熟した胡椒粒が、彩り豊かに美しい。庭の、ヤシの木のたもとに、小さな胡椒の苗を植えてから、多分10年は経つだろう。とてもゆっくりと成長した、そのツル科の植物が、やがて実をつけるようになって久しい。初めて収穫した時には、自分の庭で胡椒が穫れることが、ひどく特別なことに思えて、うれしかった。
大航海時代、この国の香辛料や宝石は、欧州人の垂涎の的だった。風味を添えることにも増して、天然の防腐剤としての効果が珍重された。それがやがて、植民地化へと結びつく。胡椒が金(ゴールド)と同等の価値で扱われてた時代もあった。
いつもなら、年末に収穫するところ、今年は、熟して赤い実が増えるのを待ってみた。今回の収穫量は少ないが、実がしっかりと、質がよい。赤く熟すると、辛味が軽減されるという。ちなみに、ホワイトペッパーは、この赤い胡椒の皮を剥いだものだ。
そろそろいい塩梅だろうと収穫した先週末。その赤い粒を味見して驚いた。ほんのりと、果実のような甘み!
……が、油断していると、あとから来る辛味!
ヒマラヤの岩塩、ピンクソルトと、オーガニックのレモン(インドのレモンはライムのよう)をたっぷり用意。胡椒をベーキングソーダで洗い、乾燥させて、選別しながら瓶に詰める。一旦、湯に通したこともあったが、黒くなってしまうので、今年はやめた。
たっぷりの塩を振り入れ、黙々とレモンを絞って瓶に注ぐ。案の定、レモンが足りない。毎年、同じ失敗を繰り返している気がする。改めて、レモンを注文し、続きは明日。
まさに「あらゆる料理」に応用できるこの胡椒。以前は、ご近所さんに配ったり、希望するミューズ・クリエイションのメンバーにもおすそ分けをしていたものだ。
思えばこのヤシの木も、2007年に引っ越してきたときには、わたしの背丈ほどしかなく、わたしの「太もも」くらいの「細さ」だったのだ。自然の姿の変遷に、歳月の流れが偲ばれる。