ロックダウン10日目。軟禁生活14日目。この特殊な時間の中で、しかし「オフライン」にして情報を断絶してしまえば、緩く穏やかな日々。手に入る限りの食材で滋養のある食生活をし、朝な夕なに庭の緑を裸足で踏みしめ、降り注ぐ陽光を浴び、猫らと遊び、映画を見、本を読む……。
むしろ、贅沢な時間であると思う。ただ、そういうわけにもいかず、なかなか熟睡できない日が続いている。眠りの前にお香を焚きつつ日記帳を広げたり、夜の庭を歩いたり、猫らにぐいぐい擦り寄ったりして心を鎮め、眠るようにしている。
ロックダウンに入るとわかったときには、片付けてしまいたいこと、新しく始めたいことなどを実行する契機だと思ったが、最初の数日で、普段よりも、何かしら、時間が足りないことに気づいた。
メイドが来なくなって家事の仕事が増えたこと、夫がいるので三食の準備と片付けをせねばならないことを考えると、当然のこと。しかしここ数日は、少し手を抜くコツも心得てきた。
気がつけば髪が伸びている。思えば、去年の10月に一時帰国したとき、福岡天神のヘアサロンでカットして以来、半年近くも伸び放題だ。スタイリストは斎藤工によく似た、だいぶすてきなお兄さんだった。思い出すだけで、顔がにやける。わたしの記憶の中ではもう、「斎藤工に髪を切ってもらった」ということになっている。
書斎に籠って日々オンライン会議の夫。コーヒーやら果物やらを差し入れしようと、うっかり書斎のドアをあけると会議中。夫の背後に現れる妻。すっぴんで無造作に髪を束ね「アッパッパ」な出で立ち。見なかったことにして欲しいと思うこと数回。服を着てただけよかったが(!)、ほんと、気をつけねば。
友人らはみな、そういう状況らしく、今日は友人から “SEXY SHIRT PARTY”の案内が届く。上半身だけでも、きちんと決めて会いましょう、的な。そもそもソーシャル(社交)が不可欠なインドの人々。家に大勢を招くことが日常のライフにあって、しかし当然ながら、それぞれが幽閉生活。ロックダウン下ではオンラインを通してのソーシャルがすっかり日常化している。
冷凍庫のノンヴェジ食材(魚&肉)が少なくなってきた。FreshtoHome.comも稼働はしているが、先日記した通り今は鶏肉などだけ。こんなことならもっと魚を買っておけばよかったと悔やむが、そもそも我が家の冷凍庫は手作り猫餌の保存分でいっぱい。いずれにしても入らなかった。
というわけで、鶏肉料理が続く。
竜田揚げ風の味付けをして、エアフライヤー(ノンフライヤー)で加熱すると、鶏の脂が染み出して、いい感じに焼きあがる。油で揚げずに香ばしくできあがるので、本当に重宝している。
ランチは、キャベツが手に入ったのでお好み焼きを。といっても、極めて我流につき、お好み焼き風。粉は全粒小麦粉(ATTA)を使う。お菓子やパンや精製小麦粉(MAIDA)を使うが、チャパティなどに使われるATTAのほうが、繊維質を多く含み、栄養価も高い。
水とATTA同量(カップで計量)をボールに入れ、卵(一人1つ)、化学調味料を使わない天然だし、キャベツの千切り、貴重な豚バラのスライスを少々入れてじっくり焼くだけ。インドのキャベツは加熱に時間がかかるので(キャベツに限らず野菜全般)、じっくり加熱するのがこつ。白菜を使うと加熱時間が短くなり、しっとりしておいしい。
トッピングはマヨネーズとしょうゆ、鰹節、のりなど。極めて簡単に、おいしくできる。が、ここに来て、我が家は貴重な「醤油」が欠乏直前。毎年2回、日本とニューヨークで調達してきたが、来月ニューヨークへ行くことは望めず……。
インドでも醤油は手に入るが、クオリティが今ひとつ……。とはいえ贅沢も言っていられないので、ロックダウンが明けたら、醤油は調達せねばならない。野菜類は、種類が少なくても潤沢に手に入る。ポテトサラダはシンプルだけれど、心和ませるおいしさがある。夫がなんでも食べてくれる人でよかったと思う。