今年もまた、節目の年。海外生活20年。特に7月は夫と出会って20年&結婚15周年と、やたらメモリアルな感じだ。しかし、お互いにいろいろと用事はあるし、こまごまと祝すのもなんだな、と思っていた矢先、シャングリ・ラ・ホテルの日本料理店Yataiiから、七夕特別ディナーの案内が届いた。
七夕当日は別の用事があるので、あまり関係はないが、7月4日、米国独立記念日の夜、予約を入れておいたのだった。
この日は、普段のアラカルトメニューのほか、このグラスワイン付き5コースメニューが用意されていた。この店に来るのはこれで3度目だが、実はアラカルトを頼んだことがない。いつか試したいと思いつつも、この日は二人ともコースを頼むことにした。
上品な盛りつけのアミューズ。枝豆、スイカ&キュウリ+ミントの葉、ナスのフライ……と、日常的な素材ながらも、かわいくおいしい。ヴェジタリアンの人もノープロブレムだ。
前菜。サーモンのカルパッチョ。マンゴーとトマトのスライスがアレンジされて、見た目も華やか。ニンジンで作られた「鶴」らしきものも、かわいい。
マンゴーの甘みとサーモンがいいコンビネーションで、おいしい。南米のセビーチェを思い出す。ちょうど夫と出会ったころ、ニューヨークではセビーチェを出すレストランがオープンし、流行った。生魚を醤油以外で食べるのは、日本人だけでなく、ニューヨーカーにとっても多分、新鮮な経験だったと思う。
陶板焼きが届く前に、テーブルに供された脇役ら。和風だれ以外に、コリアンダーやチリほかマサラの風味が利いたトッピングもついていて、ユニーク。この日、インド人のお客さんがたくさん入っていたが、こういうアレンジが利いているところも魅力なのだと思う。香ばしいガーリックの風味やネギの風味は、日本人だけでなく、インド人にも好まれると思う。
牛肉、豚肉の選択肢があり迷っていたら、日本人シェフの輿那覇氏が、2種類盛りにしてくれた。個人的には豚肉が好みだった。
こちらは海鮮焼きそば。そばは、焼きそば用ではなく、「そば」が使われていることから、個人的には「ざるそば」が食べたいところだったが、ざるそばは、多分インド人には物足りない味覚世界だと思う。日本食が大好きな我が夫も、ざるそばは、敢えて頼まないことが多いので。
焼きそばの麺は、そばよりもむしろ、先日記した「スパゲッティーニ」の麺の方が、焼きそばっぽくなるのではないか、と思われる。日本料理店でパスタはいかがなものか、かもしれないが。
ただ、日本米が少々、粘り気に欠けるのが気になった。しかし先日、インドで、輸入米の規制が入ったとのニュースもあり、日本料理店のあちこちで「米騒動」が起こった話を聞いていたこともあり……。
インドだもの。ということで、ノープロブレム。
そしてデザート。わたしは抹茶アイスクリームのクレープ、夫は抹茶アイスクリームの天ぷらを注文。互いに味見をしたところ、二人してクレープの方が好みで、わたしのクレープは結局、半分近くを夫に奪われる羽目になったが、仕方あるまい。
ちなみにこのレストランのセールスマネージャーは、かつてムンバイのタージマハル・ホテルにある超高級日本料理レストランWASABIに勤務していたとのことで、前回、今回と、なにかと夫もフレンドリーに話をする。わたしも、ついつい、何かしら語る。
七夕は二人の出会い記念日なのだとまで話したら……
インドに暮らして10年以上になるが、この日本料理店は、わたしたちにとって「今のところ」一番のお気に入りとなった。刺身などは輸入しているものが多数だとは思うが、主にはローカルの食材を使い、インド人にも日本人にも合う料理を工夫して創造されているところが魅力的だ。
無論、インド人と一括りに言っても、この国は味覚世界もまた多様性に満ちており、日本料理に関しては特に、料理の味付け一つをとっても、賛否両論、分かれそうではあるのだが。
ともあれ料理はもちろんだが、店の雰囲気、窓辺からの眺望もまた、すばらしい。高い天井が好きなわたしにとっては、広々とした空間が心地よく、とてもリラックスできる。
次回はアラカルト・メニューも試したいものだ。