昨日は、ミューズ・クリエイションのメンバーと共に、またしてもショッピング・モールへ。わたしのコーディネーションでモールを探検することになっていたのだ。参加者は、学生3名、駐在員夫人5名、女子(10歳&5歳)、わたしの計11名。ちょうどいい人数だ。
目的地は、昨年終盤に開業したバンガロール最大のショッピング・モール「Phoenix Mall of Asia」。わたしは、開業の直後に一度訪れたきり。当初は半分程度の店舗しかオープンしていなかったが、現在は高級ブランドのフロアを除き、大半が稼働している。ショッピング・モールにありがちなフードコートだけでなく、独立店舗の飲食店が充実していることでも評判だ。
異国で買い物をするに際しては、ブランドや商品の知識がないと、何を選んでよいかわからないケースが多々ある。生鮮食品の品目にさえも、予備知識の有無によって食卓の豊かさが変化する。まずはスーパーマーケットを巡った後にランチ休憩、その後、モール内の店舗を巡ることにした。
ツアーを開始する前に、約10分ほどインドの消費市場の変遷を説明。買い物に関心があるという10歳の女子にもなるたけわかるように、歴史を含め、概略を説明する。
①1947年のインド・パキスタン分離独立以来の社会主義的政策と商品の傾向
②1991年の市場開放、自由経済による外資の流入(ソビエト連邦の崩壊と資本主義世界への移行)
③IT都市としての、2000年ごろからの急速なバンガロールの都市化
④2005年ごろから増え始めたショッピングモールとその構成の変遷
⑤「インドならでは」の価値観が反映されたブランド、人気商品の傾向
……と、要約すると堅苦しい印象だが😅 このあたりをわかりやすく説明した後、スーパーマーケットの探検開始。午前中とあって、祝日ながらも人は少なく、広々とした店内をゆっくりと巡る。みなさんからの質問に答えつつ、わたしのお勧めの商品などもあれこれと紹介。気づけばあっというまに2時間が経過。そこからイタリアン・レストランでランチ。わたしはマッシュルームとクリームのフェットチーネを(クリーム&塩分控えめで)注文したのだが、パスタも味付けも、想像以上においしかった。
店舗巡りは、フロアごとに攻めていく流れに。ファッション、コスメティクス、ジュエリー……と、あらゆるジャンルの店が並ぶ中、特筆すべき店のバックグラウンドや特徴を次々に紹介、お勧めのブランドは店内に入り、商品など具体的に説明する。今回は、途中で自由解散としていたので、子どもたちは早い段階で離脱かな……と思いきや、10歳のお嬢さんが好奇心旺盛で、スーパーマーケットでもコスメティクスのショップでも、なかなかに的確なコメントを発していた。大人もさることながら、子どもたちが偏見なく審美眼を養っている様子を見るのは、非常にうれしいものだ。
ちなみに5歳のお嬢さんは、男子学生の一人をロックオン💘。ほぼ「初デート」状態で、楽しそうだった。11時集合で、気づけば5時近く。解散後も、自分の買い物などをして、すっかり長居をしてしまった。もう一人のインターン大学生も、購買意欲に火がついたとのことで、8時ごろまでモールで過ごしたという。みな、とても有意義な時間を過ごせたと思う。
我々夫婦がバンガロールに移住直後の2005年11月時点。大型ショッピングモールといえば、2004年創業のForum Mall (現Nexus Mall)とBangalore Central、2005年創業のGaruda Mallの3箇所だけだった。消費市場が大きく変化を遂げ始めた当時から10年ほどは、日本の広告代理店やメーカー、リサーチ会社などからの依頼による、バンガロールはじめ、各都市の視察コーディネーションや市場調査の仕事が多かった。
また、1991年の市場開放以降のインドのトレンド年表を作成するという一大プロジェクトに関わり、相当な時間とエネルギーを投じて情報収集をし、膨大な資料を作成した。ゆえに、移住後の20年間はもちろんのこと、それ以前の情報を把握していることから、いつでも過去の事例を引き出すことができる。今となってはそれら過去の仕事の経験が、すべて宝となっている。
しかしながら……。残念なことに、日本企業の多くは、視察やリサーチに時間や予算を投入しないのが一般的。さらには止むを得ないことかもしれぬが、「現在のトレンド」だけを追いがちだ。そこには大きな落とし穴がある。
インドに限ったことではないが、「点(現在)」ではなく「線(歴史/過程)」を見なければ、多くを見誤る。社会的な背景や、文化、習慣を知ろうとしなければ、同じ場所にたとえ100回足を運んでも、インドに何年住んでも、本質を見抜けない。わたしとて、約20年住んでなお、情報の更新や軌道修正はフレキシブルに行っている。昨今ではもう、トレンドを追うことすら不可能なほどに「新しさ」が怒涛のように押し寄せる日々だ。ともあれ、持ち得る自分の知識や経験値を今後ももっと活かしたい、足腰が元気なうちは、視察コーディネーションの仕事も積極的に継続しようとの思いを新たにした一日でもあった。
ところで、店舗の看板に併記されているカンナダ語についても、背景となる物語がある。かつてYoutuber眞代さんとのコラボレーション動画で語ったので、シェアしたい。
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