先日ケララを旅した際、バックウォーターでムール貝が養殖されている光景を見た。そもそもムール貝とは、非常に繁殖しやすい貝類だと聞く。気候条件などが合えば、収穫するに難しくないのかもしれない。
毎度おなじみFreshtohome.comで、たまにムール貝を見かける。今回は2度目の購入。小ぶりで身も小さいが、それなりに、美味である。
ムール貝といえば、25年前のベルギー取材を思い出す。日本で旅行誌の編集者をしていたころ。世界各地を車で旅する取材の一環として、ベルギーを選んだ。小さなベルギーは、車でぐるりと一蹴するのに、非常に適した国でもあった。
小さいながらにも、まるで宝石箱のように、異なるさまざまな魅力が鏤められていて、欧州の中でも最も好きな国の一つだ。
ベルギーはまた。食が豊かな国であり……。ソースを多用した伝統的なフランス料理、ワッフル、チョコレート、ビール……。語ればきりがなく。
ムール貝もまた、ベルギー名物のひとつ。特に9月から4月にかけてが美味とされている。バケツのような大鍋に、山盛りのムール貝。一人分が1キロ程度、とも言われている。そのムール貝をそれをポムフリット(通称フリッツ)、即ちフライドポテトと一緒に食す。最初にその料理を食べた時には、そのおいしさに、本当に感激した。
ベルギーでは、間違ってもポムフリットを「フレンチフライ」と呼んではいけない。なぜならベルギーは、ポムフリット発祥の地、だからだ。フランス料理の起源さえ「ベルギーにある」という人もいたくらいであり、隣国に自国の伝統を持っていかれたくない、のである。
ベルギーのフリッツは、本当に、おいしい。パンのかわりに、フリッツとムール貝を食す、という感じだ。その二つの取り合わせは、もはや「ごはんと味噌汁」くらいの定番ではないかと、旅をしている間には、思われた。
ちなみにムール貝にもいくつかの調理法があるのだが、わたしはガーリックバターに白ワインで蒸したものが好き。というわけで、ベルギーのムール貝にはほど遠いが、同じ味付けで調理した。
30歳でニューヨークに渡り、その直後に夫と出会い、以降、彼とは、あちこちを旅した。わたしが20代に旅した欧州で、よかったところ、行きそびれたところなども、一緒に訪れた。
ベルギーはまた、彼とともに一緒にぐるりと一周旅した国でもある。当時はまだ、彼が運転免許証を持っていなかったこともあり、わたしが運転、彼がナビゲーションを担当したのだが……。地図を読むのが苦手なインド人。車の中で、どれほどバトルとなったことか。
今となっては、彼が地図を読めないことが、痛いほど、よくわかる。
そんなあれこれも懐かしく。地元の人たちに倣い、貝殻をピンセットのようにして、身をつまんで食べながら、今や遠い過去となった旅の記憶をたどりつつ、ムール貝。そろそろ欧州旅情が飽和状態だ。
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左上:トマトとアスパラガスのソテー
左中:エアフライヤーでポムフリット
左下:イワシの骨をフライ(身は猫らの餌!)
このごろは、猫らの餌が贅沢&ヘルシーすぎて、もはや紹介するのさえ恥ずかしい。飼い主バカすぎて。