「捏ねないパン」の噂は聞いていたが、試したことはなかった。しかし、この1冊の本を読み終える前に、わたしはキッチンに立っていた。そして焼いた。衝撃的だった。なぜ今まで、捏ねていたの?
先日のデリーで繁田女史から、そのわずか3日後、わたしたちが出会う契機となった十年来のクライアントN女史から、同じ本を勧められた。キャスリーン・フリン著『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』。同じ本を別の人から同じ時期に勧められる奇遇に、これは読むしかないと、Amazon.jpから注文したのだった。
結論から言えば、この本はわたしにとって、あまりにも「ビンゴ!」であった。
「丸鶏を調理することの意味」や、「残り野菜でのスープ」の記述に始まり、「詰め込まない冷蔵庫」「加工食品やインスタント食品を避ける」「低脂肪、ノンファットはむしろよくない」「オイルや塩、バルサミコ酢、醤油など、調味料は良質のものをこまめに購入」「天然のスパイスを使う」「日本のカレールーは添加物だらけ」「加工食品を買うときには原材料名をチェックせよ」「料理は難しくない」といったあれこれが、料理のプロの視点から描かれていて、ひたすら頷きながら読んだ。
映画『フード・インク』の描写もあり。ジュリア・チャイルドやジェイミー・オリヴァーに対する「感じ方」も共通しており。
わたしは「こだわり」という日本語が好きではない。だから自分をして「食にこだわっている」という風にも形容したくない。人間が地球の一部として、自然なものを口にする古来の食習慣に、「柔軟な姿勢で」立ち返るべきではないか、というライフスタイルだ。「過去へおいしく回帰」することこそ、人間の心身の健康が保たれるということを、インドでの食生活を経て殊更に、実感している。
たとえば丸鶏。日本では高価だが、インドではヘルシーなケミカルフリーのものでも1羽500円もしない。この本を実践するのに、インドはあまりにも好適すぎる。アーユルヴェーダの教えも浮かんでくるこの本。インド駐在の人たちにも、ぜひ一読してほしい一冊だ。
さて写真は、先ほど焼いた「捏ねない」パン。2度目の今回は、焼き時間などを少々変えてみたところ、皮はパリッと香ばしく、中はしっとり柔らかく、好みの味わいに仕上がった。素材はMAIDA(精製小麦粉)、シーソルト、イースト、ぬるま湯。今度はMAIDAのかわりにATTA(全粒小麦粉)でヘルシーパンを焼いてみよう。
これからも、この本の描写を参考にしつつ、手早く簡単、健康的でおいしい日々の食卓を目指そうと思う。この本を勧めてくれた二人に感謝!