そのことは、これまで幾度となく記してきたので触れないが、概要をお知りになりたい方は、ホームページのこの項 (←Click!)を参照されたい。
国民の約80%を占めるヒンドゥー教徒に次いで、イスラム教徒が約13%。
さほど多くないのでは、と思われそうだが、しかし、インドの人口約12億人を考えれば、極めて多い。日本の総人口よりも多い。
我が家から車で5分ほどのところに、大きなモスク(イスラム寺院)がある。現在は、年に一度行われるラマザン(ラマダン)と呼ばれる断食説の最中。
約1カ月間の期間中、信者は太陽が出ている間、一切の飲食物をとらない。水さえも、だ。そのかわり、日が暮れたら、食事ができる。
というわけで、ラマザンの時期となると、モスク界隈には、夕暮れどきからさまざまな露店が並ぶ。
毎年、車窓から、その様子を眺めるばかりだったのだが、数日前の新聞記事を目にして、「食べてみたい」との衝動にかられた。
そこには、ラマザン期間中の食べ物の中でも、最も人気のあるハリーム (Haleem)という料理のことが記されていた。
ムスリム人口が非常に多い、南インドはアンドラ・プラデシュ州のハイダラバード。
ここのハリームが、非常においしいらしい。
ハイダラバードは、幾度か記したが、ムスリム料理である「ビリヤニ(炊き込みご飯)」も美味だ。
特にマトン入りのビリヤニが人気。わたしもハイダラバードを訪れた際、何度か口にしたものである。
さて、記事には、我が家に近いモスク界隈、MMロード沿いの露店でもハリームが食べられるとの旨、記されている。
これは、試してみるしかあるまい。というわけで、夫が出張中で深夜帰宅だった昨夜を好機とばかり、訪れたのだった。
※現在、胸焼け気味、あるいは体調の悪い方は、以下の記事をお読みにならない方が賢明です。
まずは目的のMMロードを訪れる前に、交差するモスクロードへ。ここにある、老舗のパン屋、ALBERT BAKERYでパンを調達するためだ。
夫が同僚から勧められて以来、折に触れて仕事帰りに買ってきてくれている素朴パン。写真はこちらに記録している。
モスクロードに面した小さな店構え。
年季の入った看板が、ムンバイのYAZDANI BAKERYを思い出させてくれてうれしい。
この店もムスリムの経営だということは、店内の壁を見ればわかる。
訪れた時にはお客でいっぱいだったが、少し人が引けた時に、
「写真を撮ってもいいですか?」
と尋ねたら、どうぞどうぞと歓迎してくれる。
と、老齢の男性が、
「彼が現在の店長なんですよ。わたしの息子なんですがね。彼の写真を撮ってやってください」
右下の赤いシャツのお兄さんが、その店長さんだ。右は母親。左はお兄さん(店を継がなかったのか?) ともあれ、家族経営の店である。
夫がお気に入りのブルン・ブレッド (Brun Bread)とローフを購入。それから、素焼きの壷に入った甘いヨーグルトも。他にも、お菓子やサモサなどのスナックなどがある。
見た目、どれがおいしいんだか、さっぱりわからないが、地元の人からの評価も高いので、次回はスナックやスウィーツ類に挑戦してみたい。
パン屋からMMロードへ向けて歩く。夜になると、たいそう込み合うので、日没前の探検が好機なのだ。
まずは交差点のすぐそばの露店で写真を撮らせてもらいつつ、スナックについての質問を。
たとえばこのお兄さんが作っている串焼き。てっきりマトンかと思いきや、「ビーフ」だとのこと。真ん中で揚げ焼かれている丸いコロッケ風はマトンらしい。
新聞記事には「ミート」とはあったけれど、ビーフの文字は一つもなかった。
わたし自身、クリスチャンがビーフを食べるのは知っていたが、ムスリムの人たちは「主にマトンを食し、ポークは絶対に口にしない」という程度の知識しかなかった。
サモサ、パンのフライ、それに南インドのスナック、ワダ。ローカルフード探検隊レポートをお読みの方なら、すでにご存知であろう。
ワダ (Vada)は、わたしの好みのスナックである。
まずは露店の通りをざっと歩いて写真撮影をすませ、そのあと、スナックを購入して持ち帰ろうと思っていたのだが、揚げたての魅力に、いきなりやられる。
ワダを一つ(5ルピー/約10円)を買い求めて食べたところ……。
おいしい! 揚げたてほくほく、おいしい!
サモサも食べたい衝動に駆られるが、我慢我慢。
これは、サモサを揚げる前の図。具も、チキン入り、オニオン入り、ポテト入りとあれこれあるようで、見た目が同じでも味は微妙に異なるのだ。
これはチキンが巻き込まれた春巻きらしい。店のお兄さん、おじさんたち、みな愛想がよく、フレンドリー。質問にも笑顔で答えてくれる。
「あなたはどこから来たの? コリアン?」
などと声をかけられつつ。
たった一軒を見ただけで、「油まみれな気分」に陥る。が、油パラダイスは、まだまだ序の口なのであった。
ゆで卵に衣を付けて揚げているの図&パンを揚げる前の様子。間に何かが挟んであるが、それが何なのかを確認し損ねた。
高校時代、学内の売店でよく買っていた「カレーサンドイッチのフライ」を思い出す。カレーを挟んだ食パンを揚げたもの。
思えば超高カロリーなものを、よくもまあ、男子並みに、がつがつと食べていたものだ。
そもそも日中、一切の飲食物をとっていないにも関わらず、いきなり揚げ物を口にしたのでは、どう考えても胃腸に悪かろう。
この時期、新聞記事のコラムなどでも、「ラマザン中の食事のとり方アドヴァイス」のようなものがある。
それにはやはり、まずはスープやフルーツを摂取せよ、いきなりスナックや肉類を食べるのを避けよ、といった旨が書いてあったが、この光景を見る限り……どうなんでしょう。
「何を売ってるの?」
と尋ねると、丁寧にひとつひとつ、教えてくれる。その姿を、うしろに座っている親父らしき男性が、見守っている。
「あなたの写真を撮ってもいい?」
と尋ねたら、少年は振り返って、親父の顔色を伺う。親父は「撮ってもらえ」のゼスチャー。と少年は、緊張の面持ちで、カメラを見つめる。かわいい。
右上のお兄さんが焼いているのも、ビーフだとのこと。
左上は、な〜んか見るからにおいしそうに見える揚げパン。高校時代の思い出のせいか。右上は鶏のもも肉。スパイスでマリネして、タンドールで焼いたもの。
右上のお兄さんは、ビリヤニ(炊き込みご飯)をパックに詰めているところ。
各種、串焼きバーベキュー。見た目、焼鳥風。ちなみに料理は、購入時に二度揚げ、二度焼きしてくれる。
ペラペラに伸ばした小麦粉の生地で何かを包んで揚げ焼いているところ。何を包んだかは未確認。なにしろ、なみなみの油が見るからにデインジャラス。
若干、距離を保ちたい。
このあたり、引火したら大炎上だな、猛烈に燃え盛るだろうな。などと恐ろしいことを想像して、恐ろしい。
左上のパックに入っているのがそれ。マトンかと思いきや、この店のハリームはビーフ製。右上は鶏のもも肉。
この日、最もクールな風情だった「地獄の釜の番人」。いや、料理人。これは何なのか。尋ねても、なんといっているのか聞き取れず。
これが6〜8時間煮込んで作るハリーム?
おっと、こちらの店にもハリームの看板が。が、先ほどとは違って、マトンとチキンのハリームが売られていた。が、右上の肉は、またしてもビーフ。ダイナミックに、おいしそう。
いい加減、揚げ物、肉物にぐっと来始めたころ、今度はスウィーツが。甘いヨーグルト、ミシュティ・ドイや、チャムチャムなど。
これらは甘いお菓子。甘いうえに、揚がってます。ある意味、最強。
かと思えば、また重い! これもまた、興味深いが胃腸にパンチを食らわしそうな食べ物だ。
とまあ、かくなる次第で、屋台群を一巡した後、夕飯に少しずつ、気になった食べ物を購入したのだった。
ちなみに左上がモスク。右上は、「火事?!」のごとき、煙に包まれた店。
なんかもう、大変だ。
そしてこれらが、購入した商品。少しずつ、味見をすると、これが、予想以上にうまい!
それでもって、やたらめったら、ビールに合う!!
ムスリムの人々はアルコールを嗜まないが、そら勿体ない話。っていうくらいに、ビールが合う。
サモサは皮が重くて今ひとつだったが、それ以外、ビーフもチキンも、歯ごたえがあっておいしかった。それからハリームは、謎の味。
パンに付けて食べるとおいしい。チキンとビーフを買ったが、ビーフの方がおいしかった。
実は今日、夫の弁当に、残りのハリームや牛肉を少しずつしのばせていたのだが、
「あの肉、どのレストランの料理? おいしかった〜!」
と お気に入りの様子。
レストランじゃないのよ。屋台なのよ。
ともあれ、これはラマザン中、何度か利用するに限る。今日の夫のランチのように、たっぷりの蒸し野菜やサラダなどと共に、肉を少量添える食べ方をすれば、さほど重くもならない。
食を通して、異教徒の人々の慣習が、少し身近に感じられた一日であった。楽しかった。
【おまけ動画】
ドライヴァーが来るのを待つ間、交差点の様子を、カメラの動画で何気なく撮ってみた。家に帰ってしみじみ見るに、面白いのでアップロードした。
だいたい、こんな大きな交差点でも、まともに信号が機能していないのだ。信号はあるけど、黄色が点滅しているだけだし。
それでも、みんな「あうんの呼吸」で交差点を通過しているのよね。おまわりさん、立ってるけど、あんまり仕事してないし。
交通ルール、ないし。
★
せっかくだから、ナレーション入りも、載せておく。もっと気の利いた動画を載せてはどうか、とも思うが、取り敢えず。
これが、インド生活の日常の欠片。音と動きがあるだけで、写真では伝わらない喧噪が、お届けできるかと思う。
ってか、改めて、客観的にこの光景を見ると……ほんと、よくこんな道路インフラで世間が動いているよな、という感動というか、笑いがこみ上げて来る。