象の頭を持つヒンドゥー教の神様「ガネーシャ」。新月から4日目に誕生したとされるガネーシャの生誕祭、「ガネーシャ・チャトゥルティ」が本日から始まり、10日間の亘って祝われる。インドのお祭りシーズンが、いよいよ本気を出してくる季節。ここから年末にかけては、概ね祭りの中で暮らすことになる。
今日はまた、我が誕生日であった。
わたしの人生の節目は、キリ良く10年ごとに到来していた。
20歳の夏、初めて日本を離れ、ロサンゼルス郊外で1カ月ホームステイをしたことが、その後の人生を変えた。
30歳の春、1年の語学留学の予定でニューヨークへ飛び、そのまま米国に住み着いた。
40歳の秋、これからはインドの時代だと確信し、バンガロールへ移住した。
50歳……のときには、たいした変化はなかったが、57歳となった今、大きな節目の到来を実感している。今は、還暦へ向けての助走のような、準備期間。これまで蓄積してきた経験や知見を活かした仕事が、将来、実践的に手がけられる気がしている。
誕生日を迎えて、あれこれと書きたいことは募るのだが、今日はランチに訪れた店がとてもすてきだったので、レストランの紹介をしておきたい。
新居と旧居の間の田園地帯にあるFarmlore。37エーカーの広大な土地の只中、マンゴーの木々や花々に囲まれた場所に、その店はあった。パンデミック下の2020年に開業したばかりだ。
店は完全予約/前払い制で、テーブル数にも限りがある。グループは6人まで。子どもは12歳以上。料理は「シェフにお任せ」で、ランチは5コース、ディナーは10コース。何が供されるかわからないところが、なんとも言えず楽しみだ。
バンガロール出身のオーナー、そしてチェンナイ出身の若き3人のシェフがキッチンを仕切る。コペンハーゲンの名店Nomaでインターンの経験があるヘッドシェフの女性。男性シェフらはそれぞれ、スウェーデンやマレーシアのレストランで働いた経験もあるという。
自然農法に基づいた食材選びに始まり、環境に配慮したキッチンや店舗の構成。発電はソーラーパネルによって自給自足され、併設の水耕栽培ファームで育まれた新鮮な野菜が用いられる。
本日、供されたコースメニューは、それぞれのプレートに「南インドならでは」が鏤(ちりば)められていて、非常に興味深かった。
たとえば石の上に載った、あたかもトリュフ・チョコレートのような丸いアミューズは、スピルリナを練り込んだココバターの殻に、ココナツウォーターが入っている。ヘルシーで爽やかな味わいだ。手前の小さなタルトは、ローカルで収穫されたアヴォカドに、とうもろこしを載せたもの。
柔らかくて風味豊かな鴨肉のスープは、ピリリと辛味がほどよく、インド料理的スパイス遣いが効いている。
紅白のソースが施されたシーフード。オレンジのソースは、コンカン地方(南インド西海岸部)で収穫されるヘルシーな果実コカムが、白いソースはココナッツミルクが用いられている。
白身魚は旨味が詰まっていて、小さいけれど食べ応えあり。葉野菜に包まれているのは、ジューシーな蟹肉(ブルークラブ)だ。ワシントンDC在住時代にしばしば食べていたクラブケーキを思い出す。久しぶりに近々作ってみよう。エビもまた、歯ごたえがよく甘味があっておいしい
。
熱々の小さな鉄鍋にて供されたのは、ライスの上に、マイソール産の脂肪が多いラム肉が載ったもの。バナナの葉に包み、低温に設定された釜で16時間ほど加熱して作られたという。添えられたナスのカレーをかけて食べる。モリンガパウダーがまぶされたライス・スナックも、味覚にアクセントを添えてくれる。
そして、とても感動したのがデザートだ。アイスクリームに添えられたキャラメルソース状のもの……。この主原料は「味噌」であった。彼女がここで味噌作りをしているらしい。その味噌のおいしさは特筆すべきで……と、書きたいことは尽きぬ。次回は平日の夜、もしくは週末のランチにも楽しめるという10コースメニューに挑戦してみたい。
誕生日に際して、自分のライフに関することを書きたかったのだが、レストラン紹介に終始した。ごちそうさまでした。
🍾アルコールは提供していないので、ゲストが持ち込み。
➡︎https://www.farmlore.in/