のみなさんの多くは、山ほどの加工食品を日本から持ち込まれる。確かに、インドでの食生活が未知数で、心配があるのは理解できる。特に単身赴任の人たちには、料理のことなどを考える余裕はないだろう。
ただ、不便でも、身体によいものは、インドにはたくさんあるのだということは、知っておいて欲しいと思う。
更に言えば、会社から支給されるから、ということで、日本からだけでなく、タイや香港などの買い出し休暇先で大量の食料を購入される方も多数だ。その件に関して、異論はない。ただ、賞味期限を意識しながら消費してゆきつつも、しかし帰任の際には結果的に、大量の加工食品が残される。
それら、目に余るほどの食品を、未開封のまま、分別することなく、リサイクルに出すこともなく、すべて新品同様そのままに、ゴミとして捨てて行く駐在員家族を、これまで何度となく見て来た。
立つ鳥、後を濁す。
自分たちが食べられなかった分は、捨てずに日本に持ち帰って処分して欲しい、とさえ思う。
今回一時帰国をして、かつてのバンガローリアンの女性たちに会ったが、料理をする人たちが異口同音に言うのは、インドの食材が、安くて豊かであった、ということだ。あくまでも、料理を好んでする人たちに限ってのことだが。最初から、インドの食に対して不満があり、頑に拒否していた人たちは、その限りではないだろうけれど。
インドに10年暮らし、9割以上をインドの食材で賄い、食して来た我々夫婦が、それなりに元気で暮らしていることも、インドの食がさほど悪いものではない、ということの証かと思う。
ニューヨークで購入してきたお気に入りのドライイースト以外は、小麦粉、バター、砂糖、塩、すべてインドのオーガニック食品を利用して作ったパン。素朴で、おいしい。
オーガニックの大根と大根葉の煮付け。それに薄切り豚肉を立田揚げ風に味付けて、エアフライヤーで調理したもの。
さほど料理に時間をかけるわけではなく、料理の品数も少なめ。それでも、安全で安心できるものを確実に食べる方が、いい。
オリーヴオイルと塩胡椒というさっぱりとした味付けだけれど、素材の旨味が濃縮されていて、おいしい。付け合わせの野菜は、ナスとブロッコリーの炒めもの。
さっぱりばかりの味付けも退屈なので、たまには濃厚クリーミーなパスタなどを。
インドの玉ねぎは水分が少なく甘味が強いので、ガーリックとともにバターで炒めれば、風味豊かな調味料となる。この日はマッシュルームとソーセージを使い、牛乳と菓子作りで残っていた生クリームを入れて、硬めに茹でたパスタを煮込んだ。
この日は、インゲンを蒸したものを添えた。毎日、ホウレンソウかインゲン、アスパラガス、ブロッコリー、ピーマンなどをローテーションしての「緑の野菜」が添えられる。トマトもまた常備。インドのトマトは酸味が強いので、加熱して食べることが多い。
このごろのサロン・ド・ミューズは毎回30名前後。以前のようにデコレーションに凝ったタルトなどを作るには多すぎて、まとめてドン、のお菓子ばかり。
久しぶりにオープンした先週は、ロールケーキを2本焼いて完了。砂糖、小麦粉、卵、コーンパウダー、そして生クリームだけででき上がる、素朴においしいお菓子。ヴァニラやラム酒などを、クリームの風味付けに入れるけれど。
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日本から戻って、増量分を減らすべく、シンプルな食生活の日々、のはずなのだが、こうして断片を取り上げるだけでも、かなりしっかり食べている。これでは、元に戻るのもまだ、時間がかかりそうだ。
とはいえ、心身が喜ぶ物を食べられるというのは、有り難いこと。インド生活も11年目となった昨今。食生活もまた、大切に、この先も暮らしていきたいものである。