インド共和国記念日だった1月26日。毎年この日は好天のバンガロール。雲ひとつない青空、陽光が心地よい午後、ミューズ・クリエイションの学生メンバー5名とともに、「野外活動」を実施した。既述の通り、わたしは昨年10月より週に一度の割合で、日本からのインターン生に諸々を伝授している。しかし、せっかく同じ時間を提供するならば、彼女一人だけでなく、他に関心のある若者にも参加してもらう方が有意義だと考えた。彼女にとっても刺激になるし、互いに切磋琢磨できる。かような背景からミューズ・クリエイションのWhatsAppコミュニティから「ACT MUZ」の参加者を募り、活動を開始している。
ミューズ・クリエイションで実施する慈善団体訪問では、貧困層の人々の暮らしや実態の片鱗を学ぶことができる。ゆえに今回は、学生だけでは行くことのできない場所を含め、市街中心部の「物語性がある場所」を巡った。行く先々で、歴史的な背景や特徴など、ガイドブックや書籍などでは得られない情報も提供した。
訪問先の概要はインターンの入江さんに、そして当日の感想は参加者全員に提出を依頼。たとえ短い文章でも、学生たちのリアルな声は、今後、誰かの参考になるに違いない。
以下、ひとまずは訪問先の概要を記載する。この項に関しては、客観的かつ正確な情報が望まれるので、入江さんのレポートを参考にしつつも、坂田が大幅に加筆修正した。昨今では、英文ホームページの情報を自動翻訳して構成することも可能だし、さらにはChat GPTを利用すれば、文章力を研磨する必要がなくなるかもしれない。それでも、アナログな表現力を重視する者としては、自ら手を加え再構成したい。そもそも英文と日本文では、文章の構成自体が異なるがゆえ、そのままでは違和感がある。文章力の向上も望んでいる彼女にとっては、編集者(わたし)による校正自体も勉強になるがゆえ、長文だが記載する。(写真はバンガロール・クラブ)
【バンガロール半日観光(12:30〜6:30 pm)訪問先リスト】
The Bangalore Club(社交スポーツクラブ)
Noritake(陶磁器店)
Ananya (ファッション)
Amrapali (ジュエリー)
Beruru / The Purple Turtles (ガーデン&インテリア)
Ritu Kumar(ファッション)
Nicobar(ライフスタイル)
UB City(複合商業施設)
Taj West End Hotel(高級ホテル)
RainTree / Anokhi(ブティック)
KingfisherTower(友人宅訪問)
① The Bangalore Club
バンガロール・クラブは、英国統治時代の1868年、大英帝国将校らのために英国によって設立された、インドで最も古い社交クラブの1つ。ウィンストン・チャーチルはじめ、社会的ステイタスのある人々によって構成されてきた。
バンガロールの中心部、15エーカーの美しい緑に囲まれたクラブは、そもそもが社交スポーツクラブとして誕生していることから、プールやテニス、バスケットボールやスカッシュなどのコート、ジムなどを完備。その他、バンケットルームや、バー、宿泊施設、各種商店、図書館などを備え、一つの街のような機能を果たしている。またクラブ内でのイベントも充実しており、会員同士の交流も豊かだ。
現在、バンガロール・クラブの会員になる条件は厳しく、そのケースにもよるが申請から15年〜30年待つ必要がある。坂田マルハン夫婦がメンバーになれたのは、1970年代に会員となった義父ロメイシュのおかげ。我々のインド移住直前に、煩雑な手続きを経て家族会員に申請してくれた。その約10年後、夫は正会員に、わたしは伴侶会員になれた。会員は最大6名のゲストを招待可能。ゆえに、これまでも、多くのクライアントや友人知人らをお連れしてきた。
UB Cityは、バンガロール拠点の不動産大手「Prestigeグループ」との合弁事業でUBグループによって2008年に誕生した、バンガロール最大の複合商業施設。バンガロール中心部に広がる自然美豊かなカボン・パークに隣接する一等地に位置する。グローバルな高級ブランド店や飲食店を擁するショッピングモールをはじめ、オフィス・ビルディング、高級サーヴィス・アパートメント、高級アパートメント・ビルディングなど6つのブロックで構成されている。
以前、この場所には英国統治時代に作られたビール工場があった。1947年の独立後、当時22歳だったヴィッタル・マリアに継承されてのちは、インドのビールの代名詞でもあった「キングフィッシャービール」が、ここで生産されていた。
③Taj West End
タージ・ウエストエンドの歴史は、1887年、英国人女性ブロンソンがベッド 10 床の下宿から始めたバンガロール最古の宿「ウエストエンド」に遡る。英国植民地時代、英国の高官やその家族のための避暑地として利用されていた。1984年、タタ・グループの傘下であるタージ・グループ・オブ・ホテルズの一部となり、「タージ・ウエストエンド」と改名された。ガーデンシティと呼ばれていた往時の面影を今に残す、緑豊かな美しい庭園。そしてエレガントなコロニアル(植民地)様式の建物が特徴的だ。
④RainTree
英国統治時代、富裕層の居住地として一般的だったバンガロー(Bungalow)。樹木に囲まれた広大な庭を擁する平屋の一戸建て、コテージのような建築物だ。年中温暖な気候のバンガロールとはいえ、4月から5月にかけての盛夏は気温が上がる。しかし、木陰は涼風が流れ込み、低層の建築物は日差しを受けにくく快適なのだ。ゆえにバンガロールは従来から「ガーデンシティ」「エアコンシティ」と並び称されてきた。
このRainTreeは、19世紀に建てられたバンガローを改築して造られたマルチ・デザイナーズブティック。洗練されたデザイナーズファッションやジュエリー、インテリア小物を扱うほか、ジャイプール拠点のブランドAnokhiの支店もある。敷地内にある、大きく枝葉を広げた巨木レインツリーがシンボルだ。ちなみにレインツリーとはモンキーポッド(学名:Albizia saman)の別名で、日本では日立のコマーシャルでおなじみ「この木なんの木、気になる木」の、あの木である。