イワシが、こんなにもすばらしい食材だったとは……。このイワシがしばしば手に入ればいいのに……と、思わざるを得なかった水曜の夜。
今週は夫が出張中につき、自分の自由時間がぐんと増える。先週末、働き組女子と、男組加入予定の男子とで、食事をしようということになり、そうであれば他のシングル男組も招いて拙宅で夕餉を、という運びとなった。
当初6人参加の予定が4人となり、直前に7名に増えるという展開はあったものの、用意していた料理は少し余る程度ですみ、実に幸せな晩餐であった。
復習であるが、この日の朝、アンチョヴィーを軽く100以上さばいたあと、ローカルフード探検部へと出かけた。そして夕刻より、夕餉の支度である。実に「食まみれ」の一日だったといえる。
朝、捌く時間がなかったので、帰宅早々、イワシを取り出す。すでに朝よりも鮮度が落ちているが、仕方ない。
ネットでレシピを調べたところ、「イワシの蒲焼き」が目に留まり、それが非常に簡単ながらもおいしそうだったことから、作ってみることにした。
捌く時に身が崩れて、なかなかきれいに整えるのは難しかったが、それでもなんとか骨も取り除く。それらをしっかりキッチンペーパーで水分を拭き取って、冷蔵庫に入れておいた。調理は、食事の直前に、である。
本日のゲストは、「日本の家庭料理に飢えているに違いない面々」ばかりなので、素朴な日本の味を作ることにした。
おむすび。我が家の貴重な日本米(毎年ニューヨークで調達する田牧米ゴールド)を、いつものルクルーゼの鍋で炊く。
卵焼き。茅乃舎の和風だし汁を少し加え、砂糖、塩、しょうゆ、酒で味付け、風味豊かにやさしい味にした。
超、疲労困憊っぽい男組メンバーがいたので、身体を癒しまくるチキンスープを。ここでもしばしば書いているが、米国において、風邪をひいたときに口にするのは「チキンスープ」なのだ。日本のお粥に該当する。
鍋でじっくり数時間煮込む。ショウガ、塩、しょうゆ、バルサミコ酢で味付け。
オーガニックの新鮮キャベツを買っていたので、サラダ。オリーヴの実とアンチョヴィー(これは缶詰)でシンプルな味。
味噌漬けにしておいた豚バラ肉と、ナス&ピーマンの炒め物。この野菜も収穫したてのオーガニック。コクのある風味に。
そして食事の直前に、冷蔵庫に寝かせていたイワシを取り出し、小麦粉をまぶして、オリーヴ油で炒める。
最後に、しょうゆと砂糖、酒、水を混ぜたタレをざっとかけてなじませて出来上がり!
これが、予想以上においしかった! というのも、このイワシ、適度に脂が載っていて、魚自体がかなり美味なのだ。捌いているときに、手が脂で少しヌルッとしたくらいに。
おにぎりではなく、熱々のご飯に載せて丼にしたいくらいだった。
このイワシもまた、freshtohome.comで買ったが、いつも売られているわけではない。この数カ月のうちで、初めて目にした。次に販売されたらまた、即、購入である。
どれもこれも、お腹にやさしくおいしかった。参加者も喜んでくれ、やったらくつろいで語り合い、気がついたら日付が変わっていた。
夫が出張なのをいいことに、ずいぶんなくつろぎっぷりである。
実は、前日、セミナーの参加者向けに焼いたロールケーキが、ジャガリを使ったせいでフワフワ感に欠けていたのが納得できず、翌日、正しい砂糖を購入して、また焼いた。なんとなく、ふんわりを焼きたかったのだ。
が、基本、1ロール12人分。参加者5、6名に比して多すぎるから、半量で焼こうかとも思った。が、余ったら誰かが持って帰るだろうと思い、やはり多めに焼くことにした。
と、散々、夕飯を食べておきながら、男子1名とわたしが、2センチほど、と通常サイズだったのを除き、残る5名は、「分厚ければ厚いほど」というリクエスト。
一同、ロールケーキを食べる時には一斉に静かになり、味に集中して食べてくれていたのが、面白くもうれしかった。カニを食べる時に無口になるのとは少し違う、味に専心する感じ。
平日の夜だというのに、5時間ほども、飲んで食べて語って、笑って騒いで、やっぱり、おいしいごはんと、楽しい会話は、人を元気にしてくれるということを、しみじみと思う。
いっそ、仕事に追われて料理を作る余裕のないJAPANESE EXPATS向けに、食堂でも開きたくなってくる。夫は以前から、店を開けばいいのに、と言っているが、そうなったら本業がなんだかわからなくなってしまう。
わたしは料理人でもないし、多くのレシピをしっているわけでもないし、あくまでも、我流である。が、いつか、そういう企画を小さく実現するのもいいかもしれない……と、ふと思う夜であった。
なにしろ、食べたように、生きているのだ。我々は。