先日購入した「ゴールデン・ミルク・マサラ」を試してみた。マサラチャイをおいしく仕上げるコツは、スパイスのバランスもさることながら、「牛乳のクオリティ」による。以前は近所の商店で購入していたが、昨年からは、オンライン・スーパーマーケットのBigBasket.comが、毎朝、決まった商品を宅配してくれるBBDailyというアプリによるサーヴィスを利用している。
前日の夜10時までに予約すれば、翌朝届けられる。取り扱う牛乳の種類も豊富で、オーガニック、A2タイプ(お腹がゴロゴロしない)、スキムミルク、バターミルクなどさまざま。
最近でこそ、ボトル入りで殺菌済みの牛乳も普及しはじめているが、インドの牛乳の主流は「ビニル袋入り」で、自宅で煮沸が必要。煮沸するのは面倒だが、個人的には、こちらの方が断然おいしいと思う。チャイやミルクコーヒーはもちろん、プリンやムースを作ったり、シチューを作るにも、濃厚な牛乳はいい味を出してくれる。
写真の鍋は、ミルク煮沸用。二層式になっていて、注ぎ口から水を入れ、本体に牛乳を注ぐ。外側の水が沸騰すると、その際にホイッスルが鳴るので、吹きこぼれを防ぐことができるという優れものだ。
防腐剤が使われていない牛乳なので、購入したらすぐ煮沸し、一両日中に消費するのが理想的。最初はほの甘くておいしい牛乳が、日を重ねるにつれ、風味が落ち、やがて苦味が出て、腐敗……というプロセスをたどる。
なお、暑い季節は腐敗が早く、加熱したときに、ヨーグルトのように分離する場合がある。それは明らかに腐敗している証拠なので、処分されたし。なおBBDailyは、カスタマーセンターにメッセージを送ると、即返事がきて払い戻ししてくれる。仕事が異様に早い(写真参照)。
かつてBigBasketの創業者夫妻とパーティで話をしたが、彼らがカスタマーセンターに重きをおいていることなど聞いていたこともあり、納得のサーヴィスだ。BBDailyは、野菜や果物、パン、スナック菓子のほか、インドらしくプージャ(儀礼)の際に使う線香や花なども販売している。
*ヨーグルト(CURD)もビニル袋に入っているものがあるので、牛乳と間違えないよう要注意。写真の赤いパックは、素焼きポット入りともどもヨーグルト。
ところで、インドの乳業を語る時に欠かせないのは、乳製品大手Amulの存在。印パ分離独立の前年、1946年に、グジャラート州アナンドにて創業された。アナンドは、英国統治時代のムンバイに生乳を供給する一大酪農地だったが、当時の植民地政府は、私的独占企業に集乳権を許可していたことから、酪農家たちは不当に搾取されていた。
諸々の経緯を経て、当時、グジャラート州の地方政治家だったT. パテールの尽力などもあり、アナンドの酪農家たちによる酪農協同組合が組織された(白い革命)。
個人的にはインド移住当初から、Amulガールが主役のアムールの広告が大好きだ。特にムンバイに住んでいたころは、週に一度、水曜日に刷新されるアムールのビルボード(看板広告)を見るのが楽しみであった。
インドだけでなく、世界の時事、トレンドを素早すぎるほど素早くキャッチして、広告にするのである。ダジャレ風コピーもウィットに富んでいて、面白い。尤も、ヒンディー語がわからないわたしには、解説をしてもらう必要がある広告も多々あるのだが、それでもなお、楽しめる。
この本は、2012年に販売されたもの。アムールの50年に亘る広告史のダイジェスト版である。この本をめくれば、インドのトレンドや時事問題が垣間みられて非常に面白い。仕事でも活用させてもらってきた。現在では、インスタグラムやFacebookなどソーシャルメディアで、アムール・ガールに出会うことができる。
写真のドーナッツは、先日記した老舗トムズ・ベーカリーの定番。インドにいながらにして、「昭和の懐かしい味」がするドーナッツ。過去8年間、毎週金曜日に拙宅をオープンしてミューズ・クリエイションのメンバーが集っていたが、お茶の時間は毎週のようにお菓子を作っていた。しかし、多忙な時などは、このドーナッツや、ムンバイはJUHU初のNATURALのアイスクリームを出したものだ。
このドーナッツ。10年以上前は1つ10ルピーだったのが、今は15ルピー。物価高騰著しいインドにおいて、未だ15ルピーはいかにもお安い。トレンドに流されない、地に足がついた商売だなと思う。夕方になると、学校帰りの制服姿の子どもたちが、おやつを買いに来るのもこの店。ほかにもマフィンやパウンドケーキ、サモサなどスナックやサンドイッチなどもたくさんあって、庶民のニーズに応えている。
チャイとドーナッツのことを書きたかっただけなのに、付随するあれこれが多すぎて、今日も今日とて記録が長い。後日、この記録は追加情報も併せてブログに転載する。関心のある方は、後日ご覧いただければと思う。