折しも日本から、日本人シェフの中村氏が10日間(20日まで)、来訪されており、特別メニューもあるという。このごろは、コースメニューはヴォリュームが多すぎて食べ尽くせないので、好みの料理をアラカルトで頼むことが多かったのだが、昨夜はせっかくなので、シェフのおまかせを1人前頼み、それ以外に枝豆やサラダや海鮮丼を注文したのだった。
2015年9月、ホテル、シャングリ・ラの開業に伴いオープンしたこの店。当初は沖縄出身のシェフが、地元の食材も巧みに取り入れつつの、プレゼンテーションも美しい料理を提供していた。しかし、契約の問題などでほどなくして去られ、また別の日本人シェフが来て、また去る……という感じだ。
そんな中、オープン当初から変わりなくこの店を支えているのは、インド人シェフのアマルジート。注文する料理によって、味のばらつきがあったりするものの、ここはインド。我々夫婦にとってはノープロブレム。そのときどきで、味付けなどのリクエスト(味の濃淡など)をすると、速やかに対応してくれる。居心地よくサーヴィスのいいこの店には、すっかり愛着がわいている。
さて、中村シェフは、北海道釧路にご自身の店を持つシェフで、モルジブやドバイなど、他国でのシェフ経験もおありだという。コースメニューは鶏の唐揚げに始まり、刺身盛り合わせ、銀ダラの西京焼き、フィレ肉のグリル、寿司、デザートという内容。刺身の盛り合わせには、なんと大トロも添えられている。なんでもシェフ自ら、日本より持ち込まれたとのこと。とてもおいしい。
刺身はそれぞれ3切れ。刺身の好みは、我々夫婦、酷似していることから、こういうとき、誰がどれを何切れずつ食べるか、が争点となる(阿呆)。互いに譲り合うふりをして、しかし相手がすんなり受け入れるとムッとする、などということを、これまで幾度となく繰り返してきたバカップルである。昨夜は、妻が控えめに出た。
銀ダラの西京焼きは、ニューヨーク在住時から夫の好み。グリルされた蕪の切り身が添えられた、上品な旨味が凝縮した銀ダラ。これもまた、おいしい。ビーフのフィレ肉は、少々硬く、これは自分で作る「バンガロール牛による熟成ビーフのグリル」のほうが好みであった。
ちなみに、海鮮丼は、一時期、丼物フェアをやっていたときの名残。現在はメニューに載っていないのだが、頼むとアマルジートが作ってくれる。「具はサーモンとハマチ、あとイクラをちょっと」などとリクエストすると、適当にアレンジしてくれる。ちなみに1000ルピー。ヴォリュームはあるし、味噌汁も付いてくるし、悪くないのだ。
最後の一口サイズの握りもまた、おいしかった。デザートの抹茶ブリュレは、ほうじ茶アイスも添えられて、上品な甘味ながらも食べ応えあり。ほうじ茶は夫の好きなお茶でもあり、彼にとって、かなりハッピーな夜である。デザートのポーションが大きいと思ったが(シェフもそう思ったらしい)、わたしがシェフと話をしている間、夫が7割ほどを食べ尽くしていた。
日本料理になじみのあるインド人は、欧米はじめ諸外国の日本料理店のメニューに慣れ親しんでいる人も多いから、我が夫が「銀ダラの西京焼き」とか「ハマチのカマ」とか「ナスの味噌田楽」などが好きなのは、その影響である。といったことを中村シェフに話したら、ナスの切り目の入れ方、揚げ方なども伝授されたとのこと、次回、頼んでみようと思う。
ところで本日、顕著に味が違ったのは、酢飯の具合だ。同じ海鮮丼でも、ごはんがふんわり、ほどよく噛み応えのある、おいしい酢飯なのだ。中村氏が、炊き方などを伝授されたとのこと。料理とは、ちょっとしたことで、大きな変化を生むものである。
ちょっとした違いで大きな変化といえば、書きそびれていたが、先日、ロールケーキを作った時のこと。いつもは、一般的なレシピ通り、ボウルを38度ほどの湯煎で温めながら、砂糖と卵を泡立てていたのだが、とあるサイトで、「温めず、時間をかけて低速で泡立てた方がスポンジのきめが細かくなる」との記事を読んで試してみたのだ。そうしたら、同じ材料を使っているにもかかわらず、劇的にきめが細かいスポンジに焼きあがったのである。これにはびっくりした。同じことを、今度はカステラでも実験してみようと思った次第。
ところで帰り際、車に乗り込んだあと、ふとエントランスの方を見たら、長身の素敵な男性が目に留まった。クリケットの名選手、シカール・ダワン選手だ。折しも夫がロンドンのスタジアムでWカップを観戦していた試合中、彼は負傷して、欠場となってしまったらしい。車中からわたしが手を振って写真を撮らせてもらったら、こちらを向いて、笑いながら舌を出すお茶目なお方♥ 夫はすぐに車を降りてご挨拶。
今回、インドにとっては残念な結果であったが、さて、今からクリケットW杯決勝戦が始まる。夫は「不幸にも、インドが出ない」と言いながらも、TVの前で観戦態勢。平和な日曜の午後だ。
*昨夜の服装。刺身とコーディネートしているわけではない。が、そうとしか思えない色合いだ。海鮮丼ドレス……。