バンガロール北部、空港へ向かう途中の田園地帯にあるFarmlore。2020年に開業したこの店には、昨年8月の我が誕生日と、大晦日の2回訪れた。長閑な環境の中で、「食のエンターテインメント」を心ゆくまで楽しめる、とてもすてきな場所だ。
先週の土曜日、デリーから出張中の男性2名とランチを共にすべく、久しぶりに訪れた。
Kyodo News(共同通信)のジャーナリスト、高司氏とAshish。高司氏は、半年前にデリー宅で『京友禅サリー展示会』を開催した際、取材に来てくださった。その後、オンラインで追加取材を受け、記事にしていただいた。高司氏が配信した記事は、いくつかのメディアに取り上げられたようで、そのうちの一つも送っていただいていた。
Ashishは、2008年から同社に勤務されているということで、もちろん訪日の経験もあり。こうなるともう、話が盛り上がらないはずもなく……! 料理を楽しみつつ、会話も尽きず。12時30分の開店を待たず、一番最初に店に到着していたにも関わらず、「まかない」が準備され始めた3時過ぎまで、贅沢なランチタイムを過ごしたのだった。
実は高司氏。デリーでお会いした際は、こちらが取材をお受けする側だったので、京友禅サリーについてご説明したのだが、わたしもいつもの習慣で、彼のバックグラウンドなどもお尋ねした。すると、ご出身が福岡だという。福岡のどちらですかと尋ねると、東区だという。え? 東区のどちらですかと尋ねると……多々良だという。
多々良……! 名島の実家から徒歩圏内の隣町である。実はその日、やはり偶然にも、福岡市出身の駐在員ご夫妻が来訪されて会話が盛り上がり、結局、みなさんとデリー宅でワインを開け、スナックを食べ、最後には夕飯も一緒に楽しんだのだった。思い返すに、かなりユニークな夜だった。
さて、肝心のFarmlore。概要だけ、簡単に記しておく。過去の記録に詳細を残しているので、関心のある方には、ぜひ下記のリンクにも目を通していただきたい。
バンガロール出身のオーナー、そしてチェンナイ出身の若き3人のシェフがキッチンを仕切る。ヘッドシェフは、コペンハーゲンの名店Noma(ノーマ)でインターンの経験がある女性、Mythrayie。男性シェフらはそれぞれ、スウェーデンやマレーシアのレストランで働いた経験もある。
Farmloreでは、「地産地消」「伝統的な食文化への敬意」「大地との繋がり」をコンセプトに、創造性を駆使した実験的な料理を提供している。自然農法に基づいた食材選びに始まり、環境に配慮したキッチンや店舗の構成。発電はソーラーパネルによって自給自足され、併設の水耕栽培ファームで育まれた新鮮な野菜が用いられる。
店は完全予約/前払い制。グループは6人まで。子どもは12歳以上。料理は「シェフにお任せ」で、平日ランチは5コース、ディナーは10コース。ノンヴェジタリアンも、さまざまな食材が用いられるので、あらかじめ食べられない食材は申し出ておく必要がある。
中でも鍵となるのは、マンゴー。このファームはマンゴーの森の只中にあり、その恩恵を受けていることをつぶさに感じられる。釜の燃料も、燻製に使う木も、数種類のマンゴーだ。
料理を供するたびに、シェフやスタッフが、丁寧に食材などを説明してくれる。この店もそうだし、ムンバイの名店、Masqueもそうだが、この実験的なキッチンは、かつてスペインのカタルーニャ地方にあった世界的に有名な前衛的レストラン、「エル・ブリ(エル・ブジ)」の流れを継承している。
わたしたち夫婦は、2016年にバルセロナを旅した際、エル・ブリで腕を振るっていたシェフらが創業した「Dis Fru Tar(ディスフルタール)」で食事を楽しんだ。
そのときの様子なども、過去の記録にリンクを残しているので、関心のある方がご覧いただければと思う。書きたいことは尽きぬが、毎回、長くなりすぎるので、この辺にしておく。
🍴……と思ったが、やはり料理の写真を見るに、料理について触れずにはいられない。今回、感動した味覚の一つは、ケララから独自のルートで直送される牡蠣。わたしの好きな「海苔のような風味」がある牡蠣で、謎めいたソースとの相性が抜群。その他、ダックや白身魚、ロブスターなども出されたが、トビコのソースがかかったロブスターが、殊のほか、おいしかった。
🐜店を出て、農道を歩いている時、赤い蟻を見つけたAshishが、「トッピングの蟻って、これかな?」という。「え? なに? 蟻?!」……何言ってんの? 的な反応をする高司氏とわたしに、Ashishは、写真を拡大して見せる。
カラメルのようなトッピングだと思っていたが……蟻だった!! (2枚目の写真の左奥、クリームの上)
その後、Ashishは、シェフにWhatsAppで蟻を使う理由を尋ねたところ、カルナータカ州のクールグ(コーヒー豆の産地でもある)では、赤い蟻をチャトゥネにして食べる文化があるという。亜鉛を含んでいるほか、マンゴーの木から得た柑橘の酸味もあるという。
まったく気づかずに、ハフッと食べてしまったよ😅
🍷従来、アルコールは持参だったが、今回はワイン提供のライセンスを取得されたとのことで、店で注文できるようになっていた。ゆえに、持ち込みはできない。念のため。
🍚ところで、最後のオープンキッチンの写真は「まかない」の図。非常に、おいしそう。前回も記したが、おいしい「まかない」を出す店は、いい店だ。若い頃、複数の飲食店でアルバイトをした経験のある者として、力説する。
🥭大晦日はFarmloreで、至福の10コースランチを楽しむ。2022/12/31
https://museindia.typepad.jp/eat/2022/12/farmlore.html
🥭Double Happinessな2022年8月31日①我が誕生日 2022/08/31
https://museindia.typepad.jp/eat/2022/08/farmlore.html
🇪🇸[Barcelona 10] 五感と五味を刺激せよ! 未知の味覚世界へ。2016/10/08
https://museindia.typepad.jp/_2016/2016/10/barcelona10.html