昨日は夫が1泊でムンバイ出張。久しぶりに、夜まで羽根を伸ばしたい気分だ。
先日、なにげなく結成した「ローカルフード探検隊」。現在、わたしを含めて隊員3名。明日金曜日のランチが、初回の探検となる予定だったが、急遽打診。
お二人とも予定が空いているとのことだったので、さらには「ゲスト1名」をお誘いして、以前から気になっていたマンガロール料理の店、MANGALORE PEARLへと繰り出したのだった。
この店のシーフードがおいしいと、ローカルの人々に評判なのだ。
場所は我が家から車で5分ほど。こんな近くにありながら、来たことがなかったとは、どうしたものか。
最近、改装したばかりなのだろうか。
壁に描かれた絵も真新しく、とても楽しい雰囲気だ。
ところでローカルフード探検隊について、ちょっと書き留めておきたい。
このたび、ホームページMuseIndia.Infoを立ち上げ、レストラン情報などを整理するにあたり、自分がいかに、土地のインド料理を食べる機会が少ないかに気がついた。
インドの食材を用い、フードマイレージの低い食生活を心がけてはいるが、外食は比較的少ない。食べるとしても、イタリアン、コンチネンタルなど、非インド料理が多い。
ムンバイ在住時は、ひとりで「グジャラティターリー(定食)」食べ比べをしたり、未知なる「パルーシー料理」に挑戦したり、あれこれと楽しんでいたのだが、バンガロールではそういう衝動がなかった。
結果、今になって「敢えて食べに出たい」という気持ちが芽生えたのだ。
今のところ、ローカル食に積極的な友人2名が隊員として参加してくれることになった。
以下、ローカルフード探検隊のコンセプトだ。
【主旨】
南インド各地で、古くから食されてきた、土地の食材、調理法に基づいて作られた料理を味わう。胃袋から、南インドの生活に触れる。庶民が訪れるローカルな店が対象。
【資格】
・胃腸が強い。
・料理を右手で食べられる。
・好き嫌いが少ない。
・食のストライクゾーンが広い。
・男衆に囲まれての食事に抵抗がない。
・写真のネット流出ノープロブレム。
【条件】
・現地のマナーに則った作法で食事をする。
・どんな食事でも、感謝の心を忘れずにいただく。
・万一の場合、「まずい」ではなく、「口に合わない」と表現する。
といったところだ。
さて、店に到着したら、U-KO隊員が、すでに到着していた。日本から帰国したばかりの彼女、日本で食べ過ぎて増量したと言いながらも元気そうだ。
聞けばこの店、U-KO隊員のご主人が、ローカルスタッフと共に「週3で」訪れているという行きつけの店らしい。来すぎやろ! と内心思うが、お勧め料理情報なども得てくれているようで、頼もしい。
メニューを見ているうちにも、隊員1号のPAKAKOさん、そして、本日のゲストであるH美さんも到着。H美さんに、
「料理、手で食べられる?」
と尋ねたところ、「食べません!」と即答される。
更には、入隊希望の様子がまったく見られなかったことから、あくまでもゲストとして、「第三者的意見」を仰ぐことにした。
ということで注文したのがこちら。
Cocoom Juiceというこれ。
Bindaan もしくは Punar Puliと呼ばれる果実の皮で作られているという。
のっけから、なんのこっちゃ、わからない。
が、飲んでみれば、「アセロラ?」みたいな風味で、なかなかにいける。
帰宅して調べたところ、コカム (Kokum) という名が一般的のようである。
このジュースは、消化を促進するほか、虫さされや日焼けなどによる皮膚疾患にも効果があるらしい。インドの西部沿岸、ゴアなどの地域で愛飲されているようだ。
昼間ならまだしも、夜。ここはビールでもぐっといきたいところだったが、メニューにはない。鮮やかなコカムジュースで乾杯だ。
一皿が70ルピーから200ルピーとお手頃価格なこともあり、あれこれと頼んでみることにした。メニューは幅広い選択肢。料理を選ぶ隊員らの表情も真剣だ。
ゲストのH美さんにいたっては、博学なドライヴァーに電話をして、お勧めの料理を尋ねる意気込み。隊長(わたし)を上回る熱意ではないか。
魚、貝、イカ、カニ、エビなどの魚介類をはじめ、卵、鶏肉、マトン、豚肉、そして主食(ライス)、野菜の順で料理名が並ぶ。
・Khubey Sukkah(スパイシーなココナツ風味のアサリ)
・Pork Sorpatel(マンガロールならではのスパイシー&サワーな豚肉)
・Crab Curry(カニのカレー)
・Pomfret Curry(ポムフレットのカレー)
・Prawn Fry(エビのフライ)
というヴァラエティ豊かな構成だ。
左上は、米の粉を原料とした主食の数々。隊員が掲げているのは、Sannasと呼ばれる柔らかなIdly(イディリ)で、イーストで発酵させたもの。
南インドの朝食に欠かせない一般的なイディリは、ブラックレンテル(黒豆)を発酵させたものに、米の粉を混ぜて作られた生地が用いられるが、これは米の粉だけのようである。
左上写真の左側にあるのは、Neera Dosaと呼ばれるもので、これも挽きたての米の粉で作られたパンケーキのようなもの。
右側の薄っぺらいスナックのようなものは、Kori Roti、これは、塩か醤油でもまぶすと、せんべいのようでおいしいかも、と思わせるが、このままだと味気なさすぎる味わい。
さて、料理であるが、わたしが特に気に入ったのは、アサリのスパイシーココナツ煮込み。
アサリの身は小さくてほとんど認識できないほどだが、ココナツの殻の白い部分の、さくさくとした歯ごたえ、そしてカレーリーフの風味などが、非常によい。これはビールのおつまみに好適! ビールがないけど。
カニのカレーも、マイルドな風味で、ご飯によく合う。これもまた、美味であった。
ポークは店の人が「とても辛い」と言っていたが、さほどでもなく、深みのある味わい。脂身や皮まで調理されているので、コラーゲンはたっぷりだが、カロリーも高い。
が、個人的には好きな味。さっぱり風味を好む人には、重すぎるかもしれない。
エビは美味だが、スパイシーな天ぷら風。つまりはどこにでもある料理、という感じで、特にこの店らしい特徴は見られなかった。無難ではある。
残念だったのは、魚のカレー。わたしが普段購入するポムフレット(マナガツオ)は、臭みなどもなく、さっぱりとした味わいで美味なのだが、このポムフレットは川魚のような匂いがする。
「釣り」をたしなむU-KO隊員曰く、これは「汽水域でとれる魚特有の匂い」らしい。汽水とは、河川と海とが混じり合う地点、つまり河口域のことらしい。知らなかった。
この手の魚は、マサラ(複合スパイス)風味にするか、揚げるかの方がおいしく食べられる気がする。
こうして記せば淡々とした夕食の光景だが、実はもう、たいそうな大騒ぎであった。
未知なる食を前にして、酒を飲んでいるわけでもないのに、みんな酔っぱらってるのか、というくらい、うるさい。
ある意味、酒がなくてよかった。
盛り上がりが絶好調に達したのは、1種類ずつ注文したデザートがテーブルに揃ったときであった。
このプレゼンテーションの、すさまじさ。どうみても、おいしそうには見えない。
まず左上からRaagi Manni。ラギとは、ヒエや粟などの雑穀のことで、南インドではこの雑穀の粉を練り練りして作る団子、ラギボールというものが食されている。
そのラギに牛乳とジャガリ(天然の糖)を加えて作られたのがこのデザート。
次いで左下は、Rice Manniと呼ばれるもの。ライスにミルク、ジャガリを加え、カルダモンやカシューナッツなどで味を付けたもの。
右側の得体の知れぬ2皿は、カラメルカスタード(プリン)と、ブレッドプディング。
インドの古くからの料理店では、カスタードプリンを出す店が少なくない。濃厚な牛乳を使い、卵と砂糖だけのシンプルなそれは、鬆(す)が立っていて見た目が悪いものの「懐かしい味」がして、おいしいものも多い。
が、この店のそれは、見た目が悪いにもほどがある、というくらいに、すさまじい仕上がりだ。ちなみに奥がプリンである。
超絶に、鬆(す)が立っている。
見守るばかりで、誰も手を付けようとしない。ここでようやく隊長の出番とばかりに、まずわたしから、ラギに手を付ける。
……。これは、なんなのだ? 思ったよりも、おいしい気がする。が、敢えて食べたくはない。甘みは控えめ。
ライスプディング。そのねっとりとした形状からして、微妙。食べられるものの……つい、口にしてはならなかったはずのひと言を、発してしまう。
「まずっ!」
PAKAKO隊員に至っては、
「気持ち悪い」「糊みたい」
などという、絶望的なコメントまで出る始末。とはいえ、みな、何口かは試しつつ、味覚の崩壊を楽しんでいる。
左がU-KO隊員。右がPAKAKO隊員。写真を見る限りでは、「わ〜! おいしい!!」と楽しげな様子だが、実際は極めてネガティヴなコメントが連発している最中だ。
右上。食べかけの汚い写真で恐縮だが、このラギ・ゼリー。どうみても、こんにゃくだ。
にも関わらず、わたしを除く3名、これがいちばん「まし」との評価である。
わたしは、見た目はさておき、カスタード系がましだと思ったが、彼女たち曰く、おいしいプリンの味を知っているからこそ、これは許せない、とのこと。
確かにそれは、言えている。最早、未知の味覚の方が、慣れ親しんだ味の「失敗作?」よりは、高評価というわけだ。
デザートの凄まじさにノックアウトされ、おいしかったはずの料理のことが、思い出せなくなりつつある宴の後半。
インドの食事どころでは、必ず最後に出される「お口直し」のスパイス。代表的なのは、フェネルシードを砂糖でコーティングしたもので、口中をさっぱりさせ、消化を促進する働きを持つ。
これは小皿などに盛られて出されることが多いのだが、この店は、このような調味料入れに入っていた。これなら、埃まみれになる心配もなく、比較的清潔だ。ナイスなアイデアである。
ちなみにお会計は、一人当たり300ルピー。600円程度であった。
店を出ると、雨上がりの風が心地よい。昼間は決して歩く気にならない喧噪の路上だが、涼風が吹き抜けて、気持ちがいい。
MANGALORE PEARLは、ビールもなければコーヒー/紅茶も出ないので、近くのCAFE COFFEE DAYに場所を移して、しめくくることにした。
CAFE COFFEE DAYで、わたしとPAKAKO隊員は、オーソドックスにカフェラテを。
しかし、U-KO隊員とゲストのH美さんは、やたら真剣にメニューを閲覧。ライチーなんたらとか、ニルヴァーナなんたらとかいう、ややこしいものを注文。
他者の飲食に対する好奇心を見て、自分って意外に普通? などと思えただけでも、探検隊を結成した意義があったというものである。
今後、『ローカルフード探検隊』のレポートは、MuseIndia.Infoにコーナーを設ける予定だが、今日のところは取り敢えず、隊員からの感想もここに掲載しておく。
ストレートな感想をいただけたので、店の雰囲気が伝わるのではないかと思う。
メニューにはシーフードが満載! ココナッツミルクをふんだんに使った南インドらしい蟹カレーはかなり美味。それと、貝のココナッツ炒めはCoastalならではの料理でとっても美味しかったですよね。
合わせて食べるマンガローリアンの主食である"Sannnas"や"Neer Dosa"は、もちもちとした食感で、カレーとのコンビネーションは最高♪
魚は、、、まぁ昨日の評価の通り、ぬめりと臭みが気になりました。
料理全般の辛さや塩加減は私にはちょうど良く、とても美味しかったので、今度はぜひ海老カレーを注文してみようと思います。店員さんもナイスでしたよ❤
デザートは、、、インドスイーツが好きな人なら悪くはないと思うのですが、ラギは何口が食べたうち2回もじゃりじゃりとカルダモンにヒットしたので、カルダモンが苦手な人はパスした方がいいかも。
あともう1つの黄色い「やまとのり」は、味は悪くないが食感が私はイマイチでした^^; 残念だったのはサウスインディアンコーヒーが置いてなかったことです!
南インドらしい味付けは日本から戻ったばかりの私に大変優しかったです。清潔さも牛丼のすきや位で、不安感全然なし。
ビールが無いのが本当に残念・・・あの蟹カレーとアサリにKingfisherが有れば、私達いつまでも居座ったでしょうね。
ブタカレーは油っぽくなくコラーゲン部分たっぷりで、もちもちニールドーサと合いました。
全員からケチョンケチョンにされたスイーツでしたけど、ラギーのゼリーは蕎麦粉とウイロウを混ぜたみたいで忘れらないお味です。
赤いジュース(コクーン/ガルシニアの一種のようですね)で始まって消化のいいラギーで終わった今日の探検は体にすごく良かったのでは、と翌朝の体調から感じております。
ああでもビールさえあればなあ。
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■ MANGALORE PEARL RESTAURANT (←Click!)