水曜日に訪れたモスク界隈でのラマザン食の激しさを、「ローカルフード探検隊」隊員に報告したところ、強い関心を示されたため、ラマザンが明けぬうちにと、早速金曜の夜、我が家でラマザンナイトを開催することに。
まずはモスクロードのバリスタカフェで待ち合わせ、隣接するALBERT BAKERYでパンを仕入れる。
礼拝日の金曜とあってか、本日、この界隈の込みっぷりは一段と激しい。
ブルン・ブレッドの他に、お菓子類も購入。
小さなスポンジケーキやココナッツのクッキーのようなもの、それからマトンやチキンのパフなどを選ぶ。パフは焼きたてで、いかにもおいしそうだ。
ちなみにこの店、毎日「午後3時から9時」の営業だとのこと。
今年のモンスーンは格別に雨の多いバンガロール。雨が降るのを恐れたが、幸い、雲間からは夕日が射している。
車に乗るほどの距離でもないので、モスクロードを北上し、歩き始めるのだが……。足場が異様に悪く、ゴミが散在し、ともかく歩くに適しない歩道。
更には、隊長、途中で牛に襲われそうになる。
たとえ牛が道路の真ん中で寝ていようが、踏切で信号待ちをしていようが、驚くに値しない。
お買い物かごを下げて、普通に牛の傍らを通過しようとしたところ……
追い越しを妨害するのだ。
それも、かなり悪い目つきで。
ムスリムエリアでは、牛はやさしくしてもらえないから、根性が曲がってしまったのだろうか?
どうやら、隊長の買い物かごから漂って来る、チキンやらマトンのパフの匂いが気になっているようだ。
バスケットの方へ近づいて来る。
何気なく、闘牛。
なかなかに、デインジャラスな感じではあった。
道なき道を進みつつ、露店が出ている界隈へ向かう。わずか100メートルに満たない道のりが、妙に長く感じる。
ラマザン・フードの油っこい写真はもう、前回いやというほど載せたので、控えめに、あたりの様子を。
バイクの車輪に足を踏まれないよう、わらを摘んだオートリクショーに接触されないよう、寝そべる野良犬のしっぽを踏まないよう、牛の糞を踏んで滑らないよう……。
四方八方に注意を払いながらの歩行である。
さて、この日の目玉商品は、KFC。KFCが店を出しているわけではなく、KFCのフライドチキンに酷似した見た目のフライドチキンが、「KFC」という名で売られているのだ。
隊員一同、そそられてしまい、思わず立ち食い。これがかなりいける! KFCのフライドチキンよりもむしろ旨い!
買い物をしているだけでもう、煙にまみれて、胸焼けがしそうなのは、一昨日と同様だ。先日掲載の、あの「四角い包み揚げ」はやはり、隊員たちの視線を釘付けにした。
「あれは、やばいよね」
「あれは、軽く1000キロカロリー、いくね」
「ひょっとすると、成人が一日に必要とする熱量を補っているかもしれん」
などと口々に。気持ちを切り替えるために、チャイを飲んだりしつつ。随所で物乞いに乞われつつ、そらもう、たいへんなことである。
せっかく甘ったるいチャイを飲んで「お口直し」をしたのに、焼きたてのケバブを食べたくなり、つい、ビーフを二口三口、店頭で味見。
それはそうと、店の人たちは、恐ろしく熱い肉を、素手で串からスーッと取り外すのだ。見るからに、あちちちち。という感じ。
同時に、隊員一同が思い出すのは、あの日の、串刺し関係の「奇祭」である。随所で、トラウマが刺激されるのである。
ところで、今日の参加者は、PAKAKO隊員の夫、ヤクルト王子とマイハニーの合計5人。にも関わらず、「余ったら、各自持って帰ればいいよ」を合い言葉に、軽く10人分くらいを買ってしまう。
3人で車に乗り込めば、車中がたちまち、肉やらガーリックやらスパイスの濃厚な匂いに包まれる。
ドライヴァーのアンソニーがクリスチャンでよかった。これが敬虔なヒンドゥー教徒だったら、堪え難いことだったろう。
これ、誰が食べるの?
な気分。
そもそも、アルヴィンドは昨夜より体調が今ひとつ。
「ぼくは、軽くスープかなにかでいいよ」
と言われていたのだ。
さて、購入物の開封もそこそこに、ビールを飲む。
そのビールのおいしいこと!
ALBERT BAKERYで購入したパフを味見。と、マトンのパフが非常においしい!
次回は人気のサモサも試してみなければ。
マニプールの石鍋に盛りつけ、そのままオーヴンに入れて温め直して、テーブルに。男衆はしばらく後に帰宅&来訪するのだが、それまで、なかなか減らないのであった。
チキン、マトン、ビーフと3種類も買ってしまったハリーム。
誰も、手が出ない。
というのも、今日、知ってしまったのだ。これは大量のギーで煮込まれているということに。
あとで使ったスプーンを洗ったところ、猛烈にぎとぎとで愕然とした。これはもう、1000キロカロリーどころか、2000キロカロリーくらいありそうだ。
登山時の非常食に好適!
1パックで、1週間は生き延びられます。
という感じである。
こんなこともあろうかと、あらかじめ用意しておいたキュウリやトマト、手作り豆腐が好評。それにキャロットスープも。
なかでもキュウリのさっぱりさが胃にしみる。
遥か以前、モンゴルを旅したとき、とある村の村長のゲルに招かれ、羊を解体し、ごちそうされたときを思い出した。
脂っこいマトンを、がつがつと手で食べながら、ほんの少し添えられていたあのキュウリが、本当においしく感じられたことを。
普段は主張しないキュウリの存在感を思い知らされる、こってり肉料理だ。
探検隊員は、隊員だけあり、食べ物の話が延々と続きつつ、旅の話やらスポーツの話やら。
彼女たちが、フルマラソンやトライアスロンの経験ありという話を聞いて、驚く。
ワンダフルな人たちと、ローカルフードを、いや、インドのローカルを探検することができて、幸運だ。
基本、ひとりであちこちを巡る性分だが、関心を持つ人が経験を分かち合えば、そこには異なる視点からの発見があり、広がりがあるというものである。
途中で合流した男衆。アルヴィンドの調子は戻っていたようで、結構、喜んで食べていた。ヤクルト王子も、お疲れのところ、こってり料理を、(多分)楽しんでくれていた。
女子は、最後の最後までうるさかった。フルマラソンOKの体力の持ち主だもの。推して知るべし、の夜である。
■思いがけず、パルシーの正月料理を堪能する土曜の午後
本日土曜日。いつものように夫と二人でアーユルヴェーダの診療所へ赴き、全身オイルマッサージ。そのあとスチームサウナを受けながら、
「インドでの生活って、なんだか、油まみれだな……」
と思うひととき。食事にせよ、マッサージにせよ、ヘアケアやらスキンケアにせよ、オイルが非常に密接なライフ。
さて、帰りにお向かいのパルシー料理レストランでランチを……と赴いたところ、近所に移転したとの看板が。その新しい店へ、赴いた。
入り口付近のカフェでは、ワッフルやパンケーキ、サンドイッチやアイスクリームなどを食べる人々。以前よりも、店の雰囲気が明るくなり、いい感じ。
買い物の途中のコーヒーブレイクにもよさそうだ。
わたしは軽食でもよかったのだが、夫はパルシー料理が食べたいと言う。店の人によれば、しかし今日は、予約した人しか入れないという。
実は昨日、パルシー(ゾロアスター教)の正月だったらしく、新年の今日、明日は、特別な祝祭料理が出されるため、アラカルトを出してないというのだ。
なんだかおいしそうだよね〜。と話していたら、店主のおじさんが、10分ほど待てば準備できますよ、と言ってくれる。
「全員入れ替わり制」で供されるらしく、全員が食べ終わって次のゲストがダイニングに入る仕組み。結果的には、30分ほども待ったのだが、その甲斐あって、珍しい食事を味わえたのだった。
ちなみに、店主のおじさんは、奥さんらしき女性に、予約を入れていない私たちを入れたことで、気の毒にも叱られていた。
なにしろ、料理の数は限定で、テーブル数も決まっていたのだ。テーブルをカフェから運び込んでの、お手数であった。
その上に、揚げたスナックと、ロティ、それから甘辛チャトゥネが載せられる。
左上がチキン、右上が魚。このチキンのカレーがかなり美味で二人して気に入った。
途中でカスタードプリンのようなデザートが供される。途中で食べるのが「伝統的」らしい。そして最後に、マトンの炊き込みご飯。上には豆で作られたカレーのようなものがとろりとかけられる。
いずれの料理も美味で興味深く。ただ、野菜が全くないのが、難といえば難であった。
さっぱりミルクの風味がよく、おいしかった。
基本、家庭料理が中心の我が家だが、たまには合いの手が欲しい。
それも今までのように、イタリアンやコンチネンタル重視ではなく、最近はなぜか、インドならではの料理を、開拓したい衝動が強くなった。
とはいえ、胃に重いインド料理の外食。食べ過ぎに注意せねばならない。
というわけで、今夜はさっぱり、スープと野菜ですませよう。